私説、TRPG日本史の
予備知識
1、TRPGとは?
- ご存知の方も多いと思いますが、 テーブルトークロールプレイングゲーム
(TRPG)自体について、簡単にご説明します。
TRPGは、”ルールブック”と、参加者の良心を頼りに、”しゃべる”事でゲーム
を進める”ごっこ遊びの進化系”のような遊びです。
ゲームの参加者は、プレイヤーキャラクター(PC)と呼ばれる架空の人物を作製
して、その人物を会話を通して演じます。
ゲームの進行を管理する人は、一般にGM(ゲームマスター)といわれます。
ゲームは、GM一人以上、プレイヤー数名(3人から5人程度が普通です)で行なわれ
ます。
ゲームマスター 「君達は、苔に覆われた暗い岩のトンネルを歩いている。
湿った青臭い風の中に、かすかに獣の体臭が混じっているのが分かる。先は暗くて
確認出来ない。」
プレイヤー1 「辺りに、獣の痕跡が無いかを確認します。”オイ、誰かランタンを俺にくれ。”」
プレイヤー2 「”馬鹿、前衛がランタンを持ってどうするんだよ。俺に任せろ。”
えっと、盗賊のスキルで、あたりを調べます。」
ゲームマスター 「調べるってどこを?」
...
英雄、探偵、モンスター、 等 ルールブックに記載されている(以上の)バリエー
ションで、プレイヤーやGMは、色々な人々を演じ、その時に生まれる会話やドラマを
楽しむわけです。
また、「TRPGには”勝者”がいない」、という言葉がよく使われます。プレイヤーの目的は、会話とその流れで偶然に出来上がるドラマを楽しむ事です。
2、TRPGの何が楽しい?
- TRPGの楽しみ方は、人それぞれです。
キャラクターを演じるのが楽しい人、人より活躍する事が楽しい人、頭を使って
解決するのが楽しい人、など多くの人がいます。
場合によっては、キャラクターの絵を書くのが楽しいという人や、強いキャラクター
を作製して自慢する人なんてのもいます。
私自身は、”コミュニケーションが楽しい”、”奥が深くてやりつくせない所が楽しい”と思っています。
人それぞれの楽しみ方がある”奥深い”ゲームなわけです。
3、TRPGをはじめるには
- TRPGをはじめるには、ルールブックと幾つかのダイス、それから一緒に遊ぶ友人
が必要です。
TRPGを紹介した書籍を手に入れ、近場で人を集めるか、コンベンションへ足を
運んで、とにかく遊んでみましょう。
楽しめる事、保証します。
私説TRPG日本史
Before LODOS
ずいぶん前から、HOBBY JAPANの雑誌”TACTICS”でTRPGの特集が組まれたり、TRPG
自体の紹介が各所で行なわれていました。
当時は、TRPGというジャンルが確立されていたというよりも、シュミレーション
ゲームやウォーゲームといったゲームの”派生版”といったような扱いを受けていた
ような印象があります。
1980年代後半には、ゲームブック(選択子を選んで読み進むゲーム本)が
流行した経緯もあり、ブックタイプのT&T(トンネルズ アンド トロールズ)や、
AFF(アドバンストファイティング ファタジー)が世の中に知られていきました。
当時、TRPGと言えばD&D(ダンジョン アンド ドラゴンズ)というルールが主流
だったと思います。プレイヤーは、戦士、盗賊、魔術師、僧侶となり、迷宮を探索
して、経験をつみ、より強力な敵との戦い、より大きな財宝の探索が出来るように
なります。
D&Dの作製したてのキャラクターは弱過ぎるので、当時の私も、戦って成長していく
のが、楽しくて仕方ありませんでした。
After LODOS
コンピューター誌”コンプティーク”で、「黒ちゃんのTRPG千夜一夜」という
コラムや、ゲームの様子を紙面におこして連載した「ロードス島戦記」が始まり
ました。また、グループSNEの安田均を中心に、TRPGの普及運動が始まりました。
「ロードス島戦記」がおもしろかった事もあり、TRPGに興味を持つ人が増えはじ
めました。
当初はD&Dを中心に紹介されていたTRPGでしたが、純国産ゲームである”ソード
ワールド”や”ロードス島戦記コンパニオン”が、グループSNEの手で発刊されて
からは、かなりの人々に知られるようになりました。
始めは、D&Dのように特製の箱に特殊なダイスと一緒にルールが入っていて
定価5000円もしていたゲームが主流でしたが、文庫本のゲームが出はじめました。
文庫本のゲームは、家にあるサイコロ数個を使って手軽にゲームが出来るように
なっているのが普通でした。当然、ゲームの普及は進みました。
ロードス島戦記は、小説化もされ、中高生のベストセラーになるなどして、破竹の
勢いでゲームは普及していきました。
TRPGの普及期
TRPGを始めたものの、当時はTRPGに関係する用語も知られてなく、アクセサリー
(ゲームをサポートする小物)も殆んどありませんでした。そんな状況の中で、
HOBBY JAPANや、新規参入した各社から、TRPGが続々出版され始めました。
アメリカで既に発売されていた本格TRPGを中心に、各種ラインナップがそろい
