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 ここではクラインエンジンを彩る、多彩な世界観を紹介します。現在は、2000年夏のコミケットで頒布した「ヴィジュアルブック」の内容を紹介しています。順次新しい原稿&本文使用予定のイラストを掲載してゆきます。


世界観の紹介


世界観イメージ

 目が覚める。カーテンを開く。鎧戸を開ける。美しい朝。空には輝く太陽と一筋の雲、窓の下には幾筋もの水蒸気の柱が、広がっている。
 この年、世界は文字通り日々変化していた。生活は目に見えて便利になり、快適になり、優雅になった。毎日どこかで発見があり、発明があり、発表があった。
 様々な機械が、街を埋め尽くしていた。そのどれもが、誰かの生活がより豊かになるために、他の誰かが作った物だった。
 昨日まで存在しなかった鉄の塊は、その日の内に拍手で迎えられ、その夜には生活の一部となり、次の日には、まるで何年も昔からあったかのように、違和感無く街にとけ込んだ。まるで今まで無かったのが不思議かのように。
 1日が終わる。鎧戸を閉める。カーテンを引く。目を閉じる。遠くで、いつもの爆音が聞こえる。最新式のエンジンを積んだ蒸気バイクが、石畳を駆け抜けている。今日もどこかで、この機械と生命が共存する街で、名誉と信念を賭けた決闘が行われている。まるで何百年も昔から、そうやってきたかのように。

 ユグドラシルの朝は、スノーポールの鐘の音とともにはじまる。
 新しい朝を告げるその鐘の音が、学校へ急ぐ生徒達の足を早らせ、見習いの工夫が、あくび混じりに、炉に火を入れる合図になっている。
 空は青く、時折真っ白な水蒸気が、筋になって天高く昇って行くのが見える。今日も一日がはじまる。
 石畳の道路には、2頭立ての馬車と蒸気バイクが、お互いの存在を尊重しながら、目的地に向かっているのが見える。
 街中にはクラブが点在し、日夜、紳士も淑女も、それぞれの領域、それぞれの意識で、明日の自分達の事を熱く話し合っている。
 建物の壁には至る所にパイプやチューブが這わされており、そこからから白い蒸気が吹き出している。大通りでは無骨な機械の固まりである蒸気バイクが一日中走り回っている。しかし、この世界の主役はあくまでも人間であり、誰もそのことに意義を挟んだりはしないし、未来に対し、いかなる不安も持っていなかった 。
 この街は、常にそうしてきたし、これからも、きっとそうしてゆくのだろう。
 その時、確実に、人間は機械と共存していた。

 街を歩いていると、1日に数度、すぐ横をものすごい速度で通り過ぎる鉄のかたまりに遭遇する。クラインエンジンを積んだ、一般にスレイプニールと呼ばれる蒸気バイクである。
 クラインエンジン商会が発表した驚異の内燃機関「クラインエンジン」によって、人類はこれまでのどの乗り物よりも速い二輪車を手に入れた。
 もとは軍用兵器だったスレイプも、数年前に民間人にも利用許可が下り、またたくまに、紳士淑女のたしなみとなり、今やそれは、他の機械達と同じように生活の一部と化している。
 公式の大会も毎月多数開かれており、同時に、伝統的な決闘の様式として認められるまでなっている。
 決闘のある日は、都市はその話題で持ちきりになり、街中の建物の窓から、勇敢な紳士淑女を乗せた2台のバイクを一目見ようと、外をのぞいている人々を見ることが出来る。
 神話の時代、神々に追いつくために人間が作った機械の馬から取られ、スレイプニールと言う名の付いたその蒸気バイクは、その名を恥じることなく、搭乗者の名誉と信念を載せて、今日も街中を爆走している。

 両手で抱えた鉄のかたまりを、自分たちと同じくらいに既に鉄くずになりかけている相手の機体に向ける。
銃口の先、延長線上に装甲がはがれてマシンの急所が見えている。勝負あり。我々の勝ちだ。
 引き金を引いた瞬間。女の頭に浮かんでいたのは、、負けてひざまずく相手の姿でも、勝利に喜ぶ自分の事でも、ましてや今日の夕食のことなどでは決してなかった。
 引き金を引いた瞬間、女の頭に浮かんでいたのは、これまでも、そしてこれからもともにするであろう仲間の事だった。自分が引き金を引くこの一瞬のチャンスを作るために、毎回驚異的なの技術と運で支えてくれる仲間のことだった。
 女はこの一瞬が、彼らの、3人の望みが結実する、この引き金を引く一瞬が、永遠に続けばいいと思った。
 女は引き金を引いた。


