TIMES(工事中・まだレイアウトしてません。文章書いてるだけ)
「蒸気革命クラインエンジン」の原型が出来るまで
「クラインエンジン・ザ・スチームパンク(旧名称は「蒸気革命クラインエンジン」)」を最初に思いついたのは98年の5月頃だったと思う。大学の授業中突然思いついたアイデアを片端からルーズリーフ裏表分くらい書き連ねた。そのころはよくそんな風にアイデアを思いついては書いていたので、クラエンはその中の一つに過ぎなかったわけだが、まさかここまで長く続けるとはさすがに考えてなかったように思う。
そのときの資料は既にどこに行ったか分からないが、3人乗りの蒸気バイクにライダー、シューター、メカニックが乗り込むというアイデアはそのときに出来た物である。当時は決闘という概念はまだなく、荒野をバイクで爆走し、古代巨人の遺跡に行って、そこを守る機械の怪物達と戦うという設定だった(今思い返すと、これはこれで面白いかも知れない)
早速アイデアを10年来のゲームデザインパートナーでありイラストレーターの田中に説明。3人乗り蒸気バイクという設定の面白さ、なおかつ「人数限定TRPG」というアイデアがお互いの感覚を刺激し、すぐにこれをチームの主力システムにする事を決定。システムの設計作業に取りかかった。タイトルはこのころから「蒸気革命クラインエンジン」だった。仮称の筈だったが、結局この名称でで第一版を発行する事になる。
当時(今も)、TRPGは数はあるけどどれもバリエーションに乏しく、新しい物を買ってきても使い慣れたシステムで遊ぶというのが横行していた。行為判定と戦闘ルールだけでは新しいゲームとは言わない。ゲーム全体の構造を、システムが提供しなければならない。竹並はそう考えた。これは「システムロールプレイ」として、以後竹並のゲームデザイン思想の根底を流れていくことになる。
初めにぶつかった問題は「スピード感」であった。バイクを乗り回すのがメインである以上、その速度をプレイヤーが体感できなければならない。荒野の中を爆走する際に、どうやってそのスピード感を出すのかが問題とされた。そのころの合い言葉は「荒野を駆け抜ける風を感じる事」だった。
自分の行動を事前に宣言しておいて操縦のままならさを楽しむとか、荒野を巨大なダンジョンに見立てるとかいろいろ考えたが、どうにも上手くない。荒野では、対象物が無いため、相対的に自分がどれくらい早く進んでいるのかが分からないのだ。
そこで、もう一台バイクを登場させることにした。さらに、街の中であれば対象物が山ほどあるため、スピード感を感じる事が出来る事に気づき、都市を巨大なレース場と捕らえる現在の雛形が生まれた。
アドレナリンメーター
当初より、クラエンは既存のTRPGに対するアンチテーゼの感覚があったが、その象徴とも言えるのがアドレナリンメーターである。
一般的なTRPGのシナリオでは、ラストにはラスボスとの戦闘があるというのがパターンである。これを嫌う人もいるが、大多数は戦闘が好きなのだ。であれば、「ラストは必ず戦闘」でいいじゃないか。そこに向けて集約するシステムを作ろう。というわけでアドレナリンメーターが誕生した。
アドレナリンメーターの目的は、「プレイヤーが、今現在セッションのどの段階にいるのか」を把握する事。更に、キャラクターのテンションの高さを視覚的に理解させ、しかも針が振り切れたときにゲーム中唯一の戦闘が行われる事が約束されている。
今までのTRPGでは「練習」と称して、意味のない戦闘を間に挟むのが仲間内で通例だった。これは無駄にプレイ時間を延ばし、実につまらない物だった。クラエンでは戦闘は「システム上」、セッション中一回しかない。しかもそれは己の信念と名誉を賭けた「決闘」と呼ばれる。いやがおうにもラストに向けて気合いが入る。
初めは、キャラクター毎にメーターがあり、それぞれのテンションの高さを表していたが、「それよりもチーム全体での値を示した方が良い」となり、マップにメーターをつけることになった。
