こんにちは、Yoshです。6月にもなると、なかなかどうして暑くなってきました。これから梅雨ですが、また蒸し暑くなりそうです。
実は、僕の知人の紹介でオーケストラにエキストラで参加することになり、演奏会の練習に先日行って来ました。オーケストラというと、バイオリンとかチェロとかトランペットとかオーボエとかが一緒になってクラシックなどを演奏するのですが、高校時代の部活の関係で今回参加することになりました。たくさんの種類の楽器が一堂に会するとそれだけでもなかなかのもので、さらにそれが同時に音を出したりするとそれはもう迫力があります。しかしオーケストラでみんな同時に音を出すというのは結構少なくて、実際はそれぞれの役割を果たしていることになります。バイオリンは全体のメロディーを、トランペットは華々しいファンファーレ、コントラバスなどは低音域を担当するわけです。このような役割分担がきちっとなされてはじめて音楽ができるわけです。同時に、音の大きさというのも重要です。いつも大きな音で演奏したらいいというものではなく、イメージに合わせて適当な音量で演奏しないといけません。さらには大きな音、となるとやはりバイオリンよりはトランペットの方が効果的、ということになって、「役割」というものを改めて考えさせられました。
さて、今回は別に音楽の話をしようというのではありませんが、このようなことが、実はGMの際にも役立つのでは、という話です。先ほどのような楽器ごとの役割分担や音量の調節のことをひろく、「オーケストレーション」といいます。GMをする際に考えないといけない「オーケストレーション」とは一体なんでしょう。
TRPGのシナリオを一曲の音楽だとします。すると、音楽の流れというのがシナリオの筋ということになってくると思います。それを演奏する各演奏家はプレイヤーでしょう。楽器がキャラクターということにもなるでしょう。となると、もちろんGMは指揮者です。音楽全体の流れを把握し、コントロールし、的確な指示を与えなければならない、大切な役割です。リズムを取るだけならメトロノームで十分ですが、強弱や感情に関する指示もしないといけないので、やはり指揮者は欠かせません。オーケストレーションはすなわち指揮者が考えることですから、実際に指揮者がすることを見ていきましょう。
指揮者は、演奏者にテンポ(音楽のはやさ)を指示します。これはTRPGならさしずめシナリオの進行速度でしょう。街から街への単なる移動で重要でなければ
「さて、3日ほど行くと目的の街へ着いた」
とシナリオを進めてしまえますし、
「さあ、犯人が逃げる。目の前には女性が倒れている。どうする? 10秒で決めて!」
と、時間を区切ることで判断を速くさせることもできます。逆に
「隣町へ行きますが、隊列を決めてね。3日かかるけど、毎日遭遇チェックをするよ」
「みなさんの前にはこんな事の書かれた石盤がある。どうやら謎かけのようだ。まあゆっくり考えてよ」
と、時間の流れをゆっくりにする事もできます。GMはシナリオの流れをコントロールできるわけです。こだわって欲しいところではせかさずに、なんにもなければこだわるプレイヤーを制止して先へ進んでみてはどうでしょうか。
指揮者は、演奏者に感情を指示できます。「もっと重々しく」とか「もっと悲しげに」とかいう感じにです。TRPGなら少し難しいですが、NPCへの意識でしょう。あくどい商人を描写すると、たいていのPCは商人に不快感を示すでしょうし、善良で正直な人を描写すれば、おおむね好意的でしょう。シナリオを進めるに当たって重要な人物の場合、例えばその人を犯人扱いして欲しいのであれば、かなり極端に悪人っぽく(?)描写するといいでしょう。音楽の場合でも、かなり極端な表現をすることがあります。逆に真犯人の場合、あえて極端な描写を避けることで後々「え、あいつが犯人か!」というどんでん返しを用意することができます。2時間ドラマの刑事物でよくあるパターンですね。
音楽の中では「ソロパート」というのもあります。自分だけがメロディーを担当する、というやつです。指揮者はよく、ソロパートのところでその演奏者に対して注意を向け、アイコンタクトで指揮を進めていくことがあります。「おまえがソロなんだよ」と演奏者に意識づけをしているのでしょう。GMをするときなら、この人に活躍して欲しい、というPCに話を振っていく、という感じでしょう。
