| 2001.11.14.23:30 |
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「実は、」と、ある友人が困り顔でぼくに話しかけてきた。「今ちょっと難しいことになってるんだ……」 ぼくは、この友人が自分の弱みをなかなか他人に見せないことをよく承知していたので、ちょっと興味を引かれた。こいつが人に何かを相談するなんて、いったい何年ぶりだろうか。(多少大げさに聞こえるかもしれないが、本当にそのくらいめずらしいのだ。)なにがあったんだろう。すると彼は、ぼくの顔を見て、二ヤっと笑って、続けた。 「 いや、そんな緊張した顔をしなくてもいいんだ。大したことじゃない。ないんだけど、おまえの意見も聞いておこうと思っただけのことなんだ……。 「 3日前のことだ、おれのところに一通の手紙が届いたんだ。 『全国副会長の会』ってところからだ ……いや笑うなよ。 ほんとの話だ。 「 内容は大したことじゃないんだ───いや、大層おかしな内容ではあるにしてもな。 会の名前を目にしたときに、うすうすそんな内容じゃないかって気はしてたんだけどな、ああ、そう、そうなんだよ。そのまさかなんだ。 今度、全国の、とにかく“副会長”って肩書きを持ってるヤツ、そいつらを集めて、会を作りましょうって話なんだよ。 ……そうそう、おれも一応サークルでは“副会長”だからさ。 「 それにしても、なんでそんな、と思うだろ?おれもそう思った。 で、その会とやらを設立する意義ってのが手紙の中にあってな、読んでみたんだけど、まあ要するに、トップの人間よりも、2番手にいるヤツの方が苦労しているんだと。 そういう苦労話を分かち合いたいってこった。 「 いや、実際にはそんなアホなことは書いてないよ、おれの要約さ。まさかそんな紹介はしないよ。 だっておまえ、そんな暗いヤツばっかり集まってそうな会に入りたいと思うか?思わねーだろ? 手紙にはちゃんと、分野の違うもの同士の交流、とかな、そういう意味のことが書いてあったよ。 「 入るのかって? いや、おれのところにはなにかの手違いで送られてきただけだからな ……おれが学生だってこともわかってないんじゃないかな。 きっと、だれかが早とちりして、よく確かめもせずに送ったんだろ。 「 それにな、おれにはその会に入れないわけがあるんだ。入会規約ってのがあってな、 ……まず第一に、今現在、なにかしらの団体で“副会長”の役をつとめていること。当たり前だけどな。 で、第二に、その団体が50人以上の規模を持つこと。……ほらな、もう失格だろ? んで、さらに第三として、入会金として一人二万円、年会費を年に二回、一万三千円払うこと、ときた。 こりゃーもう絶対に無理だもの。 「 でな、こっからが本題なんだけどな───ちょっと困った規約が載ってたんだよ。 どういう規約かっていうとな、‘副会長以外の役職に就いた場合は退会してもらいます’、っていうヤツなんだ…。 この一文がおれの頭にこびりついて離れねーんだ。 解決できないんだ。 どうしたって、わけがわからないんだよ。 「 だって、じゃあ、その『全国副会長の会』の会長には誰がなるんだ? 」 そこまで一気に言うと、友人はちょっと考えこんだ。そして、「……おまえ、わかる?これ───」とぼくに聞きかけた。が、すぐに思い直したらしく、「わかるわけねーよなー」と小さくつぶやいた。そして気を取りなおしたように、「じゃあ」と言った。ぼくも、「うん、じゃあ」と答えた。彼は、「変なこと言って悪かったな」と、ちょっと照れくさそうにしながら、駅の方に向かって歩いていった。 友人が立ち去ってからもしばらく、ぼくは彼が言ったことについて考えていた。確かにその通りだ。その通りだ……。 それにしても…… やつがもっと早くに教えてくれさえすればなあ……と、学校一の人数を誇るテニスサークル『レイン・コート』の副会長であるところのぼくは、二万円の振り込みの受領証を握りしめながら、その場に崩れ落ちるのだった。 |