読書案内:犯罪専科

戦後から高度成長期にかけての、いくつかの興味深い世相を示す犯罪についてのドキュメント。主に「問題小説」誌に掲載された内容らしい。

基本的に、どれも世相を示しているとはいえ、本質的には現在の日本と変わらないのだな、という印象を強く受けました。むろん、社会の状況や貧困の問題などは、現在よりもずっと厳しかったわけですが。未成年はつるんだり犯罪を侵したり薬で遊んだり、変な格好で町中をうろついたり、楽しむために売春したりしてますし。

そのなかでも、TRPG的に一番興味深かったのは、泥棒株式会社の話でした。ペンキ塗装の会社としてビルを借りて。ちゃんと定時出社、午前中は訓練、午後は調査と実行、なにがあってもちゃんと五時に定時で切り上げる。

駆け足、幅跳び、匍匐前進、撃剣の訓練だそうで、やることは特殊部隊か、救難部隊か、といった感じですね。匍匐前進で縁の下にもぐりこみ、家人の会話を聞いて、家庭の事情や生活パターンを調査。幅跳びの成果で、土手から三メートル離れたベランダに侵入も楽々。慎重に調査と準備を重ねて、実行は迅速に。という感じで。なんとなくTRPGのシナリオの遂行みたいな感じ。

さらに。この会社には口伝の社員規則なるものがありまして。

とまあ。盗賊ギルドの掟に流用が利きそうですよね。

世の中色々あるものだなあ、と感心しました。

書誌情報
河出文庫『犯罪専科』小沢信男 ISBN4-309-40119-9 本体価格460円 昭和60年04月発行
語り部日報掲載日
2000/05/28
文責
sfこと古谷俊一
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