「みんなが酒場で談笑していると・・・、盗賊の君はなにやら鋭い視線を感じる。他のメンバーは気づいていないね。どうする?」
などと振ると、その場は盗賊の独り舞台となるでしょう。魔法の使えない状態で戦闘があれば、戦士の大立ち回りが期待できます。このようにスポットを当てたい人には、それなりの舞台を用意してやることが大切です。例えば宝箱をどうしても盗賊にあけて欲しいなら、魔法を使えない状態にしておくべきです。そうでないと魔法使いが「アンロック」などで安全にあけてしまいます。
今までの話で共通しているのは
「表現はかなり極端にした方がいい」
ということです。GMとしての自分の考えと、プレイヤーの考えとが完全に一致することはまずありません。GMは、自分の方向性をシナリオの中で表現するしかなく、さらにそれは他人に理解してもらえないといけません。そのためにはあまり淡泊な表現ではいけない、ということになります。極端な、いわゆる「お約束」を用意することで、プレイヤーもパターンをつかんでくれます。そうしたら、あとはGMの思うがままにシナリオを指揮していけるでしょう。
ただし、これには少し問題があります。表現があまりに極端すぎると露骨でおもしろくありませんし、逆に全く理解してくれないときにはとんでもない方向に話が展開してしまいます。こういうときにはどうしたらいいのでしょうか。僕なら「NPC」をうまく使います。
NPCは今回のたとえで言えば、指揮者の思うままに完全に動いてくれる演奏者ということになります。この人たちをうまく活用することで、表現を極端にすることなくPCたちを思うように導いていくことができます。
NPCはなんといってもPCたちと会話することができます。PCが違う方向に進みそうなときには適当な助言を与えることができますし、謎解きにあまりに時間がかかるようなときにはヒントを与えることもできます。もっとこだわって欲しいところを素通りしそうなら、NPCにこだわらせればよいのです。時間のコントロールはこれでできます。
感情のコントロールに関しては「誰々が怪しいらしい」という言い方で情報を出せますし、逆に「誰々はいい人。悪いことなんかしそうにない」と言わせることで真相を煙に巻く事もできます。
ただしNPCは核心に触れない。核心に触れ、ソロを演奏するのはあえてPCたちです。NPCはあえてエキストラ。これを忘れてはいけません。NPCの役割は「脇役・伴奏」で、PCは「主役・メロディー・ソロ」なのです。
演奏者に関してはこのようにすればOKでしょう。問題は曲目。音楽の場合は作曲者と指揮者は別々のことが多いですが、TRPGではいわゆる「自作自演」がおおいです。この分については指揮者よりも負担が多いと言えますね。しかしシナリオを作る際にこのような仕組みというか役割が分かっていたら、シナリオを作るのもだいぶ楽になるのではないでしょうか。すなわち、
「無駄なところまで作らない」
ということです。
GMは時間をコントロールできました。すなわち、自分が用意していないところはカットしても良いのです。もちろんきちっと用意したりアドリブで演じてみたりするのも結構ですが、無理に用意しなくてもいいじゃないか、ということです。どうせ自分で調節できるんだから。
「思った通りにPCが動いてくれなかったら困る」
というのでやたらと伏線を張ったりするGMの方もいますが、これも先に述べた方法でクリアーできると思います。そうすると無駄に伏線を張る必要がなく、その分の労力をよそに回せます。いいシナリオができるのではないでしょうか。
いい曲、すなわちシナリオ、ができたらプレイヤーを前に指揮をしてみることです。そこででたまずい点を修正したら、よりよいものになると思います。さらにその曲は一度指揮したものなので次はさらになめらかな指揮ができるでしょう。
音楽もTRPGも実はよく似たもので、その場のメンバーの呼吸が合わないといいものができません。もちろんプレイヤー間でもあわせないといけませんが、それらをまとめ上げるのが指揮者でありGMです。難しいのですが、うまくいったときの満足感はプレイヤーの比ではありません。演奏するのも楽しいですが、実は指揮をするのも非常に楽しいもの。みなさんも、指揮台に上がってみませんか? GMがそんなに難しくないということも、実はおもしろいものだということもわかってもらえると思います。ではまた次回です。