標的
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君は月の下を歩いている。
もう夜中に近いくらいの時間だ。いつもなら犯罪者たちが跋扈する時間で、君はそんな時間に出歩い たりなどは絶対にしなかった。
しかし、君はもう以前の君ではないのだ。足取りはしっかりしている。
君は裏路地を好んで歩きながら、目を周囲に走らせていた。
誰か……誰か歩いていないか?
君は人間の姿を探している自分に気が付いた。
そしてその感覚に慣れつつもあった。君は泥水を避け、物干し用のロープをかいくぐって、妙に傾斜のある細い路地をするりと通りぬける。 角を曲がると、前にゆっくり歩いている黒い影が目に入った。
人だ。
君は足早にその者に近づく。どうしてもそうせずにおれなかったのだ。
しかし向こうの方が先に振り返った。長い金髪に赤い口紅がぱっと目に入る。
その人物は……
「――女?」
君は疑問を口に出して言った。相手はにこりと笑った。格好はどう見ても男の着る黒外套姿なのだ が、その顔は美しい女性のもの。
「こんばんわ」
女は夜空を見上げ君に場違いな挨拶をしてきた。「いい月ね」
君は面食らってしまって何も言えない。
「驚いた? こんな時間に一人で女が出歩くなんて?」
彼女は一歩君に近づいた。
「さあ、どうしてでしょうね? 考えてみてよ。新人さん。当たったらご褒美をあげるわ」
新人? 新人って何だ?
君が答えないでいると、彼女はさらにおかしそうになって言葉を続けた。
「貴方と同族だから……? 残念ながら答えはノー」急に彼女の声色が変わった。
「わたしが夜出歩くのはね、あんたみたいな人殺しの化物を狩るためよ」
「ひ、人殺し?」
「殺したでしょう? ……あんたからは血の匂いがぷんぷんするわ」
気が付くと、彼女は手に何か長くて光るものを持っていた。一歩退きながら見ると、それは月の光をに ぶく反射する長い細剣だった。
「月狩人(ムーンハンター)に会ったのは初めて?」
彼女はうっすらと笑みを浮かべていた。
「わたしは“血塗れの十字架”M。こんな挨拶しかできないの。不器用でごめんなさいね!」言いながら、彼女は君に向かって一気に間合いをつめてきた!