トレイシーは劇練習の終わったのち、仕事帰りのハンス、スコットと一緒にニキータをカボスの家に連れ
てゆきます。
GM みなさんが姿を見せると、カボスは思案顔で何やらぶつぶつ言っています。
トレイシー 「どうしたんですの、カボスさん?」
GM 「あ、お帰りなさい。いえね、今度のクリスマスパーティのことを考えていたんですよ。先
日、招待状差し上げたでしょ? ニキータも交えて、にぎやかに、ね」
ハンス 「それはいい」
GM 「あ、ニキータ。晩ご飯、出来てるよ」とカボスが言うと、ニキータは待ちかねたように食
堂へと走ってゆきます。
スコット 「よほどお腹減ってんだなぁ」
トレイシー 「頑張ってるもの」
GM 「ところで、ちょっとお願いがあるんですけど…」とカボス。
スコット 「なんですか?」
GM 「いやね、ニキータにクリスマスプレゼントをあげたいな、と思うんですけどね。何がいい
かなぁって…彼女の趣味とか解りませんかねぇ?」
ハンス 「プレゼントなんて、あげる人の気持ちが大切で物は関係ないだろう」
GM 「ま、それはそうなんですが…いっつも妹たちからはボクは趣味が悪いって言われてるもん
で…(笑) それとなく、彼女のほしいもの、聞いておいてもらえませんかね?」
トレイシー 「ええ、わかりました」
〈12月20日(水)〉
GM この日も、ニキータは朝から劇場に出掛けています。
トレイシー なら、今日もついてゆきます。
ハンス パトロールします。
スコット バイトをします。(笑)
GM 学校に行きませんな、全然。
ま、どちらにせよ、今日は劇場では何も起こりません。無事に練習は終わります。
トレイシー そうですか。じゃ、ニキータをカボスさんの家まで送って、私も帰るとしましょう。
そうそう、帰り道に「ニキータのほしいものって何?」と尋ねてみます。
GM ニキータは少し考えてから、「お家…かな?」とポツリと答えます。
トレイシー 「お家? お人形の?」
GM 「ううん、人形のお家じゃなくて…普通の、お家。あたしたちの…」と、少しはにかんで答
えます。照れとも憂いとも、憧れとも何ともつかない、不思議で複雑な表情です。
トレイシー 「んま、なんて贅沢な。私なんてアパート暮しだというのに」(笑)
「ちょっとお家は高いわねぇ…何か他にない?」
GM 「う〜ん…じゃ、あったかいもの」
トレイシー 「『あったかいもの』? スープか何かかしら?」
トレイシーはニキータをネーブル家まで送り、そしてニキータの言葉をカボスに伝え、自分のアパートへ
と帰路につきます。
GM では、トレイシーさん。知覚判定の÷2判定をしてください。
トレイシー (ころころ)WOLで成功しました。
GM すると、アパートの陰に気配を感じます。
トレイシー 「はっ、誰!?」
GM 次の瞬間、肩に灼け付くような痛みを覚えます。そしてその一瞬の後、銃声が耳に届きます。
振り向くと、単発拳銃を手にした男が再装填をしているところです。
トレイシー 必死に逃げようとします。
GM その再装填はすぐに完了し、男は銃口をトレイシーに向けます。
が、その刹那。
キィンという鈍い金属音が響き、男が銃を取り落とした。反射的に男が振り向いた瞬間、男の肩に何かが
閃き、男はドサリと地面に落ちる。
男は呻きながらも、尚も懐から何かを取り出そうとしている。
しかし、再び銃声。
今度は別の場所から。しかも二発。
男は両腕を打ち抜かれ、悶絶した。
GM 銃声の主はジョンでした。二連装の連発拳銃を引っ提げた軍人は、部下を数人引き連れて現わ
れます。「大丈夫か?」
トレイシー 「ええ、なんとか…」
GM 「こんなところにまで手が回ったのか…?」
トレイシー 「『手が回った』? どういうことです?」
GM 「申し訳ないが、話すわけにはいかん。しかし、あんたの身辺の警護は我々海軍が責任を以
て行なう。だから大丈夫だ」
ハンス 何が大丈夫なんだか、よくわからんな。(笑)
GM それ以上はジョンは何も言わず、部下に男を引ったてさせ、立ち去ります。
帰りぎわに、ジョンは二人の部下を残し、「こいつらがあんたらの警護をする。腕は立つから安心しろ」
と言います。
ハンス だから何が安心なんだ?(笑)
トレイシー 「いったい、なんだったのかしら…」と、さっきのことを思い出してちょっと怖いな、
って思ってます。
GM さて、ハンスが街を巡回パトロール中の出来事です。
ハンス はいな。
GM ハンスは八百屋のピグゴーに捕まります。
「よぉ、巡査さんよ。巡回かい? ご苦労さまだな。あの部長さんは相変わらずかい? がははっ」
ハンス 「そうなんスよ。まったく困ったもんで」
GM 「そういやぁ、知ってるかい、あの話?」
ハンス 「なんです?」
GM 「何でも幽霊が出るって噂だぜ。しかも教会の時計塔にって話だ」
ハンス 「教会に幽霊とは、こりゃまた奇っ怪な」
GM 「何でもよ、銃声も何もしねぇのに、突然大の男が銃を抜いたと思ったら、逆に自分の方が
胸を押さえてブッ倒れるっつうんだ。で、誰かを呼びににいってる間にその男は消えちまってるんだとよ。
おっかねぇ話よなぁ。ま、あんたも職業柄そいつと出くわすかも知れねぇから、気ぃつけるこったな。この
人参かじって精つけな。(笑)
ハンス 「ああ、ありがとうございます。いや、おいしいっスねぇ」
GM さて、今度はスコット>です。
スコット はい。
GM 何してたんだっけ?
