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主に江戸自体の古文書の記述と昔の記述の思い出をもとに、江戸時代の奇術についてトリックを中心に解説した本です。図版も豊富で、ひとつひとつの解説は短めですがわかりやすくなっています。
著者の泡坂妻夫は、家業は紋章上絵師。奇術をからめた話も多いミステリ小説家で泉鏡花賞や直木賞など受賞多数。創作奇術家としても有名で、優れたオリジナル奇術に贈られる石田天海賞の第二回を受賞しており、奇術についての著作も多くあります。
出てくる道具類の素材などは戦後あたりまで利用されていたものですが、現代の人間はあまり知らないものが多いですね。ここ数十年で身の回りの品が様変りしたことを痛感します。
松明は屋内では火力が強すぎて危険という記述が、そういやそうだな盲点をつかれた気分。木造家屋に松明もって侵入すると火事になるリスクが高いが、というのはシチェーションとして面白いですね。
呪術と奇術と信仰がすべてがマジックであった戦国時代以前、料理と奇術の類似性、見立ての美学なども、興味深い一冊です。