トップ>イベント情報>第4回・RPGの鉄人>挑戦者・K川のレシピ
その日の私は、フレイヤーとしてTGCに来ていた。
前回の「RPGの鉄人」では、人数の都合によりゲームマスターは出来なかった。前回は堂々と夢落ちの出来る数少ない機会だったのに、残念な事だった。今回も十分な数のゲームマスターが鉄人として参加しているので、今更自分の出る幕は無いだろうと、プレイヤーとしての参加にしたのだ。
しかし、いざ始まってみると、会長の様子がおかしい。どうも予定していた鉄人の内、一人が病に倒れ、もう一人も体調が思わしくないらしい。
「鉄人」が病弱では笑い話にもならない。しかし残った三人で全てのプレイヤーを捌き切れるだろうか。今私の手元には前の定例会で使った「新星界スター=ロード」のルールが有る。一年程前にゲーム・フィールドが発売されたスペース・オペラ物のゲームだ。そして、一応制作中のシナリオも有った。普通にゲームマスターをするだけなら問題は無い。だが、今回はテーマに沿ったシナリオを競う「RPGの鉄人」で
ある。そう自分のシナリオに都合の良いテーマとなるとも思えない。そう考えている内に今回のテーマが発表された。「飛行船」である。
ここで気付いた。スペースオペラと云えば宇宙船。宇宙船も飛行船も、そう変わらないだろう。そう考え、挑戦者として名乗りを上げる事とした。
用意していた話は、「新宇宙大作戦」の中の「愛の使者」の回を元にして作っている。テレビ放送を見た人もいるかも知れないが、敵や事件の解決方法は変えてあるので大丈夫だろう。
尚、「スター=ロード」については、作者のウェブ・サイト、いわゆるホーム・ページがインター・ネット上に有るので興味の有る人は見て欲しい。
名前は「このごろ堂」である。
會て、宇宙は今よりももっと安定しており、遙かに高度な文明が栄えていた(*01)。
しかし、そんな時代でも星々の争いは有った。
ルーフルト星は数光年の距離に隣り合うツェーダ星と長い間冷戦状態に有った。直接の交戦こそ無かった物の、両星は競って軍備を拡張して行った。
しかし、そんな冷戦にも終りが来た。
或る日、宇宙を流れる宙脈の乱れによって空間跳躍が不可能になったのだ(*02)。宇宙に飛立った者からの連絡もとだえ、他星系からの船も届かなくなった。
星間交易を前提として成立していたルーフルトの社会は混乱を来たし、このままでは星は滅亡すると思われた。この時、多くのルーフルト国民の頭に浮かんだのは、敵対するツェーダ星の事だった。そして、ツェーダ星の兵器が自分達を宇宙から孤立させた事を信じて疑わなかった。
ルーフルト星は滅びるだろう。しかし、ツェーダ星に一矢を報いてやりたい。そう考えた彼等は、現存する最大の宇宙戦艦に有りったけの武器を積み込み、百名の志願兵を人工冬眠にして、通常航行で送り出した。二度と帰らぬと分かっての船出だった。
しかし、彼等は知らなかった。この宙脈の乱れはツェーダ星による物ではなく、全宇宙で起こっている現象だとは。
やがて、長い年月の後、宇宙は再び安定し、星々の行き来も始まった。
ルーフルト星も、文明は失った物の、人間はかろうじて生き残った。その時々を生きるのに精一杯だった彼等の記憶からは、報復戦艦の事は忘れられていた。壊れていると思われていた計算機が秒読みを開始するまでは。
物語は宇宙船「ホワイト・アーチ」が、急難信号を受信した所から始まる。
「ホワイト・アーチ」の乗員は船の持ち主にして、爆弾マニアの技師カール(*03)。宇宙最強と呼ばれる拳銃を使いこなす傭兵マックス(*04)。宇宙時代の拳法「竜星拳」の伝承者フェイロン(*05)。そして、星間商人の娘で、この船の軍師役のサラス(*06)の四人である。
現場に向かった「ホワイト・アーチ」が遭遇したのは、所属不明戦闘機に追われているルーフルト軍の調査船だった(*07)。敵が射程にはいるとすぐに攻撃を開始したが、調査船は破壊され、結局救助出来たのは、船の破壊前に脱出した小型戦闘機に乗っていた一人だけだった。
はたして、戦闘機に乗っているのは、五十代のの年期の入った宇宙船乗りだろうか。三十代の逞しい宇宙船乗りだろうか。二十代の美しい女性だろうか。十代の賢そうな少年だろうか。それとも十歳足らずの元気な子だろうかと各々期待していたが、操縦席から降りて来たのは、若く美しい女性だった(*08)。
そして、そのアマリアと名乗るその女性は、自分達の任務を告げると、協力を求めてきた。
事の起りは今から三十八時間前。「大崩壊」時代前に造られ、現在は既に壊れている骨董品と思われていた機器が秒読みを始めたことだ。「ツェーダ星到着まで、残り四十八時間」と。
