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古代エジプトから書き起こし、北方船や南方船から戦列艦、そして20世紀にいたるまでのヨーロッパの帆船の構造の発達史を、貴重な古い絵画資料や写真を駆使し、一時資料を熟知した人間が紹介する本です。
私の所有しているのは1999年07月の初版ですが、改訂3版が出るくらいに売れたんですね。出版社の成山堂書店は、ほかにも数多くの海事関連の書籍を出しているようです。
帆船についての用語がビシバシ出てきますし、用語がわからないと読みこなすのが大変かも知れません。船の構造について詳しくない場合には巻末についている訳者による用語解説を引きながら、あるいは典型的な帆船についての解説本を別に読んだあとに読む と良いでしょう。
原著の著者は欧州海事史協会の会長を30年勤めた、専門家中の専門家です。1926年に初版が書かれ、1963年に当時までの発見をもとに必要な部分だけ改定されているようです。なにせ帆船が漁船などで現役だった時代に書かれたたいへん古い本ですが、いまも帆船通史の定番書のようですね。
最後に「人類が歩行を全く諦めることが考えられぬように、帆の使用が全く無くなるとは考えられない」と書いてあるくらいに古い本です。逆にいえばわずか百年前には帆船は現役であり、消えるとは思えない人が居るほどに一般的だったわけです。……まあ確かに、いまでも実用帆船が完全に消え去ったわけではありませんけどね。帆船が消えつつあるもあたりまえだった時代の人の本だと思うと、色々と感慨深いものがあります。
西洋の帆船について知りたい人には、二冊目の本としてたいへんおすすめです。