4−3:付属シナリオ「ヴァニの伝承」
[注意]付属シナリオは、GMをする人以外は見ないで下さい。起こる出来事を知って遊ぶのは、驚きも楽しみも、知らない時よりも減少してしまいます。
このシナリオは、【アリス・ザ・フェアリーワールド】が初めての人向けに作成されているセッションです。
セッションの予定時間は、それを考慮に入れて各シーンで多めに取っていますが、合計で3時間程です。プレイ人数とTRPGへの慣れなどによって実際の時間は前後すると思いますが、指針として参考にして下さい。
『ストーリーセッティング』30分
まず、簡単にアリスの世界観に関する説明をプレイヤー達に説明しましょう。一番良いのは、『第5章:ワールドガイド』の『5−1:神官の話』をGMが読み上げるか、プリントアウトして回し読みしてもらう事です。
世界に関しての詳しい事は、ワールドガイドを参照にしてGMが随時説明するのが良いでしょう。
キャラクター作成に関しては、基本ルールの『3−2−1:プレイヤーキャラクターの作成』に沿って作成して下さい。『ストーリーセッティング』は以下のようになります。
| 『舞台は復興暦910年5月の春真っ盛りの中。ヴァニという人口500人程度の村で、怪物が出たという騒ぎが起こります。都からやってきた好奇心が強い詩人のお守りもしながら、怪物の存在を確かめる為に村に居合わせた人が対処をする物語です』 |
また、今回は、ハーティアレーニャ(ハート7)のアリスがシナリオに登場する予定ですので、『ハートの7』のカードを事前に別にしておいて、プレイヤーに見えないようにしておいて下さい。
『スペードシーン』30分
時期は、復興暦910年5月、春の盛りの真っ只中です。
舞台は、アルバーム王国アルバームから徒歩で北東に4日程にあるヴァニの村が舞台です。
ヴァニの村は、アルバーム王国南端の芸術の港街アルバームと北東の知識の都ホーロッグを繋ぐ北東から南西に通る街道上に存在し、アルバームからホーロッグを結ぶ街道馬車も存在します。人口は、約300人程で50世帯近くが住んでいるそれなりに大きな村です。村の南西には草原が広がり、北西には林、そして北に広がる森が続いています。
PC達は、ヴァニの村に住む唯一の神官である『ポーマット』に頼み事をされた人達です。
ポーマット神官は、PC達(PC達は村人でも、旅人でも構いません)に、神殿にて以下の事を頼みます。
『実は、今日の朝方の事だったのだが、村のはずれに怪物が出現して、トムの息子が危うく命を落とす事だったらしい。今、村長と共に相談をしたんだが、実際に怪物がどんなやつか確かめる人間を村で募ろうと思ってな。それと何じゃが、数日前から村長の所を訪れているアルバームから来たオーレンという詩人が、それにぜひ同行したいと言っておってな。できれば、その人間の相手もしてくれんか。断りたいのはやまやまじゃが、この地の領主とも繋がりがあるらしくてな、そうむげにも出来なくてなぁ』
現在、ポーマット神官は、村はずれの怪物に関しては、良く分かっていません。朝方、報告にトムが神殿に来てから彼は自分の家に戻っています。
オーレンという詩人は、ヴァニの村に伝わる伝説を確かめに来たそうです。彼は、現在、村長の家に寝泊りしています。ヴァニの村に伝わる伝説に関しては、[頭脳]の判定をして下さい。村人であれば難易度1枚、村人以外であれば難易度2枚です。
この伝承は、実は一部が欠けています。それは、『アリスが癒した人の子と獣』に関してと、『アリスが眠りについた場所』です。それは、シナリオが進むに従って明らかになります。
ポーマット神官は、村長の家によってオーレンと同行した後、トムの家に向かって欲しいと告げます。
『クラブシーン』60分
オーレンに会いに行くと、彼は村長の家で出発準備万端で、自分の出陣に同行する人間を見ると、早速、思いついた詩作を口ずさみながら、同行を申し出ます。
彼は気前良く報酬を払うので、怪物の捜索に同行させて欲しいと言います。彼のデータ扱いは、[モンスターレベル1]として下さい。戦いなどに関しては邪魔しないと約束はして、彼は傍観者(自作の詩作のネタ集め)に徹します。
彼の同行を断ると、彼は貴族との関係をちらつかせながら村長を半分脅迫するようにしても、同行しようとします。(実際、彼は最近の詩作が上手くいかず、人気も翳りがちであせっているのです)