スコット クリスマスケーキの売り子やってます。「安いよ安いよ〜」って(笑)
GM なら、そうやって声をかけた一人の女性がいました。どうもトレイシーのようです。
トレイシー え、私?
スコット 「あ、トレイシーさん。安くしときますよ、。どうです、おひとつ?」
GM その女性はチラリとケーキに目を向けますが、「いや、いい」とだけ言って向こうへ行って
しまいます。
スコット ヘンなトレイシーさん。
GM ここで知覚の×2判定をしてください…成功? だったらスコットは、今の女性がトレイシー
と髪型が違うことに気付きます。トレイシーはロングヘアですが、今の女性はショートカットでした。
スコット トレイシーさん、散髪したのかな?
GM そのトレイシーと似た女性はサングラスをかけると、すぐに雑踏に紛れ込んでしまいました。
もう見付けることは出来ません。
スコット 「なんだったんだ?」
GM ま、この日も特にすることがなければ、これで終わりです。
GM 翌朝は、そうですね…カボスの家から、ニキータは劇場に出かけたということにしましょう
か。
じゃ、21日木曜日の朝が始まります。トレイシーさん、どうしますか?
トレイシー そうですねぇ…一応、ニキータがちゃんと行ってるか、劇場に足を運んでみます。
GM 他の皆さんは?
ハンス そうだなぁ、やっぱ上に話を通しておきたいなぁ。
GM 部長ですか?
ハンス そう、ダッドリー・エムス巡査部長に、これこれこういうワケで、と事情説明を。
GM 「うむ…そうか…」
ハンス 「仕方がないでしょう。何かよくは解りませんが、私も首を突っ込んでしまったようです
し…」
GM 「仕方がない」とエムス部長はため息をついて、「こうなったらキミにも話そう」といいま
す。「実はな…」
ハンス ごくり…
GM 「ワシもよく知らんのだ」(笑)
ハンス (ずっこけて)「あ、左様で…そうですか、こりゃ一本取られましたね」
GM 「とにかく上からだな、『黙認して状況報告だけをせよ』との命令が出ている」宮仕えの辛
いところだのう。
ハンス …辛ぇのはあんたのせいだよ。(笑)
…と、心の中では思いつつも、表面では「そうですねぇ」と。
ま、ともかく、「そんなワケで、数日は派出所の方には出ませんが、よろしく」
GM 「ふむ、解った。サボリだな」(笑)
ハンス 「サボリというわけじゃないですよ!」
GM 「二、三日もサボると、クビだなぁ。しかも国家反逆罪でなぁ…」(笑)
ハンス 「…ぐぐ…そうですねぇ、有給休暇はまだ残ってましたかねぇ?」
GM 「二日ほど残っているな」
ハンス 「なら、明日、明後日と連続で取って…」
GM 「ところがだ。警官が有休を二日連続で取ると向こう十年間は有休がないという制度が先だ
って導入されてな」(笑)
ハンス 「そうなんスか?」 困ったなぁ…。
困りまくるハンス。
が、そこでエムス部長がポツリと呟いた。
「最近ワシは忘れっぽくなってなぁ。メシを食うと大切なことをコロッと忘れてしまうのだ。特にその料理
が高級であればある程、それが顕著でなぁ…」
結局、ハンスはたった二、三日の休みを取るために、部長にフィラム料理のフルコースをおごることにな
ってしまったのであった。
GM 「じゃ、場所はホテル・ムーンルートギリアで。正装してこいよ」
ハンス 「…はい」
GM 「今夜だぞ」
ハンス 「……はい」
GM 「七時だぞ」(笑)
ハンス 「………はい。汚ねぇなぁ…ま、仕方ねぇや。人の命かかってるしな」
GM で、スコットはどうしまする?
スコット ええとね、また別のバイトでね、バーゲンとかのビラを人の家のポストに入れて回って
ます。
GM 「ん、なんだこりゃ?」ぐしゃぐしゃ。(笑)
スコット あ〜っ!
