2001.6.12.00:38
みんなが反対した結婚だったが、彼女は後悔していなかった。

もっとも反対したのは父だった。
大学の友人も口々に「やめた方がいいんじゃない」と言った。
母は「心配だわ」とつぶやいた。

彼女が結婚しようとしているのは、ボクサーなのだ。



良家の一人娘として、大切に育てられてきた少女。
彼女が学校の帰りにからまれたとき、助けに入ってくれたのが彼だった。
まったく異なるタイプであるがゆえにお互い惹かれ合い、
周囲の反対にも負けず、愛をはぐくみ合った。


そしてついに───

(……結婚、か。なんだか夢みたい)

花嫁衣装に身を包んだ彼女は、鏡にうつった自分の姿を見ながらそう思った。


猛反対していた彼女の両親も、愛娘の必死の懇願(と多少の脅迫)を受け、しぶしぶ結婚を認めることにしたのだった。
父は相変わらず、「あの間抜け面に……!」とぶつぶつ言っていたが。

しかし、たしかに少し間の抜けたところもあるが、彼女が愛してやまない、彼の誠実さや真面目さがあれば、間違いなく幸せになれる、と彼女は確信していた。ボクシング一筋で来た人だから世事には疎いが、その分は自分がカバーしてあげることができるし、ジムの会長さんが世話してくれたパートの仕事にも慣れてきたし。

(彼もしばらくしたら引退して職に就くって言ってくれたし)

彼女は実に幸せだった。

───そう、結婚式の途中までは。




「それでは指輪の交換と誓いのキスを…………」


その時。その運命の瞬間。



───時は止まった。



彼が内ポケットから取り出したのは、








四角いリングだったのである。




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