組織

六貴族

 ユグドラシルを権威によって支配する、貴族の中でも最上位に位置する六家系。都市中に張り巡らされた伝統という名の鎖をその手に収めている。財力、権力、人脈、どれも限りなく、まさに君主の中の君主ということができる。
 商工ギルドに財の一部を提供し、その利子によって生活しているようだが、さらなる利益のために都市の至るところで暗躍しているというもっぱらの噂である。スレイプの大会でも、六貴族のどこかがスポンサーになっているチームが大抵上位に入賞するが、それが実力なのかそれ以外の要因によるものなのかは不明。
 各家は、表向きは友好関係を保っているが、水面下では想像を絶した確執、破壊工作などが行われているという噂である。

 それぞれの名称は以下の通り 
シュミット家
マグウィー家
アルフハイム家
レザランド家
チェットフィールド家
オセアルロプス家

商工ギルド


 ユグドラシルを経済によって支配する組合。表向きにはギルドのギルドといった役どころだが、貴族から借り入れた金(ユグドラシルの全貨幣量の三分の二)を市場に投入したり溜め込んだりすることによって、市場価値を操作する役割も持っている。長い間、都市の経済機構を支配してきたが、近頃、都市外に増大する植民地や他の都市からの需要に応じきれなくなってきている。内部では機構の変革を求めて、対立が続いているらしい。
 10年ほど前に比べると、規制も緩やかになり、かつてほどの強制力は持っていないが
、依然としてユグドラシルの経済界では強い力を
有している。

ガーデン

 もとはウォットフォードにあったため、ウォットフォード・ガーデンと呼ばれる。(普通はたんにガーデンという)ユグドラシル内の犯罪を取り締まる役割をもつ。
 軍と議会に人事権があり、この2つの勢力にめっぽう弱いうえ、貴族(や一部の商人)に対する逮捕権を認められていないために、役立たずといった感が強いが、人柄のいい人物が多く、市民には評判がよい。
 市民によって構成されているので、主人公達とも(よほどの事をしなければ)友好的に接してくれる。彼らは正義感にあつく、おまけにナイツや貴族が大嫌いなので、彼らの悪事を暴くためであれば、喜んで職権を乱用してくれるだろう。

ナイツ


 通称ナイツ。ユグドラシルを軍事的に支配する勢力。都市ではなく、国に属している。陸軍と海軍に大別される。陸軍のなかにはスレイプの部隊もあり、無敵をほこっている。
 ユグドラシル市中の監視、郊外演習、災害時の救出作業、都市防衛などが主な任務内容であるが、実戦経験も豊富で、とくに海軍の強さとスレイプの練度は圧倒的である。
 都市では「貴族側」に属し、ゲーム内では典型的な「敵キャラ」である。
 庶民の衆であるガーデンや、スレイプを乗り回すバイク乗り達を毛嫌いしている。少しでも彼らの前で貴族の悪口でも言えば、無条件にお尋ね者にされてしまうだろう。

貴族

貴族
 ユグドラシルにおける貴族とは、六貴族に対し忠誠を誓い、彼らから爵位を受け取った者達のことを指す。この十数年間爵位授与は行われておらず、今は血筋により生まれつき貴族として生きる者がほとんどである。
 彼らの多くは、先の大戦における(お父上かそのまたお父上の)活躍によって、多額の報償金を得ており、生活には全く困っていない。
 人によってはその資金を商工ギルドに貸し出したり、個人で事業を展開したりしている。
 彼らは、一般市民が自分たち由緒ある血筋の為に働くのは当然だと考えているらしく、過酷な労働条件を平気で提示してくる。市民は、職を失うのも、貴族に逆恨みされるのも、なにより、この金だけ持ってる頭の悪い奴らと付き合うのが嫌なので、我慢して働いている。
 しかし、バイクレースとなると話は別で、貴族のバイクチームは(彼らの傲慢の態度や言動が原因で)、市民のチームに決闘を申し込まれることが多い。この時勢にバイクをまたがる貴族は大抵自尊心のかたまりのような輩ばかりなので、皆申し出は受けるが、あまり強くないことが多い。

クライン商会 Claine & Co.

