TRPG.NET > 書籍情報 > 読書案内 > 2000年 > 05月 >
戦後から高度成長期にかけての、いくつかの興味深い世相を示す犯罪についてのドキュメント。主に「問題小説」誌に掲載された内容らしい。
基本的に、どれも世相を示しているとはいえ、本質的には現在の日本と変わらないのだな、という印象を強く受けました。むろん、社会の状況や貧困の問題などは、現在よりもずっと厳しかったわけですが。未成年はつるんだり犯罪を侵したり薬で遊んだり、変な格好で町中をうろついたり、楽しむために売春したりしてますし。
そのなかでも、TRPG的に一番興味深かったのは、泥棒株式会社の話でした。ペンキ塗装の会社としてビルを借りて。ちゃんと定時出社、午前中は訓練、午後は調査と実行、なにがあってもちゃんと五時に定時で切り上げる。
駆け足、幅跳び、匍匐前進、撃剣の訓練だそうで、やることは特殊部隊か、救難部隊か、といった感じですね。匍匐前進で縁の下にもぐりこみ、家人の会話を聞いて、家庭の事情や生活パターンを調査。幅跳びの成果で、土手から三メートル離れたベランダに侵入も楽々。慎重に調査と準備を重ねて、実行は迅速に。という感じで。なんとなくTRPGのシナリオの遂行みたいな感じ。
さらに。この会社には口伝の社員規則なるものがありまして。
とまあ。盗賊ギルドの掟に流用が利きそうですよね。
世の中色々あるものだなあ、と感心しました。