GEAR ANTIQUE ROLE PLAYING GAME

 Merry white Chilistmas
   〜白い雪の彼方に〜

 ギリアの街は活気に満ちていた。クリスマス前はいつもそうなのだが、今年は例年以上に盛り上がって いる理由があった。
 それは来年がギリア市政百周年の年であるという事実。
 それを記念したイベントが、この年の瀬から各所で行なわれる予定になっている。そのオープニングイ ベントとして、今年のクリスマスは街の行事予算の大半を注ぎ込んだ催し――無論、観光収入を当て込ん だもの――が企画されている。それには一般の参加も可能で、今まで積み重ねてた技術・演芸を披露すべ く、お祭り好きの目立ちたがり屋たちは日々研鑽しているのだった。

 そんな中、今回の事件は始まります。
 キャラクターも一新。


GM それじゃ、始めましょう。
 場所は当然ヴァルモン帝領の一都市ギリア。状況設定はさっき話した通りです。
 で、そんなある日。トレイシーは何らかの理由で外出していることにします。
トレイシー そうですね、じゃあ行方不明の夫を探すために(そういう設定)、街頭で夫の似顔絵の ビラをまいていましょう。
GM トレイシーさんはここの住人なんですか?
トレイシー もともとは違うんですけど、こちらに夫の姿を見たという情報をつかんだんで、アパ ートを借りて捜索してるんです。
GM なるほど。そうやってトレイシーがビラをまいていると、突然背後から声がかかります。 「ママ!」
トレイシー ママ? 子どもを持った覚えはないのだけれど。
GM 見ると、足元に8才くらいの女の子がいます。
トレイシー 「お嬢ちゃん、迷子? 私はママじゃないのよ」


 その女の子はトレイシーを見つめてたが、やがて不思議そうに首を傾げて言った。
「あれ…違う、ママじゃない!」
 その少女に、また声がかかる。
「ニキータ、こっちよ」
 声の主は紺のスーツの女性だった。サングラスをかけているので顔はよくはわからなかったが、背格好は たしかにトレイシーとそっくりだった。
 ニキータと呼ばれた少女はその女性の方へと駆け寄っていった。
 そして二人は人込の中へ去ってゆく。
 ある、晴れた昼下がりのことだった…。


トレイシー いったい、なんだったのかしら…?


GM さて、他の皆さんに話を移しましょう。みなさんは今まで何度か色々な事件に共に首をつっ こみ、お互いに信頼できる間柄になっているとします。もちろん、何か打算があって一緒に行動している、 というのでも構いません。表向きそうなっている、ということです。
 みなさんはカボスの家――ネーブル・サイクル――でお茶を飲んでいます。
 ビラまきの帰りにトレイシーがカボスと店の前で立ち話をしていたら、それぞれ似たような理由で出掛け てきた他の連中も次第に集まってきて、それなら「立ち話も何ですから」とカボスの家に上がり込んでいる わけですね。
 カボスは「こないだクーレンルートで買ってきたんですよ」と紅茶をふるまってくれます。
ハンス 「や、どうも。旨いお茶ですね」
スコット 「お巡りさん、こんなトコでサボッてていいの?」
ハンス 「なぁに、パトロールの一貫だよ」(笑)
トレイシー 「まぁ…ハンスさんたら」
GM 「それはそうと、今年のクリスマスイベント、誰か出られるんですか?」
スコット 何かあるの?
GM それは事前に配ったパンフレットを見てください。色々あるでしょ。
トレイシー どれどれ…あらホント。
ハンス 『ぼけみあん』…なんか大阪の学祭のようなネーミングだな。(笑)
スコット 寒中水泳ってのもあるね。「お巡りさん、出ない?」
ハンス 「とんでもない!」(笑)
GM ところで、カボスが思い出したように「あ、そうそう。なんでもね、バーモント劇場の今度 やる劇の主役の男の子がケガしたらしいですよ」と言います。
 バーモント劇場は、ギリアの街最大の劇場で、年末にはいつも新作劇を発表しています。今年は市政百周 年ということもあり、かなりの大作を準備しているとの噂です。その大作の初公演がクリスマス・イブなの です。劇の内容は一般には公開されていませんが、ポスターはもう街のどこでも見かけることが出来ます。 タイトルは「メリー・ホワイト・クリスマス」、主演は10才にも満たない少年、脚本もこれまた新進気鋭の 若手、そして赤字覚悟の破格の予算、と話題に事欠かない新作劇です。その主役の少年が蒸気四輪車に跳ね られたというのです。
ハンス 「そりゃ、大変だ」
トレイシー 「代役はいるのかしらね?」
GM 「今、代役に困ってるっていう話ですけどね」
スコット 「ふ〜ん」
GM そんな話をしていると、そこへ見知った顔が現れます。誰あろうフェリエ・シェイロン女史 です。当然、みんな顔見知りとしますね。
「実は、お願いがありまして…」とフェリエ少尉。
ハンス 「なんです?」
GM 言ってフェリエさんは一人の女の子を連れ出してきます。それは、トレイシーに「ママ!」 といって抱きついてきたあの、ニキータという女の子でした。
トレイシー 「あら、あなたはさっきの…」
スコット 「知ってるんですか?」
トレイシー 「ええ、さっきママに間違えられたんですの」
ハンス 「ほぅ…ところでフェリエさん。ご用の向きは?」
GM フェリエさん曰く、その女の子を預かってほしいということでした。
「ワケあって海軍で預かったのですが、何分、子守には不慣れな者ばかりが集まっているもので…できれば カボスさんにお願いしたいと思いまして…」
 フェリエさんは詳しいわけは話せないが、とにかくこの少女は軍で保護していること。見てほしいのは面 倒だけで、その他のことは責任を持って軍が引き受けることなどを話します。
トレイシー 軍が子どもを?
ハンス ライゾ少将の隠し子とか。(笑)
スコット 「何か裏があるんじゃ?」
GM その言葉に、フェリエさんは微苦笑を浮かべます。
「何も聞かずにお願いできませんか? クリスマスまでの一週間でいいんです。何かあっても全責任は軍 が…いえ、私が取ります」