 設立年不明。
 スレイプニール協会の聖職者の多くが所属している、最も古い商会。
 創立以来、数多くの技術革新を行ってきた。なかでもここ百年ほどの業績はすばらしく、主だった発明としては、1745年にネッド式蒸気機関を発明したのを皮切りに、1773年に太陽双子歯車機構を、1777年に小ニューコ機関、1806年の遠心鎚式調速機、1824年にトレヴィンの後揺動機関、1837年には現在のクラインエンジンの原型である双子機関(これはのちに「太陽朝夕機関」と改名された)、そして1841年のクライン式蒸気機関、「クラインエンジン」の発明と、ユグドラシルの技術水準を大いに引き上げた。
 もともと、協会内部の研究機関であり、聖職の一分野として、ある程度の援助を得ていたが、協会腐敗時代(14c〜16c?諸説あり)においては、その研究内容が理解されず、廃止されそうになったが、聖メリアドナ(→「聖メリアドナ」)らの尽力により、都市での超法規的活動をゆるされ、今に至る。


決闘

決闘の歴史

序(決闘の歴史)
 決闘とは、地に足をつけ、銃や剣を用いて相手を倒すものである。
 
 貴族であろうが庶民であろうが、かつてはありとあらゆる事件は決闘によって解決されていた。愛、名誉、信念、友情、財産、権利、復讐……それらゆずれないもののために、人々は戦い、傷つけあい、血を流しあった。
 礼を失した決闘がなかったわけではない……ちょっとした誤解から決闘になり、命を落とす羽目になったものも少なくない……卑劣な裏切りが行われなかったわけでもない……。それでも人々は懲りずに叫んだ。
「決闘だ!決闘だ!!決闘だ!!!」
  
 しかし、時代も近代に入ると、人々は決闘の精神を徐々に失っていった。
 すなわち、誇りも名誉も捨てて、裁判や法律といった、巨大な機械の中に「公正」を放り込んだのである。
 そしてその結果……決闘という考え方そのものが失われた。
 否、決闘は依然として行われていた。しかしそれはもう、かつてのような優雅で紳士的な代物ではない。ただ野蛮で、単純な殺し合いにすぎなかった。
 (もちろん、一部礼節を知る紳士たちがいたことも記しておく必要があるだろう)
 だが、しかし、だからといって、紳士たちの中から、名誉と信念を守らんとする誇り、それに闘争心が失われたというわけでは決してなかったのである……!
 
 やがて蒸気バイクが登場する。
 紳士たちはいかなる夢を見ただろうか……?

決闘の形式

 ユグドラシルの紳士淑女達は、総じて気高い魂を持っており、決して体制に懐柔されたり、権力に屈したりしないという決意を持っている。
 彼らは滅多な事では怒りに我を忘れるような事は無いが、自分の名誉と信念を傷つけられたとき、烈火のごとく怒り出すという特徴がある。
 そのようなときは、紳士は左手の手袋を脱ぎ捨てて、相手の胸元にぶつけて必ずこう叫ぶ。
 「もうゆるせん。決闘だっ!」
 売られた喧嘩は買わねばなるまい。相手も必ずこうかえす。
 「良かろう。では、バイクで勝負だ!」
 かくして、彼らは仲間を呼び、3人乗りのバイクにまたがる(この場合、当事者でない搭乗者は、決闘の立会人と医者を兼ねる)。
 勝負はどちらかのバイクが止まるまで。勝者は最後まで動いていたバイクの搭乗者である。
 この世にも不可思議なバイクレースはユグドラシルでは名物のような物で、ひとたび決闘が始まれば、都市はお祭り騒ぎの様相を呈する。それというのも、決闘は六貴族の管轄にあり、勝負の行方が都市ぐるみの賭の対象となるからである。

 
決闘の不文律

一、どちらかのバイクが停止するまで決闘は続けられる
一、「故意に」相手を銃・スパナ・キック等の標的にしてはならない
一、決闘者、及び立会人以外の人間を負傷させた場合、決闘は中止となり、理由の如何を問わず、負傷させたチームの敗北とする
一、相手のバイクから二区間以上離れてはいけない。決闘チーム同士のバイクが二区間以上離れた場合、決闘は中止となり、離れたチームの敗北とする。「どちらから」離れたかは立会人の判定に従うものとする
 
 なお、レース時には、そのレースの主催者側より公式にルールが提示されるのが普通である。レース・ルールのなかには相当に変わったものもあるが、上記の5つは暗黙の了解として大抵のレース・ルールに組み込まれている。