こうして、前代未聞の、都市限定でマップ無しではゲームが出来ない、決闘を主軸に進めるTRPG、蒸気革命クラインエンジンの原型が誕生したのである。
都市ユグドラシルとマップ
初め、都市は実在のロンドンにする予定であった。これは竹並がホームズファンだったからに他ならない。田中は当初よりこれに反発していた。遺跡にせよ、神話にせよ(ゲーム全体を神話が支配するというアイデアは、古代巨人の遺跡の名残であるといえる)、オリジナルの「過去の」設定を、実在の都市に搭載するのは無理がある。竹並はだからこそ面白いと主張した。これには結構な時間がかかったが、最終的にはオリジナルの方が面白くなるということで決定。冒険と決闘の都市、ユグドラシルが姿を現したのである。
マップ作るに当たり多くの物を参考にしたが、特に気にしたのは「スコットランドヤード(ラベンズバーガー)」と「10の怪事件(二見書房)」である。どちらもTRPGとは関係ないところがIFらしい所だ。
ドイツボードゲームには大変な影響を受けていると思う。彼らはオリジナリティとは何かを真剣に考え、実に魅力的なゲームを山のように生産している。これは自分に、ゲームシステムの分野にはオリジナリティがまだ山のように存在することを認識させた。
ツインズロール
ツインズロールをいつ思いついたかはちょっと思い出せない。初めからあったわけではなかったと思う。
シティアドベンチャーでは、一人のキャラが行動しているとき、他のキャラに出番が無いという致命的な自体があり得て(しかもそれが多発するため)、それをなんとかしたいと思っていた。プレイヤー間の協力関係を明確にし、行為判定そのものをロールプレイにしたいという竹並のゲームデザイン思想の現れであるとも言える。
99年2月頃、日本最大のTRPGハブステーションTRPG.NETの掲示板の一つ「創作ルールを考える」において、今となっては伝説とも言える「オリジナル行為判定対決」なる物が行われた。発端は、Funkさん(現古荘キヨ乃さん。オリジナルTRPG「SCARRED」のデザイナー)が「2D6判定なんて古い! これからは多面体の時代だ!」といいだした所に、時のデザイナー河嶋陶一朗さん(プロゲームデザイナー。インディーズでは「サタスペ」のデザイナー)が「ゆるせん、勝負だ!(笑)」とかみついて、様々な同人デザイナーが独創的なダイス判定方法を提唱した。クラエンはそのとき「太陽と双子ロール」として参戦。見事決勝まで残った。結果発表は無かったが、後で河嶋さんに聞いた所によると(実は対決全体が河嶋プロデュースによる企画だったらしい>もう時効ですよね?)、太陽と双子ロールが優勝する予定だったらしい。
この対決の副産物として、2月に、この掲示板に出入りしているアマチュアデザイナーが自分たちのオリジナルTRPGシステムを発表しあう、「オリジナルゲームオフ会」が、Funkさん主催で行われた。
お互いの作品のプレゼンテーション&ディスカッションと、動くシステムに関してはテストプレイを行い、更にプロの編集者によるルールブックのレイアウトワークショップが開かれるなど、実に有意義な会であった。あれに出席していなければ、確実に竹並の方向性も変わっていたように思う。特に天才河嶋陶一朗氏に出会ったことは、最高に刺激的であった。
この会の2次会において、竹並は河嶋さんに太陽と双子ロールの欠点を指摘された。
その当時、ツインズロールは単に2D6がゾロ目であればその目だけサイコロを振るという物だったのだが、これではゾロ目に気づかない可能性がある、というのが河嶋さんの主張。対決の時でも指摘されたように、ゾロ目にボーナスが付くという考えは、T&Tで既に存在したアイデアだった。しかし、T&Tでは、PC側のメリットになるにも関わらず、このゾロ目に「気づかない」という現象が多発したのである。クラエンでもこれが起こる可能性があるというわけだ。
