読書案内:火星の人類学者
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脳のわずかな障害と思われることが原因となり、大きく特殊化した行動や感覚に適応していくプロセスについて、事例を追う本です。
- 後天的に大脳性の色盲になった画家
- 記憶が脳腫瘍で脳が圧迫され1960年代の記憶までしかなく新たな記憶がほとんど定着しない青年
- チックや強迫衝動と共存しているトゥレット症候群の外科医
- 白内障を手術し見ることを学習していった元盲人
- 写真的記憶力を持つイディオ・サヴァンの少年画家
- 故郷の詳細なイメージがわき上がる衝動を絵に描きつけ続けている画家
- アスペルガー症候群の自閉症から成人し技術者となった女性
の七人の話が中心となっています。
脳の変化により再統合された新しい自我、新しい自分。その存在を異常ではなくある意味で「当然のもの」とし把握できるようになると、人間の可塑性や可能性について理解し、より広い視野で人間を見ることができると思います。
なお題名は自閉症(アスペルガー症候群)から科学者・工学者への道を歩んだ女性の言葉から取られています。自分が火星人の人類学者のように、人間の行動を分析し理解することで社会での活動を予測でき上手くいくようにしたのだ、ということです。我々、感覚だけに頼ってますが、それだけの努力を払って他人を理解しようとできているのか、誤解でなく理解しているのか、などと感じました。
- 書誌情報
- ハヤカワ文庫NF『火星の人類学者』著:オリヴァー・サックス/訳:吉田利子 文庫判409ページ ISBN:4-15-050251-X 発行年月:2001.4 本体価格: \800
- 語り部日報掲載日
- 2001/08/10
- 文責
- sfこと古谷俊一
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