賭博・スレイプギャンブル

 どこかで紳士淑女が決闘を始めると、ユグドラシルのあちこちで、その結果について、賭け(ギャンブル)が行われる、という。これが俗にいう「大人の遊び」──スレイプギャンブルである。
 ユグドラシルでは、とある紳士(あるいは淑女)が相手の紳士(または淑女)に向かって手袋を投げつけた瞬間からおよそ1、2時間ほどで全市の人間にそのことが知れ渡ってしまう。(たとえその場に当人同士しかいなかったとしても!)
 そのため、決闘時にはギャラリーや予想屋、情報屋、決闘市(→「決闘市」)の露店などで、その通り(ストリート)はごった返すことになる。
 その通り(ストリート)に直接行くことができない人でも、六貴族・商工ギルド連名の「賭け札(ブラックチケット)」を買えば、賭けに参加できる。(ちなみに、このチケットを使って、パーム川の渡しを利用することもできる)
 これはクラブ(→「クラブ」)やサロン(→「サロン」)ではごくごく普通に行われているもので、スレイプニール協会や議会も黙認している。
 しかし、路地裏などでは「賭博を目的とした」決闘が行われている。スレイプニール協会では、これを明らかな冒涜行為として、固く禁止している。

バイクの変遷

 神話の冒頭、製世記に書かれている、ガイアが目覚めたときに双子の足下に伏していた二本足の馬、スレイプニール。
 『風よりも速く駆け、高熱の息を吐く』この馬は、『漆黒の血を持ち、巨大な翼をはためかせ、その咆哮すさまじく』まさに神々が乗るにふさわしい気高い獣だった。
 人はスレイプニールにあこがれたが、かつてのユグラドシルに関する資料の大半は1666年の大火事によって消失してしまった。
 現存する最も古い(とされる)蒸気バイクは、ニューガーデン広場にあるユグディッシュ博物館所蔵の『オーディン1223』である。『オーディン』は、フレーム部しか残っていないが、数少ない資料と専門家の鑑定によれば、およそ600年以上前、太陽暦1223年頃のものだと言われている。

 その後、奇跡の内燃機関「クラインエンジン」を
双子神話を信仰するスレイプニール協会が発明することによって、スレイプニールは現代によみがえることになる。スレイプニール協会はクラインエンジンの製造、販売を行うために、内部機関であったアクスブリッジラボ」を「クラインエンジン商会」として分離、ユグドラシルの住人に驚くほどの安値で販売を開始した。
 ただし、これには奇妙な規則があり、曰く「エンジンは2輪バイク以外の乗り物に搭載してはならない」「エンジンを分解、改造してはならない」「他人に譲渡してはならない」等々。クラインエンジンは通常の機械工には理解できない構造をしており、慣れたメカニックでも、商会の人間の協力なしには、エンジンコアを修復することは出来ないといわれている。
 この奇妙なルールについて、クラエン商会、並びにスレイプニール協会に問い合わせてみても、「我々は教義に従っているに過ぎず、それ以上話すことは無い」と追い返されてしまう。
 組織ぐるみで謎の多いクラインエンジンだが、バイクそのものが既に生活の一部となっている今、それを疑問に思う人はあまりいない。いても、なぜかいつのまにかいなくなってしまう。そういう仕掛けになっている。

バイクを構成する物

バイクを構成する物
 都市で爆走しているバイクを見ていても気づかないかも知れないが、蒸気バイクは実に様々な部品から構成されている。しかもバイク毎に工房の特徴があり、さらに使い込むとメカニックが極限までチューンナップしてしまうので、全く同じバイクを探すのはほとんど不可能であろう。
 大抵のバイクは、中央の巨大なクラインエンジンを中心に、何十本ものホース、パイプ、鉄の装甲、2メートル近くある煙突、油圧計、サスペンション、バルブ、蒸気弁、銃の為の台座、ハンドル、スイッチ、計算機、食料庫、カップホルダー、鍵盤、伝声管、6種類のアクセルペダルなどを搭載している。
 さらに良く眺めてみると、このスレイプニールという3人乗りの蒸気2輪車は、よく見ると構造上難の意味があるのかよく分からない物もたくさん付いている。いくつか例を挙げると、右ハンドルにぶら下がるカンテラ、足下すれすれに並んでいるランプ、エンジン上部に取り付けられた無数のプロペラや、水中安定翼にしか見えない鉄板、第二サブエンジンに隣接している羅針盤などなど。
 これらの多くは、クラインエンジンの動作上(またバイクをより早く走らせるために)必要不可欠の物であり、また多くはマッドメカニック達が謎の理論によって取り付けた物である。
 他にも純粋に装飾が目的の装備もあり、例えばリボンナイツは自分たちのバイクにこれでもかと言わんばかりに巨大なリボンを飾り立てる(当然レースの度にぼろぼろになる)

