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中国奥地にて現在も利用されている、漢字でない象形文字の紹介本。本文は日本語と英語で対訳風に併記されています。
トンパ文字とは中華人民共和国の雲南省の、ナシ族と呼ばれる少数民族が使用している、絵画的要素をとどめた象形文字です。もともとトンパと呼ばれる宗教者が経典を記録するために用いた文字だったそうです。もともと漢字などの世界の諸文字も、宗教者が独占する神秘の道具である時代が長かったわけですけど(ヨーロッパの紙が普及するまでもそうでしたし、太平洋やマヤなどでも同様でした)、比較的近年まで宗教者が利用していていまも残るというのは、けっこう珍しいのかも知れません。
ほぼ半分はカラーベージで、トンパ文字の伝説や占いにおける用例や、ナシ族の生活についてなど、簡単にまとめられています。ほぼ紙面の半分が写真であり、かわいらしい色つき象形文字が、なかなか楽しげです。
もう半分はモノクロで、トンパ文字の対訳辞書になっています。これがあればトンパ文字で文章が書ける……かも知れません。
この本をみていると、まだまだ世界には知らない文化があるのだなという感慨とともに、あまり記号化のすすんでいない古い形態の象形文字の面白さなどが伝わってきて、なんとなく幸せな気分になります。
架空世界の架空文字を考える人は、これもひとつ読んでおくといいかと思います。