直ちに調査がなされ、ツェーダ星に向けて送り出された報復戦艦「ツェッペリン」号の事が明らかになった(*09)。現在のツェーダ星の戦力では「ツェッペリン」号にかなう筈もなく、一時間も有ればツェーダ星は焼け野原となるだろう(*10)。それだけではなく、ルーフルトが報復戦艦を送り出した事が知られれば、今度こそ本当に戦争が始まるかも知れない。
そこで、ルーフルト軍の中でツェーダ星系近くにいた調査船「ジュール」号に「ツェッペリン」号を止める命が下ったと云う。
アマリアの持っていたディスクには、モール提督からの命令と「ツェッペリン」号についての資料、そして「ツェッペリン」号を止める為の非常用コードが有った。
事の重大さを理解した「ホワイト・アーク」の一行は、彼女に協力を約束した。
残り十時間で「ツェッペリン」号はツェーダ星に到着する。九時間でツェーダ星系の外惑星上の基地付近を通過し、当然基地は攻撃されるだろう。八時間後には、基地から発見される可能性の有る場所に到達する。とすれば、少なくとも七時間以内に艦を発見しなければならない。
しかし、正確な航路を計算していた「ジュール」号のコンピュータは破壊されている。ツェーダ星系で待ち構えていれば確実に発見出来るが、それでは遅過ぎる。
仕方無く、彼等は一から情報を集める事となった。
最初に行ったのは、「ジュール」号を襲撃した戦闘機の調査だった。その結課、機体には登録が無く、足の付かぬ様、盗品や廃品から造られた機体である事が分かった。アマリアの言う事によれば、調査船である「ジュール」号を海賊の類が襲うとは考えづらく、何か物盗り以外の目的が有るかも知れないらしい。
続いて、四人は独自に情報を集める事とした。
マックスは知り合いの傭兵から、戦艦の目撃例は無いかと聞いて回った(*11)。残念ながら、目的の情報は得られなかったが、現在兵士を集めている者がいるらしい事が分かった。戦争が起こることを予想している者がいるらしい。
カールは、天体の観測結果を中心に情報を集めた(*12)。「ツェッペリン」号の船体はステルス性が高いが、全ての観測機器に返応しない訳ではなく断片的な情報から現在の航路を割り出そうと考えてだ。
サラスは、ルーフルト星軍の内情に探りを入れてみた(*13)。何か隠された情報が無いかと考えての事だ。それによって分かった事は、今回の件を知っているのはモール提督の他は参謀長のラツマン大佐と副官のシュヴァイツァー少佐のみであり、命令も提督が直接暗号通信で伝えており、情報が濡れた様子は見られなかった。
最後にフェイロンは科学的な手法による探索には限度が有る。宇宙の事は宇宙に聞くのが筋だと、知り合いの風水師に「ツェッペリン」号の探索を頼んだ(*14)。そして、この風水師は一つの方向を指し示した。
「この風水盤の示す方向に、目的の船が有る筈だ」(*15)
それを聞いたフェイロンの自信に満ちた説得によって「ホワイト・アーチ」は風水盤の示す方向へ出来した。フェイロンに従って「ツェッペリン」号わ探す「ホワイト・アーク」だったが、その前方に見慣れぬ宇宙船が立ちはだかった。
停船して通信に応えると、直ぐに要求が有った。
「直ちに引き返してもらおう。さもなくば、人質の命は無いと思え」(*16)そう言うと、カメラの前に一人の男を連れ出した。それは爆発で死亡したと思われ
ていた「ジュール」号の艦長だった。引き返す訳には行かず、アマリアの為にも見殺
しにも出来無い。
「何故我々がここを通ると分かったの」
「御前達が来る事は、この風水盤が教えてくれたのだ」(*17)結局、サラスが通信で敵の注意を引き付けている間に、マックスとフェイロンが敵船に潜入して人質を救出する事となった(*18)。
サラスと敵との交渉の隙に敵船の通信室に辿り着いた二人は室内に飛び込んだ(*19)。敵は人質であるカルプ艦長を盾にしようとしたが、フェイロンが素早く間合を詰め、敵を殴りつける。そして二人の連携によって、人質は無事救い出された。
救出に時間を取られた物の、敵についての情報も幾らか得られた。どうやらこの犯人はシュヴァイツァー少佐の命令で行動していたらしい。敵の目的は未だはっきりとはしないが、世の中には、戦争が起こると得をする人間が大勢いると云う事だろうか。
カルプ艦長救出後、更に進むと、宇宙に大きな影が浮かんでいるのが発見された。近付く事でそれが「ホワイト・アーチ」のおよそ十倍もの大きさの船である事が分かった。これが報復戦艦「ツェッペリン」号であるのは間違い無い。そして、もの一つ発見した物が有った。それは、機体に「ツェーダ星系軍」と書かれた戦闘機の大軍だった。
そして戦闘機郡は「ツェッペリン」号に攻撃を始めていた。「ツェッペリン」号は、普段は自動防衛装置によって守られているが、本格的な戦闘に入ると、五分以内に乗員が目覚め、戦闘配置につく事になっている。もうゆっくりと艦を止めている暇は無いと、非常用コードの入力に取り掛かった。「ホワイト・アーチ」の存在に気付いた戦闘機に攻撃される中、カールは「ツェッペリン」号のコンピュータに入力を完了し、自爆装置のスイッチを入れた。その時、彼等の前に更に別の宇宙船が姿を表した。