 なおも訝しさを隠しきれないPCたちでしたが、情にもろいカボスはフェリエの頼みを引き受けます。
 以後クリスマスまで一週間。
 PCたちはニキータの面倒を見ることになりました。


GM ところが、ニキータは初め、みなさんと口をきこうとしません。トレイシーともごくごく 必要最低限の言葉をかわす程度です。ですが、ネーブル家の双子、ペアーとレモンの姉弟とは歳が近いせい か、いつのまにか打ち解けてしまっています。
スコット 若い子は若い子どうし、気が合うんだろうね。
ハンス いちばん若いのがなに言ってる。(笑)
GM ところでみなさん、どうします?
トレイシー そうですね、ニキータが元気ないようだから、外に連れていってあげましょう。お洋 服とかも買ってあげたいし。
スコット じゃ、ボクはバイトに出かけようかな。
ハンス こら学生、学校はどうした?(笑)
スコット お巡りさんの方こそ、パトロールサボッてていいのかな?(笑)


 結局、ハンスとスコットの二人は、仕事に戻ります(スコット「大学生の本分はバイトだ(笑)」 )。そしてトレイシーはニキータを連れ、買物に出かけます。
 祭りの雰囲気に包まれた街の裏手の路地で、ニキータを連れたトレイシーは一人の少年を見かけます。屋 台などで使う食材や道具類が積み上げられている傍らで、ゴミ捨て場の古いベッドを並べて、必死に宙返り の練習をしている少年を。
 ニキータは、何を思うのか、取りつかれたようにたたずんでその男の子を見つめています。どうしたのか 尋ねても、返事をしません。
 その時、狭い路地裏を強い風が吹き抜けます。その強風にあおられて、不安定に積み上げてあった荷物が ガタガタと崩れはじめます。それの落下から身を守るには、標準判定が必要です。荷物は、ゴミ捨て場にい た男の子へもっとも多く傾れ込みます。しかし、トレイシーがあっと思ったときにはニキータが駆け出し、 男の子を突き飛ばし、自分も身軽な動きで体を翻し、崩れる荷物の山から逃れます。
 初めは唖然としていた男の子でしたが、ニキータが無言で手を差し伸べると、その手を握ります。
 そして立ち上がると、ニキータの手を握り締め、「キミ、すごいや!」と、感極まったように声をだしま す。
 少年の名はトマス。バーモント劇場の座長ボール・バーモントの実施で、その軽業の技能と愛くるしい容 姿、そして幼い頃からの英才教育で、既にいっぱしの役者として活躍しています。そして、このクリスマス 公演の劇では、主役を務めるはずでした。しかし、不慮の事故による足のケガで、それは不可能になってし まいました。
 トマスはニキータに助けられたことよりも、むしろ彼女の身のこなしに心を奪われたようで、しきりに少 女を誉めたてます。そして、ついには「劇場まで来てよ」と強引にニキータの手を引っ張って連れていって しまおうとします。


