エピローグ


 男は、歩き始めた。あの町の、うらぶれた路地裏を。
 人は、男のことをこう呼んだ。世紀の天才科学者、ドクターVと。
 町角には、今日も人々が働き、語り合い、肩を叩き合う。
 しかし、男は、ハンス・ヴェルンは、それを尻目にこう呟いた。
 「わたしは、天涯孤独の放浪者。ただひたすらに歩き続けるのがわたしの使命…」
 世間一般の人間には、決して分からぬその決意。
 だがそれは、全くの事実であったのだろう。
 そして、それが事実である限り、彼はただ、歩き続けるのだ。
 いま、万感の思いを込めて、ヴェルンはマントを翻えす。こう書かれた、一枚の紙片を握りしめ…
   『駐車禁止区域につき、車両を強制撤去しました…ヴァルモン警察交通課』

                               (ちゃんちゃん♪) 




(第三話・完)