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◆VAMPIRE:THE MASQUERADE◆

 VAMPIRE:THE MASQUERADE(以下V:TMとする)は1991年にアメリカのホワイトウルフ社から発売されたストーリーテリングシステムであり、その後続々と発売されているワールドオブダークネスシリーズの第1弾でもある。ストーリーテリングシステムというのは厳密には(少なくともホワイトウルフ社によれば)TRPGシステムではない。ストーリーテリングゲームにおいては最も重視されるのはストーリーテラー(TRPGにおけるGM)とキャラクターによって織りなされるストーリーであり、ルールはその付属物にすぎない。
 この世界のヴァンパイアは旧約聖書のカインを始祖としており、その後13の氏族に分かれたのだが、それぞれの氏族毎に異なった特徴を示し、“訓え”と呼ばれる超常の力を行使することができる。肉体的には人間よりは丈夫だが、伝説にでてくるヴァンパイアほどタフではない。
 V:TMをファンタジーとかサイバーパンクとかいうカテゴライズをするならば、“ゴシックパンク”という言葉が最も相応しいといえる。ゴシックは「神秘と恐怖に満ちた」といった意味で、パンクとは「何かに対する反抗」を表す。プレイヤーキャラクターは基本的に現代アメリカの夜の闇に潜むヴァンパイアであり、人間社会から自分たちの存在を隠蔽し、影から人間社会を操る“カマリリャ”という組織に属している。カマリリャの長老たちは“ジハド”と呼ばれる権力闘争に明け暮れており、人間を利用すべき対象や捕食する餌としか考えていない。ヴァンパイアとして生を受けて間もないPCたち(ヴァンパイアは人間から創られる)は未だ人間性を保っており、化け物じみた強大な長老に反感を覚えながらも不承不承従っているのだ。
 PCたちの敵は長老だけではない。彼らの精神には捕食生物たるヴァンパイアの本能ともいうべき内なる“獣”が住んでいる。理性や自制が”獣”との戦いに屈するとヴァンパイアはその本能に従って破壊の限りを尽くしたり、相手が死ぬまで血を吸い尽くしたりしてしまう。人間性と“獣”との狭間での葛藤こそ、V:TMの醍醐味の一つであるといっても良いだろう。
 このゲームの最大の長所の一つはは重厚で練り込まれた世界観である。これほど複雑な伏線を張った世界観は今まで見たことはないし、またそれらの伏線が全て真実とは限らないところも使い易くて良い。次に、あえてヴァンパイアという怪物を演じることによって逆にモラルを意識させている点も優れている。彼らは怪物であるが故に自身の怪物性を克服しようとし、サイバーパンクの傭兵よりもファンタジーのヒーローよりも人殺しをためらう。ファンタジーRPGで英雄であるPCが何のためらいもなく捕虜の命を奪ったりするのを見てきた後で、怪物が血を吸うために人を傷つけるのも怖れる光景は新鮮である。
 逆に短所を挙げると、まず第一に、戦闘重視のルールでないにもかかわらず戦闘ルールが煩雑すぎるという点がある。システムの傾向と反する部分でリアルさやディティールにこだわるのには理解できない。次に、世界観が独特であるためだろうが、専門用語が多すぎることも気になった。専門用語だけで目次ができてしまうようでは初心者が取っつきにくいのは間違いない。値段が6000円というのはやや高い印象を受けるが、ページ数や内容の濃さから考えるに妥当な値段だと考えられる。
 とにかく、これまでのRPGに飽きた人や“ゴシックパンク”という言葉に惹かれる人ならば1度プレイしても損はないシステムだと思う。

制作: WhiteWolf
発行: アトリエサード
ページ数: 351ページ
352ページ(普及版)
定価: 6000円
5000円(普及版)
出版年: 平成12年
ISBNコード: 4-88375-050-7 (普及版)