著作権に関する小文〜大根になぞらえて 1999/02/16

清松みゆき

 グループSNEホームページには、ときおり著作権に関する問い合わせがあります。「このツールを自分のホームページに掲載したいのですが、著作権を侵していないでしょうか?」といったふうに。
 このように「著作権を侵していないでしょうか?」と、問われると、僕は苦笑いするしかありません。

 なぜかって? 僕がどう思っているかなんてこととは無関係に、それは、著作権侵害の要件を満たしている確率がかなり高いからです。

 おいおい、やなやつだなーって? でも、ちょっと聞きかたを変えて、「このツールを自分のホームページに掲載したいのですが、かまいませんか?」と尋ねてみてください。
 多くの場合、僕は微笑みながら、「ええ、まったくかまいませんとも」と答えるでしょう。

 著作権というのは、侵害されたと思った側が訴えでなければ問題とはならない性質のものなのです。基本は、「人のふんどしで勝手に相撲取るなよ」という考えかた。
 知的財産権、知的所有権などと呼ばれることもあるように、無形とはいえ、生産物であり、それを産みだすには労働が行なわれています。ゆえに、使うに当たっては所有者の承認を得なさいよ、ということです。
 農家の畑にある大根と同じです。勝手に引っこ抜いて鍋にして食べたり、おでんにして売ったりしちゃダメですよということ。それだけのことなのです。

 最近の例では、ディズニーの『ライオンキング』(あまり最近ではないかも)。あれ、手塚プロは『ジャングル大帝』の盗作であり、著作権侵害であると訴え出てもよかったと僕は思っています。
 しかし、手塚プロはそれをしなかった。ゆえに、著作権問題は発生しようがありませんでした。第三者である僕の観測がどうであれ、手塚プロは認証を与えてしまったのです。――黙認という形で。僕がどうこういう性格のものではなくなってしまいました。
「僕」のところを「司法」に変えても同じなんですね、これ。

 さて、ここまで言えば、著作権にわずらわされずに、SNEの著作物の二次使用を行なうのに、二つの方法があることに気づくでしょう。

 一つは、無視して、SNEにわからないようにこっそりやる。――気づかれさえしなければ、訴えられません。
 もう一つは、SNEに承認をもらうことです。「大根くれんかな?」と言ってみて、「ええよ」という答えをもらえれば、これも問題は発生しません。

 このどちらを選ぶか、ふつうの倫理観を持っている人なら、悩まないと思います。

 さて、我々はいろいろな大根を作っているわけですが、「大根くれんかな?」という人には、けっこうおおらかに渡してます。というのも、大手の八百屋さんが、十分な量を買い取ってくれてるからです。
 ここで、大手の八百屋さんとはつまり、富士見書房メディアワークスのようなゲームを出版してくれている会社のことにあたります。で、八百屋さんは「うちが買い取るからほかには売らんといてね」と言ってまして、我々も「そうしましょ。そんかし、ちゃんと買っとくれや」と答えてます。
 契約ってやつです。これにより、出版社は、我々の著作物に関して、縛りをかけます。我々の著作物であっても、勝手に他社から出版すれば、契約違反に問うことが可能となるのです。
 そしてまた、疑似的な著作権も得ます。著作権を侵害しかねないものに対し、我々はそれを勝手に承認することはできません。なぜなら、関連著作物を出版する権利を、我々は出版社に与えたのですから。ほかから出てしまうと、我々が契約違反をしたということになるのです。
 編集などの作業もあるので、実は、出版社にも「真の著作権」は存在するのですが、おおまかには、出版社の権利は契約によって発生するものであり、著作によって自動的に発生する著作権とは、一段階異なっていることは知っておいてもいいでしょう。
 余談の余談ですが、慣例で「(独占)翻訳権」と呼ばれているものも、これと同じ「契約によって発生する権利」になります。

 話が、少々面倒なほうにずれました。我々は、けっこうおおらかに大根を渡しているってことだったはずなんですが……。
 こうしてみると、なんで、そんなことができるのか、ちょっと疑問かもしれません。大根渡しちゃっていいの? 契約している八百屋さんは文句言わないの?
 我々と出版社の間には、一つの共通認識があるのです。

 1本2本タダで配っても、我々にも八百屋さんにもあまり影響はない。むしろ、口コミで「あそこの大根はうまいでえ」とか「あそこの大根は、こんな料理に使えるでえ」というような噂が広まれば、八百屋さんでの売り上げもアップするだろう。

 ついでを言うと、大根をうまいと言ってもらえれば、それで幸せってな気分も少しあります(笑)。

 しかも、我々は、大根作りに忙しい。八百屋さんも大根(たまにおでんとかも)を売るのに忙しい。「大根くれんかな?」にイチイチ答えてるヒマがなかなかない。
 で、「どうせ1本2本だからかまわんよ。何も言わんとどんどん持っていき。SNE印の大根をみんなに食わせたり」と、こうなったわけです。
 これが従来の(ペーパーメディアの)ファン活動に対するスタンスです。このスタンスは、おそらく変わることはないでしょう。

 実のところ、電子媒体でのファン活動も、これですんでくれればいいんだがな、と、願っています。それのほうが、お互い面倒もなくてハッピーじゃないですか。
 しかし、電子媒体というのは、ちょっとばかり、こうはいかないかもしれないのでは? という危惧があります。大根で言うなら、トラックでごっそり運ばれるようなことになるのでは? と不安に思っているわけです。そんなことになったら、食べていけるんかな? 八百屋さんにも申し訳立たんのとちゃうかな? と。
 複製が容易で、伝達速度が速い。それは、長所と言っていいはずなのですが、我々にとっては、死活問題になりかねないのです。

 だから、車で乗りつけて(=電子メディアで)「大根ちょうだい」という人に対しては、「車の種類見せてね」と言っているわけです。トラックちゃうやろな? それも荷台から投げ売りしてるんちゃうやろな? と。あと、どの大根持っていきたいのかな? と。たとえば、SWのマジック・アイテム価格計算法などは試作大根で、八百屋さんが買ってくれるかどうかはわからないので、かってに持ってちまえ、と思ってます(でも、おでんにして売られたら=代価を取られたら、気分悪いし、今イチ宣伝にもならんよなあ)。
 よっぽどでかいトラックとか、調理器具満載の怪しい車とか、なぜかレジスターがついている車とかで乗りつけない限りは、我々は大根を配るのにあまり問題を感じていません。ですから、積極的に問い合わせてください。「大根くれんかな?」と。

 そしてまた、いつの日か、いちいち車をチェックしなくても大丈夫、と我々が安心し、「勝手に持ってっていいよ」と言えるようになるのを、待ち望んでいます。

1999/03/01付記
 こうした問い合わせは、今までグループSNEあてメールでお願いしていましたが、どうにも対応が遅れるという不備があります(1ヵ月をまとめて、分類・整理して各担当者に渡すため)。
 そこで、『ソード・ワールドRPG』については、直接、僕に問い合わせをしてもらってかまわないとしました(独断をSNE及び富士見書房に認めてもらったわけ)。
(『央華封神(TRPG)』も、現在、メディアワークスと交渉中です。『央華封神TCG』は、直接デザイナーではありませんし、権利関係もややこしいのでちょっと無理でしょう)
1999/03/02『央華封神(TRPG)』に関して了承をメディアワークスから得られましたので、受けつけ開始します。繰り返しますが、『央華封神TCG』は無理ですよ。


 kiyomatsu@trpg.netまで、メールでお問い合わせください。

 以下、注意点を挙げておきます。


<<雑事往来