ハンス そうやって、歩いて帰ってると道々に自分のくばったビラが捨ててあるんだ。あれって辛
いよな。
さて一方、バーモント劇場に出かけたトレイシー。
練習場では激しい練習が続けられていた。
しばらくそれを見ていたトレイシー。やがて通し練習に入ると、せっかくだからと腰を落ち着けた。
劇中には、ニキータ扮する少女が生き別れの母親と巡り合うシーンがあった。
ニキータのそれは迫真の演技だった。
母親と感激の出会いを果たした主人公は、涙ながらに母親の胸に飛び込む。その時のニキータの立ち居振
る舞いは、演技とは思えないくらい真に迫ったものだった。涙声だけでなく、その頬には本当に雫さえつた
っているように見えた。
GM トマスが感極まったように呟きます。
「すごいよ…まだ初めてから三日しか経ってないのに…」
トレイシー 「そんなにすごいの、やっぱり?」
GM 「もちろん荒いトコもたくさんあるけど…このクライマックスのシーンはホントにすごい。
ボクなんかよりずっと…まるで本当のお母さんにあったように思えるもの」
トレイシー そうなんだ…その話を聞きながら、「お家がほしい」とか「あったかいものがいい」
なんて言ってたあの子の姿を頭に描いています。
ハンス 「はぁ…」ときてるワケだな。
トレイシー うん。何となく、感慨深げにしています。色々と事情があるんだろうけど、とりあえ
ず今は私があの娘を守ってあげなくちゃ、と心に誓おう。
GM その後は何事もなく、日も暮れます。
今日はネーブル家でのクリスマスパーティの日ですね。六時半からでしたっけ?
ハンス ああ、行けない!(笑)
トレイシー 「あのね、ニキータ。今日はあの自転車やさんの優しいお兄ちゃんの家で、パーティ
があるの。一緒に行きましょ。あったかいものも、きっとたくさんあるわよ」
GM ニキータは練習でヘトヘトに疲れていますが、表情はむしろ爽やかです。その言葉を聞いて、
「うん!」と目を輝かせますね。
トレイシーは練習の終わったニキータを連れ、カボスの家に出かけます。
GM 「やぁ、いらっしゃい。よく来てくれました。ニキータも」
トレイシー 「おじゃまします」 他の人は?
スコット もう来てま〜す。
GM 「おや、ハンスさんが見えませんね」(笑)
トレイシー 「どうしたのかしら…スコットさん、知りません?」
スコット 「知りません」(笑) 知ってるワケがない。
ハンス その頃オレは、ホテル・ムーンルートギリアのロビーで…(時計を見る仕草をしながら)
「部長遅いぞ〜、来ないぞ〜」(笑)
スコット 「まぁ、時間にルーズな人だからねぇ。すっぽかしたんじゃない?」
トレイシー 「もう、ハンスさんったら」
スコット 「まったく、とんでもない奴だ」
ハンス ああ、散々な言われよう。
GM でも、ホントに時間にルーズなのは部長のようで、六半時が来、七時が過ぎ、八時になって
も部長は現われない。
ハンス うう…寒い。でも、放って帰ったら本気で懲戒免職にでもしかねんからなぁ、あの部長は。
GM じゃ、×2で知覚判定を。
ハンス 成功した。…う〜ん、失敗してWOLを増やしたかったんだがなぁ。
GM するとですね、ふとホテルのレストランの方を見ると、見覚えのあるシルエットが目にに入りま
す。
ハンス 「ん?」
GM その人物は安っぽい背広を身につけ、ガツガツと高そうな料理を食い散らかしています。
(笑)
ハンス 「部長!」あわてて駆け込んで、「何してるんですか!」
GM 「おお、遅かったじゃないか。警官たるもの時間は厳守せねばならんぞ」
ハンス 「いやしかし、今夜はフィラム料理を…」
GM 部長はテーブルの上を指差して、「ホレ、ここにあるがな…いや、旨いぞ。ここ一週間くら
いは記憶が飛びそうだわい。お前も遠慮せずに食え」
ハンス そりゃ、オレの金だもんな…くそ〜、こういうときは酒だ、酒を注文するぞ!
GM 「ハンス君、酒ならワシが注文してやろう。やはりワインは旨い年代を選ばんとな。こら、
ウェイター!」「はい、お待たせしました。ご用でしょうか?」「用があるから呼んだんだ。35年ものの赤
ワインをくれ」「かしこまりました」と、注文した高級ワインをガブガブ飲みながら、部長は高らかに笑い
ます。
ハンス 「部長! ワインは味わって飲むもので…香りを、色を楽しんで…」
GM 「酒なんてものはなぁ…どのように飲もうと…オレの勝手だぁ!」
ハンス 「あ、あの…ぶ、部長?」
その後も出来上がってしまった部長は、食器は割るわ、ウェイトレスにはからむは、止めにきたウェイタ
ーを殴り飛ばすわ…とにかく暴れ回った。
やがて部長は高級ワインで(!)酔い潰れ、一応嵐の時は去った。
だが、ハンスを待っていたのは12万3〇〇〇ケルンの支払いだった…!
苦悩するハンス。もとよりそんな大金の持ち合わせなどない。 だが、公僕であるということと、ハンス
への同情からホテル側は分割払いを認めてくれた。
ハンスは交番に正体を失った部長を放りこみ、泣きそうになりながら、カボスの家に向かった。
トレイシー 「あら、ハンスさん。どうしたんですの? 顔がぐしゃぐしゃ」(笑)
ハンス 「いやもう、懐は寒いし、道は寒いし…あったかいものがほしい」(笑)
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