読書案内:パンダの親指
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グールドは『ワンダフル・ライフ』の著者だといえば、おわかり頂けますでしょうか。断続平衡説(この本では本来の意味合いを表現するために区切り平衡説と訳している)の旗手で偶発事象の進化への影響を重視する立場の人です。
この本はようするに進化論の啓蒙書です。科学史的な進化論の発達過程と当時の最新の研究を、豊富な事例分析によってわかりやすく解説しています。もともとの連載が20年ほど前のため、いささか資料が古い場合もありますが、教科書レベルよりは数段新しいことと事例が詳細に解説されることから、今の目で読んでも十二分に価値があるでしょう。また過去の科学者の功績・過ちに対する温かいまなざしと科学史的な考察は、他人の過ちを笑い飛ばすだけのような書きかたとは違って、非常に好感が持てます。
この本の内容をどうやってTRPGに生かすのか、と思われるかと思いますが、とりあえず幾つか思いついた利用法を列記しておきます。
- 絶滅動物の実例をもとにして、ある意味奇妙な生物を作成・登場させる。へたなモンスターなんぞよりも変なものになるかも。
- 進化論の発達過程と、多くの人の誤解、文化的背景に制約される人々のありようを認識し、18世紀から20世紀までを舞台とした世界で遊ぶ時の参考にする。
- 実際に過去に進化に大きな影響を与えた突発事象をシナリオにからめて利用する。氷のダムによって作られた巨大な湖が、氷河期の終焉により決壊して発生した毎秒752000立方フィート(二メガリットル?)もの大洪水なんか、絵的に凄いし。東京都を丸ごと砂礫の下に埋め、首都圏を削り去りうる規模の洪水が何度もあったなんてのは、なんとも恐るべきイメージです。
- 書誌情報
- ハヤカワノンフィクション文庫『パンダの親指 進化論再考』スティーブン・ジェイ・グールド著、櫻町翠軒訳 本体563円 上 ISBN4-15-050206-4 下 ISBN4-15-050207-2
- 語り部日報掲載日
- 1998/02/01
- 文責
- sfこと古谷俊一
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- 『パンダの親指 上』
- 『パンダの親指 下』
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- 『パンダの親指 上』
- 『パンダの親指 下』
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