トレイシー 「ち、ちょっと待って! そんないきなり…」
GM 「お願いだよ。彼女ならボクの代わりができると思うんだ。そりゃ、演技はわからないけど …でも、わかるんだ。なにか、できるって!」
 理屈もへったくれもあったものじゃないですが、とにかくトマスは本気です。一生懸命、知り得るかぎり の言葉を使ってトレイシーに頼み込んできます。ちなみにニキータは「うん」とも「いや」とも言いません。 ただ、所在なげにうつむいているだけです。
トレイシー 「しょうがないわね」私もついていきます。
GM トマスは満面を輝かせて「ありがとう!」と言い、「さ、行こう」とニキータとトレイシー を連れてバーモント劇場へと足を向けます。


GM さて、バーモント劇場です。トマスは父親であり座長でもあるボール・バーモントに二人を 引き合わせます。
 バーモント劇場座長ボール・バーモントは中肉中背の苦み走った紳士です。上物のツイードに身を包み、 いつもパイプを燻らせています。とはいえ、嫌味な人物では決してなく、むしろ人好きのする笑顔を持った 好漢です。
「いや、息子が無理を言いましたようで。申し訳ありませんでした」と、彼は頭を垂れます。
トレイシー 「いえ、そんな。気になさらないでください。それより困っていらっしゃるとか?」
GM 「いやはや――無関係であるあなた方にこのようなことを申すのも何なのですが――困り 果てておりますことは事実でしてね」と、ボールは苦笑します。
「なにしろうちは子役が少ない。ところが、今回の劇ではその子役が大勢に必要でしてね。しかも、主役を 張れるような子役は…親のひいき目抜きに申しましても、不肖の息子トマスしかいないような有様でして。 いえ、それなりの演技が出来る子はいくらかいます。ただ、今回はアクロバティックな役でして、それなり に軽業もできんとととまらないのですよ。一生に一度あるかないかの盛大なクリスマスを飾る公演と、トマ スも張り切っていただけに、悔しさもひとしおのようで…」
 言って、ボールは言葉を切ります。
「いや、つまらぬ愚痴をお聞かせしてしまった。平にご容赦の程を…」
トレイシー 「いえ、とんでもない」 ニキータはどうしてます?
GM ニキータは何も答えません。ただ、黙りこくっているだけです。
 ボールは丁重にトレイシーとニキータを送り出します。出掛けにトレイシーさん、知覚の×2判定してく ださい。
トレイシー (ころころ)…成功です。
GM なら、トマスが訴えるような目でニキータを見ているのに気付きます。それを見て、ニキータ はわずかですが、微笑んだようです。
トレイシー 「あら…ふふ」
GM  この後は何事もなく、この日は終わります。


GM さて翌朝。誰かネーブル家を訪れますか?
トレイシー はい。ニキータを劇場まで送っていきますから。
ハンス オレも朝のパトロールのついでに寄ってみよう。
スコット じゃ、ボクも朝のバイトのついでに…
ハンス 「だから学校はどうした!?」(笑)
スコット 「いやぁ、ははは」
トレイシー 「おはようございます」
GM 中からカボスの妹アプリコットが出てきます。「あ、みなさん、おはようございます」
スコット 「ニキータちゃんはいる?」
GM 「それが…」
 アプリコットの話によると、朝起きたときにはニキータの姿が見当らなかったということです。彼女の起 床はかなり早いので、ニキータが姿をくらましたのは夜明け頃だろうと言います。
ハンス 「どこに行ったんだ?」
スコット 「散歩にしちゃ、長すぎるしね」
トレイシー 「まさか…劇場じゃ」
ハンス 「そういや、昨日誘われたって言ってたな」
トレイシー 「あの子、何か気にしてたみたいだったから…」
スコット 「とにかく行ってみよう」


 PCたちはバーモント劇場の方へ走りだします。途中、朝早くから店の準備をしている八百屋のピグゴー に尋ねると、ニキータとおぼしき少女がバーモント劇場の方に駆けていったことが判明します。


GM 練習場では、朝練が行なわれています。公演が間近に迫っているとあって、練習にも熱が入 っていますが、今日はいつも以上に活況です。
スコット 「こんにちわ〜」
GM し〜ん。
ハンス しょうがない、入ってみよう。
GM 練習場内では、ステージを周りをみんな驚いたような表情で取り巻いています。その中心に いるのはニキータ。大人の軽業師並みの軽やかな技を、劇団員の前で披露しています。
トレイシー やっぱり…
GM 宙返りをして見事に着地を決めたニキータに、盛大な拍手が起こります。
 トマスは「やっぱ、凄いや、キミ!」と叫んでいます。
「父さん、この娘ならボクの代わりがつとまるよ、きっと!」
 しかしボールは、
「たしかに軽業はすばらしい。それは認めよう…しかし、それだけでは解らない。次は演技の方だ…」と 唸っています。