その後7転8倒の末に生まれたのが「ON・OFFルール」だ。能力値のカテゴリー毎にON・OFFを決め、2D6を振ったときに、OFFなら大きい目を、ONなら小さい目を振り直し、ゾロ目ならツインズ発生。これによって、ゾロ目忘却問題を回避し、更にツインズロールを、念願であったシステムとリンクした判定方法に仕上げることが出来た。この「ON・OFF」という概念はクラエン世界そのものを貫く物であり、スイッチアクションもこのころ概念が完成したように思う。クラエンの基幹システムは、天才ゲームクリエイター河嶋陶一朗のアドバイスを、竹並が昇華させることにより、完成の域に達したわけである。
赤サインペン
どんなことでもそうなのだろうが、メリットとデメリットは表裏一体である。ON・OFFルールを思いついた物の、今度はそれをどうやって表現すればいいのかが分からなかった。能力カテゴリーの側に「ON・OFF欄」など作ってもインパクトが弱いのである。
これはかなり困ったが、以下のような会話によって解決した。
竹並「カテゴリーを色分けできれば簡単なのにな」
田中「赤サインペンで塗り分けたら面白い」
竹並「みんながみんな用意できるわけじゃないし」
田中「付録につけちゃおうよ、赤サインペンを」
竹並「それだっ!」
最終的に、新宿世界堂本店で赤サインペンを100本購入し、手製のロゴシールを1枚1枚貼って(このシール、見た人は驚いていたが、ほとんどの人は気づかなかったが(徹夜で全てのシールを貼ってくれたtom7氏に感謝する)、恐らく史上初の赤サインペン添付TRPGとなった。
ここから先も話したいことは山ほどあるのだが、長く書きすぎたようだ。いずれ機会があれば話したいと思う。
1999年冬のコミックマーケットで発売
冬コミでの発行は時間との戦いだった。正直テストプレイがほとんど出来ず、未実験のまま提供したルールも多くある。それでも、多くの方に手に取っていただき、また、このゲームの持つ新しさに共感してくださった方も少なからずいた。
2000年夏ヴィジュアルブック。
予定では夏にはクラインエンジンミレニアムと称して、完全版を発表する予定だったが諸事情により作業がほとんど進まず、更に8月一杯を別プロジェクトに取られてしまったため、事実上クラエンの新版を出すのは不可能になった。
時を同じくして、ゲームフィールド主催の、「ゲーマーズフィールドゲーム大賞」において、クラエンが第一次選考は通過した物の、選外という結果に終わる。このことがIFのスタッフ、特に竹並の心に火をつけ、クラエンを全く新しく作り直すきっかけになる。
全てのルールをいったんすべて解体し、「ツインズロール」を中心にルールを統合し直す。徹底的なテストプレイによって問題点を洗い出し、クラエンはまるで全く違うゲームかのように新しい顔を覗かせた。
同時に、名称を変更するようにした。「蒸気革命」は、スチームパンクを意図的に曲解したものであったが、今回はストレートにいこう。スチームパンク物の代名詞と呼ばれるだけの物は作った自信がある。だから名称もそれでいこう。「クラインエンジン・ザ・スチームパンク」だ、と。
そして2000年冬、「クラインエンジン・ザ・スチームパンク」へ
2000年冬にIFが全TRPGプレイヤーに贈る「クラインエンジン・ザ・スチームパンク」はこうした経緯を経て完成した物だ。3年かかってしまったことについてはお詫びしたい。
是非ともコミケ会場まで足を運んだ折りには、我々のブースに寄っていただきたい。手にとってもらうだけでいい。無言で本を戻してくれてもいい。それでも、少しでも、我々がやろうとしていることを感じて頂きたい。それだけを願って止まない。
クラエンはこれからも進化し続けるだろう。そして、IFはこれからも様々な新しい遊びを提唱し続けるだろう。いつまでも、走り続けたいと思っている。応援していただきたい。
全てのゲームはここから変わる。ILLUSION FACTORYが全てを変える。
2000 ILLUSION FACTORY代表 竹並伸