第7回「『まわる』ってなに?」



8月は高校野球の季節。一球に全てを掛ける高校球児の活躍ぶりというのは、普段は理論派で鳴らすクールな人でも思わず拳に力がこもったり、熱いものがこみ上げたりするものです。思わず自分の高校時代を思い起こす人も多いのではないでしょうか。

TRPGをするときは、しばしば略語が使われます。この「TRPG」という言葉からしてすでに略語です。きちんとするならば「テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム」となるのでしょうか。このように、文字で書いたり話したりするとあまりに長くなってしまう言葉には、略語が使われます。音楽を聴くときにいちいち「そのコンパクトディスク、きかせてよ」と言わないのと同じです。みんながみんな、「CD」と言えば「コンパクトディスク」の事だと分かるので、もう「CD」で行くわけですね。TRPGの世界にもこんな言葉は多いです。ホブゴブリンのことを「ホブゴブ」と言ってみたり、「バスタードソード」のことを「バッソ」と言ってみたり。

略語を使う効果としては、いちいち長い言い回しを避ける、というものがあります。特にこれは会話のテンポアップをしたいときなどに有効です。スピードをつけていきたいときにいちいち
「バスタードソードでホブゴブリンBに対して全力攻撃をします」
とか言っていられないでしょう。そういうときには
「バッソでホブゴブBに全力で」
くらいで十分意味は伝わります。戦闘シーンは緊迫していることが多いので、スピードアップすることでスリルが生まれます。略語は使い方次第で非常に有効な表現方法になるわけです。

同じ様なものに「慣用表現」というものがあります。本来の意味とは異なるものの、慣用的にその意味を表す言い方です。たとえば
「まわる」
という言い方。どうやらクリティカルヒット(致命的打撃)をした時の言い方であるようです。もう一回ダイスを振ってダメージを合計するようなところから来ているのでしょうか。仲間内でだけ通用することばなど、使って通じたときの反応もおもしろいので思わず使ってしまう方も多いでしょう。

この言い方、僕は実はあまり好きではありません。別に言語学者でもなければ国語の先生でもないんですが、その理由は一つ、
「初心者にわかりにくい」
ということです。ゲーム中、ただでさえ聴いたことのない単語に四苦八苦している初心者が、戦闘に突入して自分の番で「戦闘の仕方フローチャート」を見ながらさいころを振って、マスターや隣のプレイヤーに、
「どう、まわった?」
と聞かれなんの事やら分からずポカンとしてしまった人を何人も見たことがあります。そういうとき決まってマスターたちはそのさいころを見て、
「ああ、まわってるわ。もう一回振って」
とか
「まわってないな、それではダメージは通らない。じゃ次」
とか言って、次へ進めてしまいます。しかし残された初心者にしてみれば
「おいおい、まわるって何? 次へいっちゃったよ。何なんだ? まわるって」
と頭の中には「まわる」がまさにまわっている状態・・・、そんな洒落を言っている場合ではないくらい、混乱してしまうでしょう。そうするともうあとはマスターの言いなりに自分の番でさいころを振り、結果を聞くだけとなってしまいます。

かなり極端な例かも知れませんが、実際にこういうことがあるのもまた事実です。そういった中、僕の提案ですが、
「慣用表現はできるだけ避ける」
「一般的でない語には注釈をつける」
この二つをしてみてはいかがでしょうか。特にゲーム初心者を迎えた場合などは。

実際問題として、僕がゲームマスターをする際にはできるだけ表現を平易にして、専門的な用語は一般的なものに置き換えるようにしています。僕自身よく知らないということもありますが、わかりにくくなって参加できなくなる人が出てくるのを防ぐためです。そのためゲームに詳しい方、ベテランの方には物足りないところもあるかも知れませんが、初心者の方やまだFINに来て間もない方のためには必要なことだと思います。しかしFINの中を見ても、専門的というか慣用表現というか、僕の勉強不足かも知れませんが失礼ながら、
「この人は何を言っているんだ?」
と首をひねってしまうような方がいるのも事実です。しかも早口でまくしたてられたりすると、もうお手上げ状態です。もう少しゆっくり、わかりやすくしゃべってくれたらなあ、と思うときがあります。

方言というのはそもそも外敵が侵入した際に分かるように使われだした、という話を聞いたことがあります。すなわち自分たちと違う言葉をしゃべる者=侵入者というわけですね。しかしTRPGに関してはそんなことはないはずで、同じ卓を囲む者同士がみな同じ言葉で話せないとダメだと思います。同じパーティーを組む仲間、同じゲームを楽しむ仲間なのですから。言葉の使い方、できるだけ多くの人に伝わるように少し考えてみた方がいいのではないでしょうか?