始めます。
当時ゲームをしていたプレイヤーは、ないないづくしだったような気がします。
「どんなシナリオを作ればいいのか分からない。」
「どんなゲームがあるのか分からない。」
「ゲームで使う資料がない。」
「どこでゲームを買えばいいのか分からない。」
HOBBY JAPANで、TRPG専門雑誌”RPGマガジン”が発刊され、TRPGの情報が非常に
簡単に手に入るようになっていました。
角川のドラゴンマガジンでは、”ソードワールド”のサポートが続き、
コンプティークでは、相変わらず ロードス島戦記のサポート等が続きます。
ほのぼの路線の台頭
テレビゲームや、ロードス島戦記を真似て、自分達の手で、TRPGを開始した初心者
マスターとプレイヤー達ですが、必ず悩まされる問題に”暴走”がありました。
プレイヤーがはしゃぎすぎて、シナリオの展開が滅茶苦茶になり、やりたかった
シナリオがまともに出来ないという問題です。
その場では楽しいプレイヤー達ですが、毎回発展性が無いシナリオが続き、
マスターもうんざりした顔でシナリオを作ってくるのでは、ゲームどころでは
ありません。
その中で、(1)一回一回を楽しむ、(2)気楽に日常のような会話をする、
という”ほのぼの路線”の楽しみ方が世間で評価されはじめました。特に、人気が
高かったのが、雑誌ドラゴンマガジンで連載されていた”すちゃらか冒険者”が
登場するソードワールドリプレイです。
当然、ソードワールドの人気は上がって不動のものとなり、多くのプレイヤーが
文庫のルールブックを買い求めました。
また、”ブルーフォレンスト物語”のように、日本的な感性で作られたTRPGも
発売され、TRPGはアメリカの真似事ではなく、日本文化に適応した形で普及を
始めました。
ゲームになれたプレイヤー達は、ルールの弱点をついてキャラクターの強さを
競ったり、キャラクターのイメージを自慢しあったり始めました。ほほえましい
時代でした。
ドラマへの挑戦
”暴走”に悩まされ、いくつものゲームを渡り歩き、すでに思いつく やりたい事
を全て試してしまっていたマスター達の次なる目標は、ずばり
「ドラマチックなシナリオをつくる事」
でした。プレイヤーが、ゲーム中で目的を自分で設定して、シナリオに参加して
くれれば、すごいドラマや感動が得られるだろうというわけです。
また、そこそこ遊びつくした気持ちのあるプレイヤー達も、
「他の人を感動させるような演技をしよう」
等と大それた野望を持ち始めます。
良く言えば、究極を目指した時代。悪く言えば、煮詰まってしまった世代の
スタイルとも言えます。こだわりのマスターとプレイヤーが登場します。
コンベンションもこのころから一般的なものになり始めました。
また、RPGマガジンでオリジナルルールを使ったリプレイ”セブンフォートレス”が
大人気になりました。しかし、そのバランスの悪いルールは、多くのゲームマスター
には、使いこなせないものであったため、ブームには至りませんでした。
自作のゲームを作る人が増え、けしてやりこむ気がしないようなゲームも大量に
発売されます。それらの売行きはあまりかんばしく無かったようです。
この頃から、新しいTRPGを扱った雑誌が現れては消えるという現象が本格的になり
ました。一般的に、雑誌等でのサポートが十分でなく、それほどおもしろくないと
いう傾向があったように思えます。十分なサポートがある中でブームに乗った人達は、
一気にゲームから離れていってしまいました。
この頃は、まだ
「ルールがおもしろければ、ゲームがおもしろくなる」
「ルールのバリエーションだけ色々な楽しみ方がある」
という楽天的な解釈が根強かったと思います。
TRPGブーム終焉
ゲームマスターがルールをあらかた読むのは大変な作業です。それに、箱入りの
高いルールはそうそう買ってはいられません。ゲームのムックや拡張ルールを買う
よりも、自分で作った方が自由だし、気も楽だという意見があります。
ここにTRPGを商売とする難しさがあったと思います。つまり、そんなに大きな
儲けが見込める商売では無かったというわけです。
文庫本が普及したため、箱タイプのゲームを購入する人は減り、本は数万部発行
出来ないと赤字になるため、購入者が減れば発刊も減ります。
自然とルールを発売するのがきつくなっていきました。
RPGマガジンなどのTRPG関連書籍では、量産されたルールのサポートが継続的に
続かず、色々なルールが発刊中止で消えていきます。それが、TRPGが衰退していく
という決定的な印象を作りました。そして、プレイヤー離れが進みます。
ブームは終焉を迎えました。
本格思考の昔からゲームをやっている人がコンベンションで目立つようになりました。
言いかえれば、中堅のTRPGプレイヤーが大量に”ゲームを卒業”してしまったわけです。最後の超大物 AD&D(アドバンスト ダンジョンズ アンド ドラゴンズ)が翻訳された
事もあり、D&D人気が再燃したのはこのころです。
色ものTRPG登場!!
