TRPG.NET > 書籍情報 > 読書案内 > 2001年 > 05月 >
歴史的な古典ゲームを、貴重な遺物・伝来品の豊富なカラー・モノクロ写真で紹介した本です。人生ゲームや野球盤まであたりのゲームの通史を、簡単に紹介もしています。図版が多くページ数の少ない割には読み応えがありますね。
INAXは、トイレやタイルなどの陶製品で有名な大会社。この本は、その会社の文化支援事業的な狙いで運営していると思われる、 INAX GALLERY の名古屋支部(というのかな)が企画した書籍です。INAXの出版部門では、他にも美術や住環境関連の興味深い本を、色々と出しているようです。奥付には掲載されている写真の対象となった古ゲームの収集をしている個人や企業の名前が並んでいまして。ああ、ゲームを文化として持ち上げる動きがあるんだなあと感心します。
ゲームについての哲学的論考や芸術論などを引いた冒頭の話は、TRPGの視点からはいろいろな意味で面白いものがあります。 "通常のゲームのような終局は存在しない。 一つの[手]が次なる[手]を呼び、不断に[どのように判断すべきか]という問いを発しつつ、ゲームは続行されねばならない"という「不可能なゲーム」はTRPGに極めて近い気がしますね。
また、ゲームの分類も面白いですね。 競争ゲーム(先にゴールにたどりついたものが勝ち/すごろく他)、戦争ゲーム(飛び越してとりあい/チェッカー他)、配列ゲーム(直線に並べる/連珠他)、包囲ゲーム(はさめば勝ち/囲碁他)、マンカラ系統(取り合った駒の数を競う/数合わせ他)。 歴史的なゲームの網羅的な知見はなかったのですが、こうしてみると現代のボードゲームも、数千年も前から存在するパターンの組みなおしである部分が多いのがわかります。
初期のサイコロが四角柱とかだったりしたのも興味深いところです。四面ダイスはこのほうが良いような気もします。
全体として、TRPGに直接関係はしませんが。ゲームそのものの全体的な概念や発達史・デザインの基本をつかんだり、昔からゲーム盤などが美術的な要素をもち、どのように作られていたのかを理解するのに役に立ちますね。