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13世紀から16世紀のヨーロッパ都市において、都市社会が産み出した暴力のありかたの変遷を、おもにイタリアの史料を元にして論じたものです。
この本で見るかぎり、中世ヨーロッパらしい社会像を記述するなら、サイバーパンクもの的にやるほうが良いのかもしれませんね。まあ、サイバーパンク自体が過去と現在の都市社会の暗部を近未来技術で料理したようなものではあるから、当然かも知れないけど。
出身地・血縁・宗教・職業・保護者としての有力者の違いにより細分化された都市社会は、まあ現代でもよくある状態と似ていますか。所属する組織の利益と組織での立場の維持のために暴力は行使されたのである、という視点で書かれています。それにたいして公的権力による秩序維持のための暴力がどのように構築され、どのように機能し、あるいは機能しなかったのかなども書かれており、この本で扱われている時代においては、公的束縛は公正なものとしては機能していないことがわかります。
しかし、若者に顕著とされている、構成員自身の名誉の確保のために暴力を振るわなければ軽蔑される、自分が正当に評価されていないという怒りを暴力としてぶつけるというあたり、現代の暴走族などの若者集団と大差ありませんね。結婚資金問題に伴う晩婚化なんかは、現代日本と大差ないなぁ。
あとは清教徒主義の浸透までは宗教関係者も含めて暴力的傾向は大差がないこと、社会における金銭的・権力的影響力の違いによる犯罪処罰の明確な違いなどは、社会の様相を考えるうえで色々と興味深いものがあります。