読書案内:軌道エレベータ

軌道エレベータ! 宇宙への掛け橋! SFマニアであれば、これだけで本の内容が理解できるだろう。……が、私の観察と実体験から推察するに、SFファンでさえも軌道エレベータについてまったく知らない人間は多いようなので、ちょいと説明しときましょう。

まず静止衛星を思い出してください。これの説明まではしませんが、ようするに赤道上で地上と相対的に静止してみえる位置にずっといる衛星です。この静止衛星から上下(地球側とその反対側)にバランスをとって糸状のものを伸ばしていきます。それでも相対静止していることには変わりありませんね。では、この糸を地上に届くまで伸ばしたら、どうなるでしょうか。重心は静止軌道にあることにかわりがなければ、そのまま安定してしまいます。そして、糸を伝ってしまえば静止軌道、さらには脱出速度を得て他の惑星へ飛び立つことが簡単にできる……これが軌道エレベータ、究極の宇宙への交通手段です。

『軌道エレベータ』では、この軌道エレベータの歴史的経緯や技術的問題点について、わかりやすく説明してあります。また、材質に大きな技術的進歩を要する古典的な軌道エレベータ以外にも、最近発案されているスカイフックのたぐいなどについても簡単に解説してあります。

近未来から遠未来まで、リアリティのある技術背景を持った宇宙SFものを遊ぶ時には、ぜひ読んでおくべき一冊だといえるでしょう。

語り部の近未来宇宙SFサプリメントAD2045では、スカイフックの一種の採用を提案しております。その時に百科事典フォーマットで記述した解説をついでにつけておきます。

ちょうごくおんそくスカイフック【超極音速スカイフック】《宇宙技術》
低軌道に重心を持つ一種の軌道エレベータである、スカイフックの一方式。低空型のテザーシステムに近いのかも。
低軌道衛星同様の軌道で飛翔する細長い衛星であると考えればよい。最下端は地表百キロメートルだと地表との相対速度は毎秒5キロメートルとなることから名前がつけられている。
軌道エレベータのように地上に対して静止するというわけにはいかないが、低軌道用ロケットから荷物を受け取って中・高軌道まで運びあげるための安価な手段として使用できる。
構造材として比較的安価なケブラー繊維などが使用できることから、実用化が比較的容易であると思われる。
書誌情報
裳書房ポピュラーサイエンス『軌道エレベータ――宇宙へ架ける橋――』石原藤夫・金子隆一 ISBN4-7853-8665-7 本体1500円
語り部日報掲載日
1998/02/02
文責
sfこと古谷俊一
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