 そういった装備の中でも、もっとも特徴的で、どのバイクにも大抵付いている物と言えば、やはり「鐘」であろう。「鐘」がバイクのシンボルになったのはスレイプニールの歴史の中でもつい最近の事で、「半鐘法」という法律がきっかけになっている。
 この法律は、結果として、決闘におけるバイクの搭乗者数を一人増やしたという意味でも、歴史的に意義のある物であるが、法律そのものがどうでもいい内容の物であるため、あまり話題に上らない。

[半鐘法]
 バイクの影響力が爆発的に増大した1770年代、議会はバイクによる被害の増加を重く見て、バイクに関してさまざまな規制を行った。
 そのうちの一つが、バイクによる決闘にとって重大な意味を持つ「半鐘法」であった。
半鐘法
 すさまじいスピードで市内を走り回るバイクは、その機体が新しいストリートに侵入するたびに、6回以上(力一杯)半鐘をたたかなければならない。
 この法規制は、議会の満場一致の可決により成立し、都市中のバイク乗り達に難題を提示することになった。問題点は以下の2点である。

問題点
@運転者の他に、半鐘をたたく人間が必要
Aどこから新しいストリートなのか、見極めが困難
   
 この問題を克服するために、メーカーはバイクを二人乗りにした。一人は鐘をたたき、もう一人が運転するのである(決闘の際には射撃者がさらに増える)。また、第二の問題は、協会によって解決されることになった。「SS(スレイプニール・ストリート)」の制定である。簡単に言えば、バイクが走るための道を、ストリート毎に色分けして舗装し治したのである。
 鐘を鳴らす人間が増えたことで、驚くべき事が分かった。彼は鐘を鳴らす以外の時に、バイクの整備やナビゲーションを行うことが出来るのだ。決闘時に、この半鐘者が必要不可欠なパートとなるのはそう時間のかかることではなかった。


 


神話

双子神話
 双子神話は、よく聞かされる昔話として、ユグドラシルの人々の間ではよく知られている。とくに、バイク乗りの間では、自分たちのたとえ話としてちょくちょく登場する。
 スレイプニール協会で信仰されている、正式な(と協会側は主張する)教義では、「始源の二人(ガイアとオイリス)」「はじめの六人()」というような存在を認めない。
 彼らの教義では、「はじめの六人」に相当するのは、「六徒弟」と呼ばれる、双子から直接技術を学んだものたちである。
 このように、ちょっとした(神学上の見地からは重大な問題だが)違いはあるものの、基本的な内容は同じだといえる。
 ここでは、民間伝承として、「はじめの六人」の出てくる神話の方を紹介する。こちらの方が一般的だからだ。
 
[はじめの六人の誕生(あるいは世界のはじまり)]
もともと世界は今のような形はしておらず、ただ広大な大地の上にぼんやりと闇が立ちこめているばかりだった。
大地は名前をガイアといい、闇はオイリスといった。
ガイアとオイリスは生まれたときから眠りについていて、もう何千年も世界はガイアの静かな寝息とオイリスの悲しいまどろみの中にあるのだった。
ところがある時、オイリスが寝返りをうち、その拍子にガイアが目をさました。
ガイアは長いこと眠っていたためにしばらくぼうっとしていたが、やがて、自分の上に一組の双子がいることに気づいた。
女と男の双子である。
双子は鎚と炉をもち、その足元には二本足の馬が寝ていた。
ガイアの目覚めたのを見ると、双子はガイアの言葉を漏らさないように、口に結んでいた紐をほどいた。すると、ガイアが何千年もの間口に出さなかった言葉が、炎となって飛び出してきた。
その炎がオイリスを焼き、オイリスはびっくりして目をさました。
オイリスの目覚めたのを見ると、双子はオイリスの涙を止めるために目に打ち込んでいた楔を抜いた。すると、オイリスが何千年もの間流さなかった涙が、風となって流れ出た。
………………


