第9回 『値の決め方』
今回は少し確率のお勉強から。さっそく問題です。
「あなたは今、カジノでルーレットをしています。今まで3回続けて黒が来ています。4回目の今回、あなたは赤か黒かどちらに賭けますか?」
テレビで島田紳助さんが言ってました。
「4回連続で来る確率は数%や。だから3回来るまでずーっと待っといて、4回目に反対に張るンや。絶対負けへんで」
実際紳助さんは5回やって4回当たったそうです。で、みんなすごいなあ、って話をしていたんですが、みなさんこの話の矛盾が分かりますか?
結論としては、
「1回だけ勝負する時、赤黒の確率はいつも五分五分。つまり50%」
です。紳助さんの言っていたのは「4回連続で賭けて当たる確率」なんです。これは正確には1/2の4乗、つまり1/16です。6%強ですね。ややこしいですが。5回やって4回当たったというのも、もう一回負けていたら3勝2敗でほぼ五分ですし、ちょっとついていただけなんですね。軽い計算のトリックでした。実際カジノなんかでは出る目をある程度コントロールする技術を持ったディーラーもいるでしょうし、そういう意味ではあまり正確ではないですが、確率論的にはそういうことです。
さて、何がいいたいかというと、ゲームマスターをするときの数値の決定方法です。僕なんかはこれに一番困ります。あまり低い数値だと戦闘なんかもおもしろくないですし、逆だとこれはすぐに全滅したりシナリオが進まなかったりと悲惨な結果になります。こういうときに便利なのが「期待値」という考え方。確か高校1年の数学です。期待値とは、「ある級数に、その確率を掛けたもの」
です。それを行ったときに起こる、目安の値とでも言いましょうか。よくみなさんが知っているところでいうと、さいころ1個の期待値は3.5です。これは、さいころ1個を何回も振ったときに大体いくらの目が出るか、というものですが、これは
(さいころの目)×(目の出る確率)
を計算したものです。さいころの目の出る確率は1/6ですし、さいころは1〜6まで目がありますから、それぞれの場合を足し算して、
1×1/6+2×1/6+…+6×1/6=3.5
となるわけです。つまりさいころ1個を振る判定のばあい、目安の値を3.5と考えればよい、となります。これを利用して、数値を計算します。
具体的な例で考えるために、さいころ2個を使った判定を考えましょう。こちらが設定した難易度の数値以上を出せば成功、とします。さいころ2個の期待値は、1個で3.5なので2個の場合は足し算して7です。何の修正もない場合、難易度が7なら五分の確率ということになります。何らかの修正が加わるならば、その値を上乗せして考えます。例えば平均的な能力を持つものの場合で+2の修正がある場合は、難易度を9にすると五分の成功率の物事が表現できます。もっと簡単なことなら難易度を6や7にすればいいわけですし、難しいことや、熟練者でないとできないことは難易度を上げればいいわけです。 この考え方で数値は決められると思います。10面体のさいころ二つで確率を表すときはもっと分かりやすいですね。そのまま「○○%」と考えたらいいんですから。後もう一つの問題は、その行為が一体どれくらいの確率で成功するか、ではないでしょうか。日常的なものはともかくとして、例えば盗賊が宝箱の鍵を開けるなど、非日常のものは困ってしまいます。
僕はどうするかというと、実は適当です。なんなら判定の数値を決めず、その場の雰囲気でやってしまいます。罠がはずせた方がいいときははずせたことにし、引っかかってもらった方がいいときはわざと引っかかってもらいます。その方がゲームとしておもしろくなるからです。やはりこれはみんなで楽しむ「ゲーム」なのですから。
とはいえ、きちんとしたい人のためには、ある程度の基準を設けた方がいいでしょう。判断基準になるのは、
「その判定を何回するか」
だと思います。頻繁に判定するものはやや難易度を低めに、滅多にしないものは高めに、というのが基本だと思います。例えば、普通に剣で攻撃するときの命中判定はやや楽にするという具合に。
剣の攻撃という話で言うと、判定方法にもよりますが、命中判定の後防御判定をする場合(攻撃側が命中させても、防御側が防ぐ可能性がある場合)、命中率は低くても60%くらいあった方が良いと思います。とにかく攻撃があたらないのでおもしろくない、という経験はみなさんもされたと思います。鍵開け判定なんかも盗賊がする場合はかなり高くしてあげた方が、ゲームがスムーズに進んで良いと思います。他、個々の例を挙げたらきりがないですが、僕の判断基準は、
「ゲームがスムーズに進行するか」
です。
登場するモンスターの生命点について、最後に考えましょう。ここでは
「何回の攻撃で戦闘不能になるか」
が問題です。例えば下っ端のゴブリンの場合、まあ二太刀も浴びせればいいでしょう。その二太刀の基準も難しいですが、今回は攻撃力D6+2(6面体さいころ1個の目+2)のブロードソードを考えましょう。さいころ1個の期待値は3.5でしたから、ブロードソードの攻撃力の期待値は、
3.5+2=5.5
です。これが2回ですから、2倍して11点を生命力にしたらよい、ということになります。ボスキャラなら攻撃回数を増やしたりすればよいのです。また、命中率も考慮すると、大体何ターンで戦闘を終わらせるかも分かります。
先ほどのゴブリンにご登場願って、実例を考えましょう。ゴブリンは2匹。ともに生命点11点です。対する冒険者は先ほどのD6+2のブロードソードを持った命中率70%の騎士とD6+4のバトルアックスを持った命中率40%の戦士。それぞれ1対1で戦うとします。また、ややこしくなるのでゴブリンの回避、冒険者の生命力、他の手助け、クリティカルヒット(大成功)やファンブル(大失敗)は一切無視します。
ブロードソードの騎士は70%で攻撃が命中します。10回に7回攻撃があたるわけですが、今回は確率の考え方で、1回あたりの期待値を使います。すると命中確率が70%、与えるダメージの期待値が5.5です。はずれたときはもちろんダメージは0なので、期待値は
5.5×(70%)+0×(30%)=3.85
となります。つまり、当たる当たらないを考えるとややこしいので、1回あたり3.85点のダメージを与えると考えてよい、ということです。
一方の戦士はどうでしょうか。こちらも同じように考えます。即ち、命中率40%、ダメージの期待値は、(3.5+4=)7.5なので、
7.5×(40%)+0×(60%)=3
となり、1ターンあたり3点のダメージを与えます。この二人が一体いつゴブリンを倒すかというと、騎士は1ターンあたり3.85点ですから
11÷3.85≒2.85(ターン)
つまり3ターン目で倒すことになります。一方の戦士は1ターンあたり3点なので4ターンかかります。従って、戦闘が終わるのは4ターン目になります。
この様にすれば、大体の戦闘の時間をはかることもできますし、逆に戦闘の時間をコントロールすることもできるわけです。もちろん、冒険者の能力はこちらで勝手に仮定したものですし、さいころの目も実際はランダムですから同じ結果にならないかも知れませんが、大体の目安としては結構使えると思います。
というわけで、今回は各種の値の決定方法でした。しかしこの方法の問題点は、計算が多いことと、考えるのが面倒なことでしょうか。理系の方で、計算大好きな方は、ぜひ一度おためし下さい。と言う僕は理系なのですが、計算嫌いなので遠慮しておきます。ではまた、次回です。