TRPG.NET > 書籍情報 > 読書案内 > 1998年 > 03月 >
まず最初に。この小説は、アメリカ探偵作家クラブ賞を授賞したミステリです。この紹介では少々ネタバレ的なことも書きますので、ミステリとして楽しみたい人はここで読むのをやめたほうがいいのかもしれません。とはいえ1989年7月15日初版発行なので、入手は困難かもしれませんね。
内容について即物的に書きます。この作品はアメリカの地域SF大会ルビコンを舞台にして、人気ファンタジー作家が殺された事件について、ハードSF作家がTRPGのセッションを介して犯人を自供へと追い詰めていく話です。……紹介したくなるのも、分かるでしょう?
で、小説中で使用されているルールはD&Dです(文中で明言されています)。この小説の描写がどこまで実情を示しているのかは、むろん良くわからないわけですが、ついついアメリカのTRPG事情を理想化して考えてしまう私などにはけっこうショックの大きな描写がたくさんあります。社会生活にあまり向いているとは言いがたい性格の人々、キラーダンジョン的バランスのシナリオ、社会人の遊びではなく子供の遊びであるという認識、低リスク高報酬シナリオを期待する風潮。まあ、そんな連中をファンのまなざし・仲間意識をもって描写しているところが、好感がもてるんですが。