[KATARIBE 25032] Re: [HA06N] 小説『窓に降る塵の雪 ( 仮題) 』

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Date: Thu, 10 Oct 2002 21:41:19 +0900 (JST)
From: 月影れあな  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 25032] Re: [HA06N] 小説『窓に降る塵の雪 ( 仮題) 』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2002年10月10日:21時41分19秒
Sub:Re:  [HA06N] 小説『窓に降る塵の雪 (仮題) 』:
From:月影れあな


 やほー、月影れあなです

 それにしても、自分のキャラでこういうこと書くのって辛いネ、恥ずかしくっ
て。
 楠さんが「らぶらぶの書き方」とか書いてるなぁ。これ読んでおこう。
 楠さんて偉大だったのだなぁ……会ったこと無いけど


>**********************************************************************
>小説『窓に降る塵の雪(仮題)』
>============================
>

(略

 黒い影が、月の光に白く照らし出されたバルコニーに音も無く降り立つ。我
ながら上手く侵入できたと思う。ただ、いつもと違い袖なしの外套を羽織って
いないので、今ひとつ格好が決まらない。
 闇に翻る黒の外套が良いのだ。
 金色の目が光り、辺りを見回す。昨日来た時と別段変わらないバルコニー。
脱いでいった外套はやはり中に持っていかれたままのようで、その鋭敏な視覚
をもってしても見つけることは出来なかった。仕方無しに、昨日銀髪の令嬢が
出てきた窓辺の前に立つ。
「しつれいしま〜す」
 見ず知らずの乙女の部屋に断わり無く侵入する罪悪感から、無意識のうちに
言葉が口をつく。ただし、ばれない様口の中でもごもごと。呟いて、窓の取っ
手に手をかける。当然予想されたはずの、鍵の抵抗も何故か無く、窓は拍子抜
けするほど簡単にキィと小さく音を立てて開いた……そこで、ああなんという
事だろうか、何故ここにいたるまで思い至らなかったのか不思議で仕方ないが、
重大な事に思い当たった。
 部屋の中の、見つけやすい場所に外套が置いてあるとは限らない。いや、む
しろ衣装ダンスの引き出しやクローゼットの中にある可能性の方がはるかに高
い。下手すれば部屋に無い可能性もあるわけで。だとすれば、私はつまり、こ
の部屋の主である令嬢の私的な着物が入っているそれらを無断で探らなければ
いけないという訳で……その…………
 考えをめぐらせて、慌てて窓を閉め、取っ手から手を離す。一歩引き下がる。
困った。無断で部屋に入って、家捜しなんか始めたら『私は変態です』と明言
しているような物だ。窓の前を右往左往する。しかし、進入しようとした時点
で変態確定的という色が濃いし、ここで家捜しを始めてもさほど変わらないん
じゃ……部屋に進入するのは、外套を返してもらうという大義名分の元に取っ
た行動だ。問題ない……しかし、それなら家捜しをするという行為についても
同じじゃはないか……いやいや、人間には超えてはならない一線という物があ
る訳で……
 そんなことを考えながら、窓を開けたり閉めたり。

 くすくすくす

 果てしない思考の糸を断ち切ったのは、ふいに部屋の中から聞こえた含み笑
いだった。
 驚いて見ると、昨日見た銀色の髪の令嬢が寝台から半身を起こし、その美し
い首をもたげて可笑しそうに微笑んでいる。
「何してるの、早く中に入れば?」
 予想外の言葉に、私は拍子抜けした。間抜けにも目を大きく見開いて呆然と
なる。だが、それも一瞬の事。素早く頭を切り替えると、考えを巡らせる。
 まるで私が来る事を予期していたかのような態度。恐らく、本当に予期して
いたのだろう。彼女は私がバルコニーから跳び出す所を目撃したのだ。そして、
外套が落ちている事に気付き、さらに、今日忍び込んでくる事まで予期した……
 そこまで考えて頭を振る。いや、ナンセンスだ。普通なら例え飛び出す事を
目撃しても、たかが外套一つ取るためにもう一度来るとは思うまい。仮にそう
思い到ったいたとしても、普通の令嬢なら、部屋を換えるか、鍵をキッチリ閉
めるか、警備員を雇うか、とにかくそれ相応の対処をするはずだ。それをわざ
わざ鍵を開きっ放しにしておき、侵入を躊躇する私に声をかけて招き入れるな
ど、そんな酔狂な事、普通の令嬢がするはず無い。
 そう、普通の令嬢なら。では、普通の令嬢でなかったとしたら……?
 少女はニヤニヤと挑戦的な笑みを浮かべている。深窓の令嬢らしからぬ、不
思議なほど自信に満ちたその態度に私は軽い既視感を覚えた。何時だったか、
何処かでこれと同じ様な人間を見たことがある。
「“影”を取り戻しに来たのでしょう? “ピーターパン”さん」
 軽く笑いを含んだその言葉に、私はなるほど思い至った。
「私がピーターパンなら、さしずめ君はウェンディと言うところか」
 あまりの可笑しさに笑い出しそうになるのを必至で堪えて、私は言葉を投げ
返した。どこかで見たことがあるだって? 当然だ。彼女の態度は、そう、開
き直った時の私とまるでそっくりだ。雰囲気に酔って気取った風な態度を取り、
不測の事態を楽しんでいる。
「さぁ、お掛けになって。熱い紅茶を用意するわ」
 彼女は白いナイトドレスを翻し、あつらえたかのように、いや、本当にあつ
らえたのだろう、枕元に置いてあったティーポットをとって、部屋の中心にあ
る洒落た円いテーブルに腰掛けた。
 私も無言で彼女の反対側の席に着くと、これもまたあらかじめ置いてあった
ティーカップにこぽこぽと紅茶を注ぎ込む。
「ミルクと砂糖はいるかしら?」
「いや、ミルクは結構。砂糖はスプーン一杯分だけお願いする」
 銀のスプーンで陶磁器のカップをかき混ぜる澄んだ音が耳に心地良い。
 私は熱い紅茶を猫舌である事を我慢して一口すすると、下を軽く火傷した事
などおくびにも出さず話を切り出した。
「聞いて良いかい、ウェンディ」
「なぁに?」
 彼女はいかにも「一体どういう質問をされるのだろう」といった風に小首を
かしげた。
「何故、私が外套を返してもらいにやってくると思ったんだ?」
 これについて、彼女はいとも簡単に答える。
「あら、ピーターパンは落としていった影を取り返しに来る物でしょう?」
 それだけの理由で、わざわざ私が来るまで起きていたのだと言う。
 これは……そう、結夜は直感した。
 これは面白い。きっと面白い事に違いない。
 その時、やっと私は気が付いた。硬派を自称する私にあるまじき事だったが、
あの時、月の下で煌く彼女の銀色の髪を見たあの瞬間、私は彼女に一目惚れし
てしまったのだ。


(続きます)
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 早速だけど、二回目にしてそろそろ行き詰ってくる



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