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今となってはあたりまえの食材である砂糖。その砂糖が大量生産されるようになった理由と社会的・歴史的なプロセスを、豊富なエピソードをもとに紹介する楽しい一冊です。
砂糖がいかにしてヨーロッパに入り、大量生産して世界中に売れる「世界商品」としてプランテーションで生産されるようになったのか。普及の課程で、他の世界商品である茶やコーヒー、チョコレートといかに出会い、それぞれどの国でどう普及したのか。そして、各国の現在の文化に、どのように砂糖が影響し、どのように作り上げたのかを解説しています。
薬としての砂糖、金持ちの証明としての砂糖。奴隷制度が支えたプランテーションと砂糖がもたらした荒野。砂糖を利用する茶やコーヒーやチョコレート飲料を提供するコーヒーハウス(喫茶店)から新聞や株式市場などの現代文化が産まれ、産業革命とともに労働者の過酷な労働の友として砂糖を使用した食事が普及するプロセス。奴隷制度の廃止の原動力となった、砂糖の保護政策打倒の経済的欲求からの政治活動。などなと、興味深い話がいっぱいです。
砂糖は身近な品であり、かつ世界史に大きな影響を与えただけに、歴史を把握するうえでたいへん面白く身につきやすい視点だと思います。
ジュニア新書だけあり、説明は丁寧で、基本的なことについても普通の言葉でわかるように解説されています。意外なとこまで解説があり、そうか普通はこのあたりは知らないのだなと再認識できるのも面白いところです。世界史は苦手だった、という人にもおすすめです。