ミラバルの冒険の記録

第1回
ここは本土から離れた離れ島。あまり豊とはいえない島である。ほぼ1年中湿気に満ち、漁業と農業が中心のさびしい島である。私はミラバル。ヒューマンの魔法使いである。”である”と言ってはみたが、ようやく下積みをおえて、師匠に1人前の”弟子”として扱われ始めた程度の駆け出しである。恥ずかしい話、1日1回しか、しかも初歩的な呪文しか使えない。しかし、[いつか天地を揺るがすことができるような大魔法使いになりたい」と果てしない夢を持っている。

私はこの年になるまで、ほとんど毎日を師匠の身の回りの世話と魔法の勉学に費やしてきたので、世間に出ても1人では何もできないと言ってもいい。「いい加減、外の世界を身を持って学ぶころじゃろう」との師匠の言葉に押し出されるように街に出てきたのだが、「はて、一体何をしたら良いものか」と街唯一の宿屋に転がり込んではや数日。世の中というのは思ったよりも何もおこらないらしい。ゴブリンやコボルドの軍隊が街を襲ったりだとか、ドラゴンが財宝を求めて飛び回るなど、ちょっぴり期待はしておったが、やはり書物の中だけのことのようだ。そう思い始めたときに、事件は転がり込んできた。

「転がり込んできた」文字通り、1人の老人が宿屋に転がり込んできたのだ。老人は腹の辺りを抑えるかのようにしたまま入り口に倒れこんだ。「これは俺のものだ...」とつぶやいているようだ。早速ニーサが駆け寄り、老人の介抱を行っている。やはりというかトグル、アロハーは動かないようだ。おっと、紹介を忘れていた。ニーサ、トグル、アロハーとはこの宿屋で知り合った連中だ。ニーサはドルイドというちょっと変わった僧侶である。神ではなく、自然を信仰しているところが僧侶とは違うらしいが、さて、まだまだ勉強不足である。トグルは戦士だ。有る意味私とは対極をなしている。武器を持って戦うエキスパートだ。アロハーは自称商人と言ってはいるが、れっきとした盗賊だ。いろんな奴がいるが、みんなそろって”駆け出し”という点では同じだ。
さて、そうこうしているうちに、老人を街の診療院に運び込むことになり、ようやく重い腰をあげた。宿の広い入り口から老人をそっと運びだし、たんかに乗せる。そんな道中、「カラーン」と軽く乾いた音をたて、老人の手から緑色の宝石が転がり落ちた。もうすでに夜遅くで、道案内の宿屋の少年の持つカンテラ以外ほとんど明かりがないというのに、その宝石は怪しげな光を放っていた。その輝きに目を奪われている一瞬、なめるような不快感に襲われた。宝石から放たれた光が体をゆっくりと突き抜けて行くかのような感覚だ。 「これは、魔法だ」即座に思ったがなぜだろう、言葉が出ない。宝石から目が離せない。と突然体に自由が帰ってきた。アロハーの手が光をさえぎったからだ。「とりあえずこいつは預かっておくぜ」という言葉にただうなづく程度しかできなかった。その後しばらくはみな無言のまま、目の前の問題であるこの老人を運んでしまうことに専念した。運びおえたあと私は、重い足を引き摺りながら宿屋へかえり、倒れるようにベッド(ベッドと呼んでいいかどうか迷うな粗末なものではあるが)に入り、眠ってしまった。


 
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