「困りますね。部外者が余計な事をしては」こう音声通信が入ったかと思うと、自爆装置の秒読みが止まった。
どうやら、この宇宙船に乗っているのが、黒幕らしい。そう考えて戦闘機の郡を観察したサラスは、この戦闘機群が偽装された物で、現在のツェーダ軍の物では無い事に気付いた(*20)。
しかしその時「ツェッペリン」号の様子が変わった。暗かった船体のあちこちに灯かりが点り、武装が起動し始めた。「ツェッペリン」号が目覚めたのだ。
そして通信により「ツェッペリン」号艦長から戦宣が告げられた。しかも敵宇宙船は、ツェーダ軍を装って応答し、挑発までしている。どうやら、確実にツェーダ星系まで導こうと云う考えらしい。
こうなると外から「ツェッペリン」号を止めるのは不可能だ。何とか艦長を説得しなければならない(*21)。しかし、偽装された戦闘機は、船体には傷一つつけられないが、それでも攻撃を続けており、艦長の怒りを煽っている(*22)。それに、こうしている間にも、刻一刻とツェーダ星系に近付いている。
敵戦闘機は「ツェッペリン」号に攻撃すると同時に「ホワイト・アーチ」にも攻撃をして来る。サラスは回避運動に手一杯だし、マックスとフェイロンも迎撃に手が離せない。
そんな状況の中だったが、艦長がツェーダ星への憎悪と同時にルーフルトを失った悲しみを持っている事を感じたサラスは、アマリアの協力を得て、見事に説得を為し遂げた。
こうなると敵は面白く無い。全戦闘機は一勢に「ホワイト・アーチ」に襲いかかって来た。それに応戦して、砲座にいたマックスはまどろっこしいとばかりに船外に出て、自分の持つ最強の武器、戦士の銃で敵を攻撃し出した(*23)。フェイロンは敵船の主砲の前に出て挑発行動に出た(*24)。怒った敵は主砲でフェイロンを撃つが、宇宙船に取っては小さな的であるフェイロンにはなかなか命中しない。当たれば即死ではあるのだが。
やがて戦況が不利であると考えた敵は、逃走を開始した。「ツェッペリン」号を写した映像だけでも戦争を起こす材料には十分ならしい。当然「ホワイト・アーチ」も追跡を開始する。
性能では勝る敵宇宙船だが、敵が自分で浮遊する隕石を避けながら操縦しているのに対し、軍師であるサラスが隕石を発見し、その指示を受けたカールが速度を出す事に専念する事ですぐに追い付かれて仕舞った(*25)。そして、竜星拳と船からの砲撃によって機能を停止した敵宇宙船は、近くの隕石に引き寄せられて止まった。
宇宙船から捕らえられたシュヴァイツァー少佐はどうやらルーフルト軍に潜入していた工作員だったらしい(*26)。恐らく、謎の組織「ダークマター」が裏にいるのだろう。
「ツェッペリン」号は、一部の装備を回収した後、自爆させる事となった。他者に発見される危険が有る為にゆっくりと解体していられないのは残念な事である。
そして、志願兵達は、皆ルーフルトが滅びていない事を喜んだ。
宇宙の平和と一つの星系と百人の兵士を救った「ホワイト・アーチ」の四人は、知る人こそ少ないが正に英雄だった。
そして、誰もいない宇宙空間。
ツェーダ星を出発した報復宇宙船は、ルーフルト星系を目指して航行を続けていた。
注釈(元の位置へはブラウザの「戻る」を利用してください)
*01 SSTO時代と呼ばれる、いわゆる「スペオペヒーローズ」の時代である。
*08 実際にプレイヤーに選ばせた所、こうなった。役に立つ順位では四番目である。
*11 <荒事>の技能を使っての情報収集である。兵士を集めているのが実は犯人である。
*12 <情報>の技能を使った。効果が分かりにくい調査なので、成功すると追跡が有利になる事にした。
*13 <社交>の技能を使った。この三人の内の一人が黒幕なのだが、今はそこまで気が回らなかった様だ。
*16 ダークパワー〔人質〕である。相手が誰であろうと人質に取れるこの能力を使えば宇宙船の爆発から館長を救い出すのも、簡単な事である。
*19 マックスにはサムライの特殊能力「インターセプト」が有るので、人質が傷つけられる心配は無いのである。
*20 SSTO時代の戦闘機に偽装していたのである。但し中身は現在の物で、性能は比較にならないが、
*21 今回はロングアクションによる艦長の説得を〔機動要塞〕の解決方法とした。
*23 ダメージ基本値は艦の主砲の方が大きいのだが、技能レベルの関係で戦士の銃の方が強力なのだ。
*24 ドラゴンの特殊能力「アサルト」を使っての行動だ。彼は、巻き込みのルールが存在しない事に感謝すべきだろう。
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