また、彼は、この事件が解決したならば、ヴァニの伝説を調べる為に同行している人間を捜していると告げます。彼は、古い文書を持っており、それにはヴァニのアリスが眠りについた場所が明記されているというのです。彼は、同行を約束した人間にもその文書は見せようとはしません。
村の西はずれのトムの家に行くと、トムと家族に会う事が出来ます。トムは、PC達と出会うと今朝起こった事件の事情を語りますが、それは以下のようなものです。
今朝、トムが仕事に出た後、家族が家事をしていると、家から見える西の丘でトムの家の上から4番目と5番目の兄弟が遊んでいました。(トムの家は6人兄弟です)今年で、10歳と8歳になる二人の兄弟が遊んでいると(これはいつもの事です)、森の方から良く分からない巨大な怪物が現れました。
身の丈は人の大きさの2倍ほど、巨大な三本の手に四本足を持つその怪物は、ビックリして身がすくんで動けない二人の下に近づくと、一本の手でトロを持ち上げました。ビックリしたトロが泣き始めると、近くから『おい、やめろ、ジェルッカ!!』という声と共に崩れた顔の褐色の顔の男が林から現れました。そして、マップも泣き出しました。
マップが泣き始めると、トロも大声で泣き始め、するとジェルッカと呼ばれた怪物はトロを下ろすと、男に連れられるようにして林の中に消えていきました。(以上はマップの話です)
怪物と青年が林に逃げるところは、泣き声に気づいたトムの家族も目撃しています。そして、家族は急いでトムを呼び……そして、今に至る訳です。
ジェルッカ、という名前には、判定をしてもPC達は聞いた事がありません。(判定をするのは自由です)トロは、ビックリしたショックから母親に抱かれて、今は落ち着いて寝ています。マップは、起きているものの気が動転して上手く説明できませんが、何とか上記の事は説明できます。
実際のところ、マップの話で出会ったジェルッカと呼ばれる怪物とは、プレイヤーの私達が『ゾウ』と呼んでいる生き物です。しかし、ゾウは、ルウム地方でも北方の一部だけに生息し、アルバーム王国では非常に稀少です。
また、気が動転して物事が整理つかないでいるマップやトロは出合った怪物を正確に説明する事が出来ません。(思い返せば思い返すほど、恐ろしげな印象になっていく怪物を説明して、プレイヤーの反応を見るのも面白いでしょう)絵を書かせても、三本の腕に四本の足に牙が生えている見た事も無い恐ろしい怪物を稚拙な絵で地面に書くだけです。
怪物と顔が崩れた青年は林から森の方に逃げていったらしいですから、追いかけるとすれば森に向かうしかないでしょう。林の方に向かえば、足跡などは比較的簡単に捜す事が出来ます。頭脳の難易度1の判定をさせて下さい。(ゾウは体重重いですから)足跡程度では、怪物を特定する事は出来ません。
森の中まで探索しに行けば、およそ2時間後に彼らを見つける事が出来ます。まず、彼らを見つける為に頭脳で難易度2の判定に成功すれば、彼らに見つかるよりも先に茂みに潜んでチラチラと見える彼らを発見する事が出来ます。
PC達は恐らく慎重になっているはずです(得体が知れない怪物ですから)。忍び寄る場合は、肉体の判定をさせて下さい。その達成値を目標にチェッカ(ゾウを連れている青年です)に頭脳の判定をさせて下さい。頭脳の判定の達成値が、PCの肉体の誰かの達成値を上回れば、チェッカは忍び寄るのに気づきます。(これは、対抗判定です)
PCが忍び寄るのに成功したら、怪物を近くから見たPCにゾウを知っているかどうか頭脳で難易度2の判定をさせて下さい。忍び寄るのに失敗したらチェッカは驚いて、持っている小剣を構え、ゾウは『パオーン』と鳴きながら前足を上げます。この時点で、頭脳の判定をさせてあげて下さい。
おそらく、この時点でプレイヤーは、怪物が『ゾウ』である事に気づくでしょう。しかし、キャラクターが気づくかどうかは別です。全員が判定に失敗すれば、やはり怪物と思うでしょう。ちなみに、忍び寄って問答無用で戦闘を仕掛けた場合は、ジェルッカはモンスターレベル4として扱って下さい。
チェッカは、戦闘が起ころうとも起こるまいと、PC達が現れると『争う気は無い!』と言って、敵意の無いそぶりを見せます。そして、村を騒がせた非礼を詫び、自分が村を訪れた理由を語ります。そして、既に村にアリスが居ない事を知ると、悲しみに暮れます。チェッカの事を疑った場合は、交感判定をするのが良いでしょう。互いの心を知る。チェッカは、自分の心を隠そうとはしません。
