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日記資料などをもとに、幕末の(主に有名ではない)人物を紹介したものです。もともとは「太陽]誌に連載されたものだそうです。
連載のなりゆきの都合もありましてか、最初のうちはいろいろな人の記録をネタにしていました。しかし三回目からはずっと、川路左衛門尉聖謨(かわじ・さえもんのじょう・としあきら)の日記を元に、川路家の周辺の人々の話題になっています。
たぶんあまり知らないひとが多いと思いますが。川路聖謨は、御家人の養子から成り上がり、勘定吟味役、佐渡奉行・奈良奉行・大阪町奉行を経て勘定奉行兼海防掛まで出世した幕末の大人物です。ロシアのプチャーチンと日露和親条約を結んだのもこの人。
彼は詳細な日記を綴りつづけた人でもありまして、日常の細かな出来事や聞き知ったことなどを記録していたのだそうです。その日記をもとに、ごく普通の村人や部下など、歴史に名の残りにくいような普通の人たちの生活ぶりや、高官の家庭生活などを、この本では紹介してあります。
江戸奇人伝という初期の連載タイトルに引きずられた面もありますが、全体として人間味の溢れる生活ぶりを堪能できます。当時の奈良のありさまを江戸と比較した章もありまして、そのあたりも珍しい内容だと思います。