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Date: Sun, 4 Jan 1998 23:28:12 +0900
From: tanaka <fwhs3290@mb.infoweb.or.jp>
Subject: [KATARIBE 8216] [HA14]EP:『大切な人に』
Sender: owner-KATARIBE@teleway.ne.jp
To: <KATARIBE@teleway.ne.jp>
Message-Id: <199801041428.XAA26779@mb104.infoweb.or.jp>
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瑞希姉ちゃんこと久志(ひさやん)です。
いー・あーるさんこんにちは。
クリスマスEP書いて、お正月EPも書く(^^;)
EP書くの久しぶり…
『大切な人に』
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新年。
長年、研究所で閉ざされた暮らしを続けていた晃一にとっては、はじめて
のちゃんとしたお正月と言ってよかった。
谷山家に晃一と友久は二人そろって年始の挨拶にきていた。
友久 :「あけましておめでとうございます」
晃一 :『おめでとうございまーす』
晴美 :「あけましておめでとう」
麻衣 :「友久お兄ちゃんっ、あけましておめでとうっ」
晴美 :「どうぞ、あがってくださいね」
晴れ着姿の麻衣が出迎えてくれる、。
麻衣 :「ねぇ晃一、お兄ちゃん見て見て、似合うっ(くるり)」
友久 :「ああ、可愛いよ」
晃一 :『麻衣ちゃん、きれい』
麻衣 :「本当、嬉しいっ」
そして、晃一には…
晴美 :「はい、晃一君」
晃一に差し出された白い袋。もちろん、それは…
晃一 :『え?』
麻衣 :「晃一、お年玉だよ」
晃一 :『おとしだま?』
お年玉、というものを知らない晃一、目を丸くしてしまう。
晴美 :「そうよ、大事に使ってね」
晃一 :『…ありがとう、ございます』
そして、自宅に帰った後。もらったばかりのお年玉の袋の中を覗く晃一。
袋の中には、千円札が一枚。
晃一 :『お金だ…』
お金の使い道。今まで、自分のお金など持った事もない晃一、何に使った
らいいかわからない。
晃一 :『ねぇ…鬼李。お金、何に使えばいいのかな?』
鬼李 :「考えてごらん。お年玉をもらった時、何て言われたのかな?」
晃一 :『大事に使って…っておばさん言ってた』
鬼李 :「晃一にとって、大事な事は何かな?」
晃一 :『大事な事…』
しばし、考え込む。
晃一 :『友久お兄ちゃんがいて、野枝実お姉ちゃんがいて…鬼李がい
:て…ずっと、みんな一緒にいる事』
鬼李 :「それなら、そのためにお金を使えばいい」
晃一 :『………』
さらに考え込んでしまう晃一。長いこと、思い悩んだ末に…
晃一 :『決めた!』
鬼李 :「どうするのかな」
晃一 :『プレゼント、買うの。野枝実お姉ちゃんと友久お兄ちゃんに』
鬼李 :「良い考えだね」
微笑んだ晃一の手を鬼李がなめた。
鬼李 :(問題は、千円で何が買えるか…だな)
程なく、鬼李を懐に入れて、晃一元気良く外へ飛び出していった。
駅前の大通り、お正月ながらも、空いている店は多い。通りは親子連れや
若者達でにぎわっている。様々な商品が並べられ、店員の声が、あちらこち
らから聞こえてくる。
晃一 :『いろんなものがあるね』
鬼李 :「ゆっくりさがせばいいさ」
あちらこちらの店に入り、プレゼントをさがす晃一。
お揃いのカップ、小さなキーホルダー、ふかふかのぬいぐるみ、柔らかいハ
ンカチ、可愛いプリントのついたボールペン、などなど…
晃一 :『お兄さん、これなぁに?』
店員 :「ペアのグラスセットだよ、坊や買うのかい?」
晃一 :『えーと…』
値段を見てみる。
鬼李 :「…(爪で襟を引っ張る)」
晃一 :『…買えないね』
色々な店を覗いてみたが、これといったものがない。