『遠い異国の地より現る慈愛に溢れる青年と親友。目差したものは儚く遠いなれど、それが幻ではないのはこれぞ運命か』
その時、オーレンが歌うように詩を口ずさみます。PCに、不謹慎だととがめられたり、詩の意味を尋ねられたりすれば、彼はこう言います。
『ナタリアの眠る地の地図を持っているとすれば、君達、如何するかね?』
恐らく、PC達は、そこに向かうでしょう。一度帰って、事情を説明し、村人とチェッカの和解をしてから向かっても問題はありません。チェッカは、村の中に入るのは、自分が病持ちである事を理由に辞退します。
『ハートシーン』40分
PC達、オーレン、そしてチェッカとジェルッカが、ナタリアの眠る地に向かうとすればこのシーンが始まります。オーレンによれば、ナタリアの誓約者の親友が、いつか、ナタリアを求める心正しき者が現れた時にこの地図を渡す事として地図は残されたらしいと語ります。
オーレンは、アリスと癒しの誓約を結びたくないとは思ってはいませんが、高齢である事もあり、詩作にまだまだやりたい事がある為、自分がここに来たのはあくまで伝説の真実を見たいからだと告げます。
アリスが眠る地は、チェッカとジェルッカが隠れていた場所からおよそ徒歩で30分。ヴァニの村からは、2時間と少しのところにあります。そこは、石で作られた枯れ井戸があり、周囲は鬱蒼と茂る草木に覆われています。(地図にかかれた目印に気づかなければ、この枯れ井戸には気づかないというぐらいです)
オーレンの地図には、『美しき涙が再び零れる時、令嬢はこの世界に還る』と書かれています。この文章は、ナタリアが復活する方法のヒントになっています。それは、『水』を井戸に注ぐ事です。(水袋一杯程度)
『水』は、村の方まで戻らないと近くの川を捜すのは困難です(およそ1時間程は掛かる)。獲得判定を行うのであれば、難易度2の獲得判定を行って下さい。
水を枯れ井戸に注ぐと、キラキラとした光が枯れ井戸の底に輝き、そして次第に枯れ井戸に輝く水が満ちてきます。枯れ井戸に満ちる水も不思議な光で満ちており、その光がチラチラと井戸の上に瞬いたと思うと、次第にそれは集まっていき、そしてそこには羽を持つ一人の少女が現れます……アリスです。
ナタリアは、ハーティアレーニャ(ハート7)の階位のアリスです。彼女は、この世界に帰還すると世界を懐かしがり、そして自分を呼んだ人々に挨拶をすると共に、困っている事を尋ねます。彼女は過去に誓約者を持つアリスであり、人の言葉も、文化も理解しています。
ナタリアは、ジェルッカとチェッカの病を癒す事を望まれると、過去、同じような病のゾウとイヴァンの子を治した事を懐かしみながら、彼らの病の個所にキスをするように癒します。誓約者の居ないアリスに誓約を申し出るのは、出会った中で最も年若いイヴァンの子の権利です。
もし、イヴァンの子が申し出るのであれば、ナタリアは微笑みながらその申し出を受諾します。そして、自分が歪みの病を受けた過去の誓約者を癒せず、失った悲しみから水の中に眠りについていた事を明かします。
『私は、生涯共に生きていた人を失い、悲しみにくれ、水の中で生きていました。彼を忘れる事は出来ませんが、世界を癒す為に、若きイヴァンの子よ。共に、あなたとある事を願います』
癒しの誓約は問題無く受諾されます。世界の新たなアリスと癒しの誓約者の誕生です。誓約を結ぼうとするPCが居ない場合は、年が少しばかり過ぎる事を思いながらも、それは口に出さずオーレンが厳かに癒しの誓約を結びます。
『ダイヤシーン』20分
アリスと誓約者が戻れば、村は新たな誓約者の誕生に簡単ながらも祭りを開いてくれるでしょう。病を癒してもらったジェルッカとチェッカは、アリスと、そして世話になったPC達に深い感謝を捧げ、そして礼として幾ばくかの金貨を渡して故郷に帰ります。
マップとトロも病の癒え、事情を説明されれば、子供好きのジェルッカと楽しそうに遊びながら事件のショックなどどこかに吹き飛んでしまうでしょう。
オーレンは、新しい詩作のインスピレーションをとても受けた様子で、今回の出来事を一つの叙事詩として発表したいと言います。PCが旅人であれば、また旅を続ける事になるでしょう。PCがヴァニの村人であれば、明日からはまた一日が始まるでしょう。
この村からこれから、どんな物語が紡がれいく事になるかは分かりませんが、新しいアリスと、そして誓約者の誕生を祝い、初めてのアリスのセッションは終了します。