読書案内:ヒトはなぜヒトを食べたか

新技術を導入すると社会全体の生産量は増大し人口もふえるものの、ひとりあたりの労働時間あたりの生産高はむしろ低下し、労働者の負担は増大ししていく。縄文時代の狩猟採集に簡単な栽培を組み合わせたようなものであれば一日四時間も仕事をすれば十分だったのが、農業技術の進展により毎日毎日十時間以上も労働する必要がある社会を作り上げていったわけである。……というのが要旨なのかな。このような生態的淘汰圧によって、食人儀礼や食料タブー(豚肉は食べてはならないとかいう、あれです)、そして子殺しや儀式的な戦争が誕生・維持されているのである……ということが、事例を多数分析しつつ述べられています。

TRPGにおける活用としては、世界設定の背骨として設定の文化人類学的リアリティを高めるのに使うほか、ダークファンタジーやサイバーパンクなどの貧困と絶望、富の集約と階級間格差などを重要なガジェット(もしくはテーマ)としたジャンルで遊ぶときの、イメージづくりにも使えるのではないでしょうか。

たとえば……魔法技術の進展により人々の生活自体は便利になり、生産力も向上しつつつつあった。しかし、高度な魔法の実線には膨大な儀式参加者の労役と多数の生贄を必要とした。そのこと自体が子沢山であることの有利さを産み、人口圧力は増すばかり。地に死者はあふれ……とか。とくに悪魔が介在しなくても、悪徳が氾濫しなくても、善意の人々の必死の努力そのものが、その人々を絶望に追い込んでいってしまうという悪人不在の絶望感というものは、たまに遊んでみると、けっこう面白いのかも知れませんね。まいどこれだと、疲れちゃいそうですけど。

書誌情報
ハヤカワ・ノンフィクション文庫『ヒトはなぜヒトを食べたか 生態人類学から見た文化の起源』マーヴィン・ハリス ISBN4-15-050210-2 本体680円
語り部日報掲載日
1998/02/12
文責
sfこと古谷俊一
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