[KATARIBE 9860] HA06:EP:「闇ぬい誕生秘話」

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Date: Sun, 17 May 1998 22:38:15 +0900
From: "E.N." <nakazono@ss.ffpri.affrc.go.jp>
Subject: [KATARIBE 9860] HA06:EP:「闇ぬい誕生秘話」
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                こんにちは、いー・あーるです。
              皆さん、こんにちは。

この前、一行掲示板に、「闇ぬい」なるものが出現致しました。
……さて、その誕生秘話、とは(おい)
#いー・あーるは、正気です。
#但し、正気とまともとは食い違うものでもあります(居直るな)

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 EP 「闇ぬい誕生秘話」
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 某日、春雷の轟く夜。

  SE    :ごろごろ……

 雨は、まだ降らない。
 その季節にしては、妙に生ぬるい風が吹いている。

  SE    :ぴかっ

 街の片隅に放り出してある、屑布でいっぱいの箱が、稲光に浮かび上がる。

 いつのまにか一杯溜まった、布の切れっぱし。
 小さすぎて、型紙が置けないもの。
 布の端っこで、機織りの際に穴が開き、使えない部分。
 大きさが規定に合わない為、捨てられた目のボタン。

 恐らく、ぬいぐるみの工場からのゴミだろう。
 明日になれば、全てまとめて、焼却炉の中に放り込まれるのだろう。

 くやしい、と、小さな声が呟いた。

       :「くやしい」
       :「ほんとうは、くまさんになるはずだったの」
       :「りすのしっぽ」
       :「ねこの金の目だったのに」
       :「切り捨てられて」

  SE :ごろごろごろ……どどーん(遠雷)

 くやしい、と、また、小さな声が呟いた。

       :「みんなとあそびたかったの」
       :「その為に、織られたの」
       :「なのに端っこは伸びちゃうからって、切られたの」
       :「毛並み、間違えたから、捨てるって……」

 くやしい、と、呟く声は、だんだんと低く、間延びしてゆく。

       :「あそびたいのにあそべない」
       :「まもりたいのにまもれない」
       :「泣きたいのに泣く目もない」

 ごろごろ、と、雷の音が近づいてくる。

       :「欲しいの」
       :「だから、頑張るの」
       :「あそべないなら、あそばさないの」    
       :「まもれないなら、こわすの」

 何がきっかけだったのか。
 何がそうさせたのか。

  SE :がらがら……ぴっしゃあんっ☆

 耳をつんざくような、雷の音と、稲光。
 それが、一瞬にして掻き消えた、その後に。

 闇の中に、蠢く影が残った。

  SE :もこ……もこもこもこ☆

 様々な色の布が、ざくざくの縫い目でつぎはぎされている手足。
 右目は少しひびの入った黒の硝子、左目は形が少々いびつなアンバー。
 目つきの悪い、それは、巨大なくまぬいである。
 あくまで「くまぬい」であって、間違っても「テディ・ベア」ではない。
 
 先程まで布でいっぱいだった箱は、いつのまにか、空になっている。

  SE :ごろごろごろ……

 雷に照らされて浮かび上がる、どーもいびつな輪郭。
 目つきの悪いくまぬいは、指の無い手をぐっと握り締めた。

  この体に残る、怨念と無念。
  それを、むげに出来ようものか。

  ぬい  :「……ゆくぞ」

 ぐっと握り締めた手の先から、綿が少々こぼれたが、そんな事は気にしない。

  ぬい  :「……するぞ」
  SE  :ぴかっ☆
  ぬい  :「わるいこと、するぞーーーっ!」
  SE  :がらがらどっしゃーんっ

 そう、ここに。
 恐るべきぬいが誕生したのである。

 闇ぬい、と、後に名づけられる、それはぬいであった……

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…………………。
……何書いてんだろ、いー・あーるって……
はあ(脱力)

で、これが、恐らく、通り掛かりのとらっくに乗り継ぎして
松蔭堂に行くんだろうな……

がんばれよー、やみぬい(をい)

でわっ

 
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  『Hitch your wagon to the Star in Heaven』
 
          いー・あーる(nakazono@ffpri.affrc.go.jp)
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