 劇団員の一人を捕まえて事情を聞くと、朝早く、トマスがニキータを連れて練習場に現われたと言いま す。そして、練習の指揮をとっていたボールに直談判したそうです。 それは昨夜からずっと行なわれて いたらしく、寝不足だった二人はついに折り合い、ニキータの力量を測ろうということになったというこ とです。
 そして、試験はそのまま行なわれ、ニキータの軽業に一同目を丸くしていたところだといいます。
 演技のテストは、上演予定の劇の何場面かをぶっつけで演じてみるというものです。
 「そんな無茶な」との声ももちろんあがりますが、「台詞は適当でも構わない。とにかく、器を見たい」 とのボールの一言によって、この入団テスト(?)が始まったのです。


ハンス 「また、無茶したもんだな」
トレイシー 「でも、それだけあの子がやりたがってるっていうことなんでしょ」
ハンス 「そりゃま、そうなんでしょうけどね」
GM かくして試験は続きます。
 と、その途中…バタンと音がして練習場の扉が開きます。「こ、困ります」という団員を押し退けてズカ ズカと入ってきたのは…
スコット 誰?
GM ご存じ海軍少尉ジョン・カーライル!
一同 げっ!?
GM 「これは、どういうことだ!?」
ハンス 「あ、いえ、その…ですね」
トレイシー 事情を説明します。「実はこのニキータが演劇をやりたがっていて、それにこの劇団 にも欠員が出来たみたいで…」
GM その説明にジョンは激憤します。
「冗談じゃない! この子をそんな衆目に触れる場に出させるわけにはいかん!」
トレイシー 「どうしてです?」
GM 「い、いや…その…とにかくダメだ!」
トレイシー 「いくら軍人さんだからといって、そんな勝手が通るとでも思ってるんですか!」
スコット 「そうだ、そうだ! 横暴だぞ!」
ハンス 「まぁ、いいじゃないですか。我々も『人間的な生活をさせてくれ』と、フェリエさんに 言われてますし」
GM 「…解った、勝手にしろ!」と、ジョンは苛立たしげに練習場を後にします。
ハンス やった、勝った!(笑)


 結果、ニキータは合格します。その才能は、ボールが目を見張る程のものでした。
 この日からニキータの参加が決定し、朝食の後、速攻で劇練習が開始されます。とはいえ、時間がないの でほとんどぶっつけで通し練習という形です。
 練習は苛烈を極め、大人の団員でもヘトヘトになるような内容です。
 しかし、ニキータは生き生きとその中で弾けています。


トレイシー 「ニキータ、辛くないの?」
GM ニキータは「そりゃキツいけど、とっても楽しい」と、目を輝かせます。
トレイシー 「そう…ならいいのだけれど」


ハンス 「それじゃ、本官はパトロールに戻るとするか」
トレイシー 「私はもうしばらくニキータを見ていますわ」
ハンス 「お願いします」
GM スコットは?
スコット そうだなぁ…やっぱバイトに戻る。(笑)
GM なら、スコットとハンスが劇場から出たとき…フッと頭上の陽が陰ったかと思うと、ドサリ と何かが目の前に落ちてきます。
ハンス 「わっ! なんだ?」
GM 見ると、それは人間です。
スコット げげっ!
GM 屈強な大男ですが、胸に短刀が突き刺さっており、その周囲に血が滲んでいます。
ハンス これは大変だ。調べてみよう。
GM 調べても息はありません。詳しく調べるなら、知覚判定をしてください。スコットは÷2判 定、ハンスは専門職ということで×2判定でいいです。
スコット 失敗…WOLも失敗。
ハンス 成功!
GM ならハンスには、血の飛び具合などから、その短刀は投げ付けられたものだということが判 ります。素晴らしく腕の立つ者の仕業です。それ以上のことは、一切の証拠は残っていません。短刀も、 どこにでも売っているごく普通のものです。その刃が、恐ろしく研ぎ澄まされていることを除けば…。
ハンス こりゃ、どうしたことだ…? とりあえず部長に報告しよう。
GM エムス巡査部長は報告を聞いて、めずらしくすぐに駆け付けてきます。
スコット 『めずらしく』か。(笑)
GM 巡査部長は現場検証を軽くすませると、難しい顔で、
「ハンスくん、この事件は私が預かる。キミは見なかったことにしたまえ」
ハンス 「はぁ、いやしかし、私が第一発見者でもありますので…」
GM 「二度も言わせるな。それとも、私の命令が聞けんというのかね?」
ハンス 「いえいえ、滅相もありません! 解りました、このことは忘れます」
GM 死体は秘密裏に片付けられます。その方法や行方については、ハンスには知らされることは ありません。
スコット 何だか、不気味な話…。


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