第2話 「遭遇」 カイル  「待ちな!」 カエデ  「!……」 ラフェル 「どうしたん……」 カイル  「うるせぇ!黙れ!」(耳をそばだててあたりをうかがう) カエデ  「何かいる?」 カイル  「ああ……多分ゴブリンだな、数は5、6って所か……」 ラフェル (小声)「どうして分かるんだ?」 カイル  「まず足跡。これで数と2足歩行か否かが分かる。同時に、素足な       のか爪があるのかも分かる場合もあるな」 ラフェル 「でも、それでゴブリンだと断定するのは……」 カイル  「ああ、次に、服。衣擦れの音はちょっとわからねぇが、武器……       剣を帯びている音はする」 ラフェル 「なるほど……」 カイル  「最後に土地情報。この森で野生の動物で知能のあるのはいない。       武器を帯びてはだしで歩くのはゴブリンくらいだ」 カエデ  「どうするの?」 カイル  「さて……どうすっかな……」 ラフェル 「お二人は、ゴブリンとの戦闘経験は?」 カイル  「(ほう……少し様子を見るか)二人ともある」 ラフェル 「自分一人だった場合、何匹同時に相手にできますか?」 カエデ  「あたしは……2匹……かな?」 カイル  「俺は4匹くらいならいける」 ラフェル 「お二人が町を出てから何日目ですか?」 カイル  「3日。今日の朝から森の中で迷ってる」 ラフェル 「なるほど……カイルさん、魔法は?」 カイル  「魔法は使えねぇ」 ラフェル 「カエデさんは、何をあとどれくらい使えますか?」 カエデ  「えっと、回復だったら、10回くらい。戦闘補助なら2,3回       は……攻撃はないよ」 ラフェル 「分かりました……逃げましょう」 カイル  「逃げるのか?……まあ、良いさ。それならさっさと行こうぜ」 カエデ  「うん」  結局、3人はゴブリンとの鉢合わせを避け、やりすごしてから街道へ戻った。 カイル  「さて、さっきの判断の解説を願おうかな」 カエデ  「あ、じゃあ、あたし料理のしたくしてるね」 ラフェル 「まず、こちらの戦力の確認」 カイル  「ああ」 ラフェル 「長旅での疲労や、魔法の種類なども考慮に入れる必要がある。ま       た、現在僕が動けない以上、お二人に頼るしかないけど、二人一       緒に戦えるということを考慮しても、お二人だけでは勝てない……       と判断したんです」 カイル  「なるほどな」 ラフェル 「誰か一人をおとりに……とも考えたけど、すばやく回り込めるカ       イルさんをおとりにしたら、こちらの戦力がなくなってしまう       し……僕やカエデさんではいざというときに危険すぎる」 カイル  「で、逃げを選択したわけか」 ラフェル 「はい、戦闘中やその後に、別の敵が現れる可能性も残ってますし、       ここで全力を出しても得にはなりませんから……」 カイル  「良い答えだ。まあ、合格だな……」 ラフェル 「……どうも」 カイル  「ひとつ、付け加えるなら、おれたちの戦力を聞くときに、『全力       なら』ってつけるべきだったな。あれは、おれたちの方でも現在       の体調を考えた上での数字だからな」 ラフェル 「あ……」 カイル  「さらに、俺の場合ちょっと特殊でな、1対1と1対多。多対多で       戦闘方法を変えることにしてるんだ。当然、戦力も変わってくる」 ラフェル 「そうか……まだまだだな……」 カイル  「いや、こんなもんだろ。まあ、戦力の把握ってのは、もう少し一       緒に旅をしないと無理だ。本人には自覚の無い場合もあるしな」 カエデ  「カイルの魔法みたいにね〜」 ラフェル 「え? カイルさん、魔法使えたんですか?」 カイル  「俺のは魔法じゃねぇっ!」 カエデ  「触れただけで岩壊すのは、普通の人にはできないって」 カイル  「ありゃぁコツがあるんだっ!」 ラフェル 「コツ?」 カイル  「ああ。こうやって「気」をためてだな……」 カエデ  「それを魔法っていうの!」 カイル  「魔法じゃねぇっ!」  二人の言い合いは、晴れた夜空に響いているのであった。