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Date: Thu, 12 Sep 2002 19:02:19 +0900 (JST)
From: 月影れあな <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24945] [HA06P] エピソード『あげはで、夜』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200209121002.TAA95233@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 24945
2002年09月12日:19時02分19秒
Sub:[HA06P]エピソード『あげはで、夜』:
From:月影れあな
月影れあなです。
宗谷君があげはでごろごろしてる話
さっき送ったの、コード間違えてましたね。すんません
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エピソード『あげはで、夜』
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本文
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――宗谷君が好きだよ
あのこは言った。今でも覚えている。
――宗谷くんは、あたしの事、好き?
頬を朱に染め、少しはにかみながら。
だから、答えた。
――好きだよ。みんな大好きだから
あのこは泣いてしまった。泣き顔を見せまいと、走って逃げてしまった。
ぼくはどうして良いかわからず、日が暮れて、姉ちゃんが迎えに来るまでず
っと立ち尽くしていた。
――誰も好きというのは、誰も特別じゃないということだから、もしかした
ら、とても悲しい事かもしれません
姉ちゃんは眉をひそめて、少し悲しそうに言った。ぼくはまったくわからな
かったけど、何となく、自分がとてもいけないことをしたのだとわかった。
その翌日だった。
あのこが車に轢かれて死んでしまったという事を聞いた。
突然飛び出してきたらしい。運転手が慌ててブレーキを掛けても間に合わな
かったそうだ。
あのまま前も見ずに走って、それで轢かれたのだ。
ぼくの所為だ。
ぼくがあんな風に言ったから……
朱 :「そいつが前も見ないで轢かれたなら、そいつ自身の所為
:だ」
宗谷 :「ふふ、師匠にも同じことを言われたよ……でも、ぼくは
:あの時本当に落ち込んでしまって」
師匠はそっけなかった。
――人間というのは、自分の行動は自分の責任で行うんだ。他人のした事を
いちいち背負ってはいけない。自分のしたことを他人に背負わせてもいけない。
それだけ言うと、そのまま瞑想に戻っていった。ぼくは、それでもまだ自分
が悪い気がしていた。
宗谷 :「今だと、他人の責任を負おうとするだなんて、傲慢だと
:思うんだけど、あの頃は若かったから」
朱 :「十代前半の言うセリフじゃないな」
ぼくが悪いのに、誰もぼくを責めなかった。
姉ちゃんも、師匠も、あのこの親も、親友も、誰もぼくを責めてくれなかっ
た。ぼくは怖かった。
怖くて、そのまま逃げてしまったんだ。
ドライマティーニの入ったグラスを軽く傾ける。氷と氷のぶつかり合う澄ん
だ音が耳に心地良い。
宗谷 :「弱かったんだよ。わざわざ遠い吹利学校に転校して、逃
:げてしまうなんて……今は後悔してる。ぼくがもう少し強
:かったら。強くなりたい……」
朱 :「そうか……どうでも良いが、ガキが酒飲んでくだを巻く
:な」
善勝 :「その前に、ガキに酒を出すなよ……」
宗谷 :「ほえ、なんで?」
善勝 :「お酒は二十歳になってからだろう」
宗谷 :「えっ!? でも、お酒は八つになったら飲んで良いんだっ
:てお母さんが……」
善勝 :「ろくな母親じゃないな……」
このように、夜は更けていく……
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