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久遠に臥したる者死することなく その永劫のうちには死すら超ゆるものなり
恐怖はお好きですか。人間の感情の中で、一番強烈なのは恐怖であり、その中でも強烈なのは未知のものに対する恐怖である。これがクトゥルフ神話の作者、H・P・ラブクラフトの主張です。このクトゥルフの呼び声、すでに何度もゲーム化されていますが、現在日本語で入手しやすいのはd20版と呼ばれるものであり、今回はこれに対するレビューとします。ただ、すべて世界観は同じですので他のものの参考ともなるでしょう。
そもそも、このゲーム、ラブクラフトの小説に一貫してある世界観、すなわちクトゥルフ神話を基にしたゲームです。クトゥルフ神話は現在も多くの映画などでイメージソースとして取り入れられ、ホラー作品のベースの一つとなっています。クトゥルフ神話の基本的な考えは、『世界には人間を遥かに超えるものがいて、それらは人間のことなど一考だにしていない。それゆえ、人間はその圧倒的な力の前には抵抗などできようはずもない』ということです。人間は蟻であり、神々は象である。象が蟻を踏み潰すのに、何か、考えがあって行うであろうか?神々はあまりに強すぎ、ただその動き、その姿だけで人間は発狂し、死んでいくのです。
発狂。それこそのこのゲームの真髄です。SAN値(正気度)と呼ばれるものがキャラクターには存在します。これが減っていくと、人間はその恐怖に耐え切れなくなり、最後に発狂するのです。たとえば恐怖症一つとっても50種程度例が挙げられており、人間の狂気のすさまじさを感じることができます。正気度は友人が死ぬを見たり、ゾンビが蠢くのを見たりすると下がってしまいます。それゆえ、このゲームでは能力が高すぎるとかえって余計なことまで気がついてしまい、正気度を減らす結果にもなりかねません。もちろん、能力が低ければなすすべもなく食われてしまうのですが。
このゲームは救いのないゲームです。それは、もともとクトゥルフ神話には一切の救いなどないからです。いわゆるヒーローが悪を倒す作品に慣れ親しんだ人にはまったくお勧めできません。人間にできるのは、ただ逃げ回り、必死でこの怪異から生き延びようと努力することだけです。運良くすれば、悪夢を倒すことすらできるかもしれません。それでも、それは次の悪夢が襲い掛かることを意味するだけなのです。しかし、そんな恐怖の前に逃げ惑うことを積極的に楽しめるプレイヤーには唯一無二のゲームとなるでしょう。
このゲームでは、死は当然のものです。しかし、それでも生き延びようと必死で努力する。むしろ、勧善懲悪の英雄譚よりも、よほど人間らしさを感じませんか。
| タイトル: |
クトゥルフの呼び声 |
| 制作: |
著/モンテ・クック:ジョン・タインズ 訳/中山てい子 |
| 発行: |
新紀元社 |
| ページ数: |
367ページ |
| 定価: |
5800円 |
| 出版年: |
2003年 |
| ISBNコード: |
4-7753-0212-4 |
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