チーム名鑑

英国紳士の会

 バイクチーム英国紳士の会は、表向きは海の向こうにある国「英国」の服装、習慣にかぶれた人たちの集まりである。彼らは決闘の時でも、英国人らしさを忘れない。淑女は日傘を差し、殿方にハンカチを振る。紳士は手に紅茶を、もう片方の手にはステッキを持ち、ピンチの時には「女王陛下万歳!」と叫ぶ(意味は不明)。英国アイテムで手がふさがっているのに、どうやってバイクを運転しているのかは、何故か誰も知らない。おそらく英国人は水面下の苦労を人に見せたりしないのだろう。
 しかし、実は、彼らの真の姿は、最近ユグドラシルを騒がせている3人組の怪盗「霧」であった! 大聖堂からアイドルまで、話題に上った物なら、彼らは何であろうと盗んでしまう。彼らは決して弱者からは盗まない。というか、彼らが物を盗むのは金のためではなく、あくまで娯楽の一環のようだ。厳重な警備の隙間をぬって、いかに華麗に、そして派手に盗みを働くかが、彼らのテーマである(これが英国人気質なのか、彼ら自身の物なのかは不明)。彼らを執拗に追いかけているヤーズのレイチェル刑事も、未だしっぽをつかむことが出来ずにいる。
 リーダーのジョルノ(Rider)はどんなときでも、タキシードにシルクハットという出で立ちをしている。もちろん決闘時のバイクの上でもである(「これが決闘の正式な服装だ!」本人談)。一説にはベッドの上でもこの格好らしい。変装の名手であり、世紀の天才泥棒である。チャーリイ(Mechanic)とユアン(Shooter)は彼の良き(?)相棒。チャーリイの鍵開けには右に出る者が無く、ユアンの射撃の腕は男共を骨抜きにさせる。

ヴァイオレット様とその一味

 ヴァイオレット様は六貴族の一つであるチェットフィールド家の長女であり。道楽でバイクをやっている。光り物に目が無く、惚れっぽく、プライドが高い。
 お付きの二人は彼女を慕って、その道楽につきあっている(彼らは普通の貴族)。普段はおとぼけコンビだが、お姫様がピンチになったときには、超人的能力を発揮し、むっちゃかっこよくキメる。
 ヴァイオレット様は美しい物に関して、物、性別を問わず愛してしまう癖があり、始終回りをこまらせているようである。

 

シュミット探偵社

 シュミット探偵社はユグラドシルでもっとも名の通った探偵事務所である。
 有名な理由は3つある。一つ目はあの六貴族のシュミット家の放蕩息子が探偵長である事。二つ目はスペシャルチューンのバイクでユグラドシル中を日夜調査している事。そして三つ目はそのバイクが毎年チャンピオンシップで上位に食い込んでいる事だ。仕事自体の評価はあまり聞かない。一説には金さえあれば証拠をねつ造してまで、依頼を解決してくれるそうだが、真偽のほどは不明。

リボンナイツ

 メンバー全員が女性で、しかも学生という珍しいメンバー構成にも関わらず、各大会で上位に食い込み、女学生達の(多少屈折した)非公式ファンクラブもあるという、彼女らが「リボンナイツ」である。
 特徴としては、リボンナイツは、ウェアに全員オートクチュール(仕立てはマリア通り23番地のブティック「One」)の貴婦人用ドレスを着込んでいる。美しさと運動性を兼ね備えており、紳士達の目を釘付けにする。
 リーダーのマリア(Rider)は6貴族の一人シュミット家の長女(実際には養女)。正義感にあふれ、間違った事がとにかく嫌いで、負けず嫌い。それが原因で争いに巻き込まれること多数。
 エリザ(Shooter)とベティ(Mechanic)はマリアの女学校の同級生。彼女らは女学校の傍ら、レースに出場しているわけである。エリザは背が高く、長い髪を腰まで伸ばしている。無口。級長で、フェンシング部の部長も務めており、一度ねらった獲物は決して離さない。ベティは一言でいえば「可憐」。争い事が嫌いだが、たぐいまれなメカニックとしての才能を有しており、外見に惑わされると大変痛い目に遭う。
 主人公達が同年代なら、リボンナイツは彼らをライバルと決めるだろう。マリアを怒らせるようなことがあれば、彼女は簡単に決闘を挑まれてくれる。


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