飛び回って少々疲れたため、近くの路地に座り込み、一休みする。
晃一 :『ふぅ…』
鬼李 :「なかなか、見つからないものだな」
晃一 :『そうだね』
座り込んだまま、通りを眺める、と。視界の隅に、道端に色んなアクセサ
リーを並べて売っている老人の姿が映った。吸い寄せられるように、晃一は
老人に近づいていった。
老人が売っているアクセサリー。高そうなものではないが、そのすべてが
手作りで、どのアクセサリーも、小さな猫が刻まれていた。
晃一 :『みんな猫だね』
鬼李 :「(こそっと)なかなか、いいものだね」
老人 :「気に入ったかい?ぼうや」
晃一 :『うん』
売っている商品の中、晃一が選らんだのは細いチェーンネックレス、猫が
刻まれた小さなメダルがついている。
晃一 :『おじさん、これ買える?』
老人 :「ああ、ひとつ千円だよ」
晃一 :『千円…』
手の中の白い袋、その中には千円。
晃一 :『二つ、買えない』
鬼李 :「(こそっと)そうだね…」
老人 :「二つ、いるのかい?」
晃一 :『うん…でも、僕千円しか持ってないの』
老人 :「一つなら買えるんだけどね」
晃一 :『ううん、二つじゃなきゃ駄目なの、友久お兄ちゃんと野枝実
:お姉ちゃんの』
老人 :「プレゼントかい?」
晃一 :『そう、お年玉でプレゼント買うの。大事に使ってって言われ
:たから、大事な人にプレゼントするの』
老人 :「二人とも大事な人なんだね」
晃一 :『うん』
老人 :「そうか…よし」
ごそごそと、手元の鞄をさぐり、小さな紙袋を取り出し晃一に手渡す。
老人 :「坊や、これはどうだい。これなら二つで一つだよ。お兄さん
:とお姉さんに丁度いい」
開いた手の中、紙袋の中には、二つのチェーンネックレス。
晃一 :『ほんとだ、おじいさん。これ、千円で買える?』
老人 :「ああ、買えるよ」
晃一 :『ありがとう!おじいさん。はい、お金』
老人 :「ああ、毎度あり。お兄さんとお姉さんによろしくな」
晃一 :『うん、じゃあね、おじいさん』
これが晃一の生まれてはじめての買い物だった。
そして、その日の夜。
友久 :「成る程…な」
野枝実 :「二つで一つよね…」
鬼李 :「二人の為に、一生懸命プレゼントをさがして回ったんだ。晃
:一の精一杯の心尽くしだぞ」
野枝実 :「それは…わかる」
夕飯を終えて、晃一はぐっすりと眠っている。一日中プレゼントを探し回
って疲れたのだろう。
友久 :「それで…これか」
野枝実 :「そう…ね」
しかし、頭を抱え込んでしまう野枝実と友久だった。
野枝実と友久の手の中にある小さなネックレス、チェーンの先には半分に欠
けたハート。それぞれに猫の姿が描かれている。これを二つに合わせると、
ハート型に、二匹寄り添った猫という図柄になる…という代物である。
晃一に悪意はないのだ、決して。もらったお年玉をはたいて、二人の為に
プレゼントを買ってきてくれたのだから。疲れきって眠っているのも、プレ
ゼントを捜して、あちこち飛び回ったせいだ。いくらもらったかは知らない
が、そんなに多くはなかたっただろう。
しかし…
半分づつのペンダント、しかもハート型(笑)
友久 :「これをなぁ…」
野枝実 :「………(汗)」
鬼李 :「つけないとは言わせないぞ」
鬼李の言葉に、深々と溜息をつく二人だった。
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以上です。
って、しばらくEP書いてないから、書けなくなってしまった(^^;)
しかし、二人ともちゃんとつけるんだろーか。
半分づつのペンダント、しかもハート型(爆)
いーさん、修正・追加あったらお願いします。
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『都会…閉ざされた無限。決して迷うことのない迷路』
田中久志(ひさやん) fwhs3290@mb.infoweb.or.jp
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