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日本における歴史人口学の祖である著者による、歴史人口学とのなれそめをまじえた、歴史人口学の方法論・成果についての入門書です。
歴史人口学では、遺存する(ヨーロッパでは)教区簿冊や(日本では)宗門改帳などの、住人の家族構成や冠婚葬祭を記録した史料を用います。それにより人口の推移や家族構成の変化、年齢分布の変化などから、当時の民衆のありさまを浮き彫りにしようというわけです。
そんな研究からは、いろいろと興味深い結果が出ています。江戸時代には人口が変らなかったという全人口統計だけからの解釈の過ち、労働集約性が強まるにつれ大家族主義から核家族へと変化した農村、「江戸っ子は三代も持たない」という都市の死亡率の高さと流入人口の重要性、畜力利用が減少した最大の理由としての開墾の完了、小作農は流出し絶家し地主は分家を増やしトータルでは安定する、平均初婚年齢の意外な高さ、離婚の多さなどなど。農村の生きた姿が見えてきます。