グループSNEを中心に、カードゲームの”マジックザギャザリング(MTG)”が
紹介され、TRPG各紙の書面が賑わいはじめました。
そんな頃に、登場したのが、”因縁”を使ったカルマを演じる”天羅万象”、
熱血する漫画的主人公になりきる”熱血専用!”、特殊能力を持つ番長になりきる
”番長学園”などのルールです。
これらは、シチュエーションを大きく限り、濃い演技を楽しむ”悪くいえば色物”
のゲームです。
しかし、色物の宿命通り、カウンターカルチャーの担い手にはなれません。RPG
マガジンの紙面は、ほとんどプレイ バイ メイルとトレーディグカードゲームの
記事で埋めつくされていきました。皮肉にも、TRPGを雑誌から追い出した旗主は、
グループSNEが紹介したトレーディングカードゲームだったわけです。
しかし、TRPG自体の発刊はいまだ多くあります。各社、低価格で、書店において
もらえるかもしれないブックタイプのルールに力を入れているようです。本格派の
サプリメントやルールの比率が増えている傾向があります。
企業努力ですね(笑)。
TRPGを楽しむ 根本的な解決策は、ルールではなくて、
「おもしろいゲームマスター、おもしろいシナリオ、柔軟で常識的なプレイヤー」
であるというのが私の意見です。
TRPG自体は、単純でありながら、やってやりつくせない奥の深さをもつ おもしろい
ゲームだと思います。TRPGのおもしろさは、不変的なものです。
草の根活動、ネットワーク活動の活発化
TRPGの商業的価値が下がるにつれて、草の根での活動が増えてきました。
コンベンションの開催やホームページのサポートも本格化して、すばらしい個性を
発揮しているサイトが登場しています。
発行部数を押えたマイナー誌としてのTRPG誌 GAMESフィールドが発刊され、ゲーム
サークルも本格的な活動をする所が目立ち始めました。
サークルには、特色のあるところも多く、商業的には、大きくは成功はしなかった
サイバーパンク系のルール(東京NOVA、SHADOW RUN)や、SF系ルール(トラベラー)、
アメコミ調のルール(アースドーン)、GURPS各シリーズ、等を楽しくやりこなして
いるサークルや、自作のルールを公開しているサークルがあります。
”サポートが無くても、おもしろく遊べんぞ!”という迫力が感じられます。
考えてみれば、ホビーショップでTRPGは十分手に入るわけですから、色々な
ゲームが既に発刊されている今なら、昔と遜色無くTRPGを遊べるはずです。
ホビーショップが少ない地域に住んでいる方は大変だと思います。けれど、
それに気づいている有志も多いので、長い目で見ての状況の改善が期待できます。
ネット上での有力サークルは、TRPGネット等の
チャットサーバを借りて、TRPGを遊んでいるところが増えています。この流れは、
一時的なものではない予感がします。場所の都合をつけなくていい、文章のみでプレイ
するなどの独自性が光ます。
商売としてのTRPGが廃れ、ホビーとしてのTRPGは、今だ進化しつづけているという
事でしょうか?
その証言者は、マイナー文化に溢れたこのインターネットで、TRPGサイトにたどり
ついたあなた自身です。
「おもしろいゲームマスター、おもしろいシナリオ、柔軟で常識的なプレイヤー」
を目指すため、そして出合うため、STFは地道な活動を続けています。
TRPGに興味がある方は、是非一度御連絡下さい。新しい出合いをいつでもお待ちして
おります。