[KATARIBE 24924] [HA06H] 『町角で幽霊に出くわす』

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Date: Thu, 5 Sep 2002 00:55:44 +0900 (JST)
From: みぶろ  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24924] [HA06H] 『町角で幽霊に出くわす』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200209041555.AAA33866@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 24924

2002年09月05日:00時55分44秒
Sub:[HA06H]『町角で幽霊に出くわす』:
From:みぶろ


>みぶろです。
>エピソードを作ろうと思ってたのに、いつのまにか小説になってしまいました。
>創作物を人様にお見せするのは初めてなので、かなり肩肘はってますが、生暖かい
 目でみてやってください。
>一応テーマは『あなたならどうする』から引っ張ってきました。が、外れている
 気も・・・。
>それではこれからも千緒ともどもよろしくお願いします。
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 小説『町角で幽霊に出くわす』
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 登場人物 
  藤咲千緒(ふじさき ちお)
  :春日高校一年生。結界術の使い手。座右の銘は「触らぬ神にたたりなし」
  袴田葵(はかまだ あおい)
  :千緒のクラスメイト。女子バスケ部。宝塚の男役風の容姿で女子に人気。
舞台   通学路
時系列  2学期の始業式の日 夕

本文
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  文芸部のミーティングが終ったのは夕方だった。二学期が始まったという
 のに、全然涼しくならない。早く電車に乗って束の間の冷房を浴びたい、そ
 んなことを考えながら、藤咲千緒は大学通りを足早に歩いていた。
 「うぐぐぅ……」
 「ん?」
  奇妙なうめき声が近づいてくるような気がして千緒が振り返ると、頭から
 血を流した男……の幽霊がいた。
 「あいたー。見ちゃった」
  首が折れ、血を流した幽霊が、交差点から千緒に向かってゆっくりと歩い
 てくる。ただ、その姿はずいぶんとぼやけ、薄暮の吹利市街が透けて見えた。
  こうしたものに慣れているのか、千緒は取り乱す様子もなく手早く結界を
 はって霊が近づけないようにする。
 「交通事故、よね?結構薄いし、もう思考も読み取れない……ほっといて
 もよさそうだけど」
  こうしたモノにはできるだけ不干渉を貫くのが千緒のスタイルである。
 「前はこんなのなかったのにな……もうっ、新学期早々爽やかじゃないな
 ぁ。下校のたびに絡まれちゃ面倒だし、無理矢理消しちゃおっかなぁ」
  小さくつぶやきながら、千緒はもう一度慎重に男の霊を見た。
  男の霊は何をするでもなく千緒を見つめていた。その瞳には憎悪も無念も
 なかった。思い残しや虚無感、そういったタチの悪い霊共通の感情はなく、
 ただ、無心に立っている。
 「なんか、珍しいわね。ま、二、三日辛抱しましょ」
  放っておくことにして千緒が振り返ると、いきなり人にぶつかった。
 「きゃ。ご、ごめんなさい」
 「うわ。びっくりした。いきなり振り返るなよ」
  見上げると、クラスメートの袴田葵だった。
 「何だ葵かー。びっくりした。なにしてんの?」
 「いや、歩いてたら千緒が交差点見ながらぼーっとしてるんで、後ろから
 いきなり胸もんでびっくりさせようと」
 「……次やったら怒るって言ったでしょ」
  笑いながら葵にパンチして、千緒は歩き出した。
 「ふっ、そんなやわなパンチは効かないね……って、こんな時間まで何し
 てたん?今日、始業式とHRだけやん」
 「ミーティング。文化祭に向けてテーマ別とフリージャンルで一作ずつ書
 いてこいって」
 「ほー。さすがは文化系やねー……あ、君君しっとるかね」
  そこで葵は悪戯っぽい目をしてささやいた。
 「千緒がさっき見てた交差点、こないだ交通事故があったんやで」
 「えー。(知ってるけど)」
 「そんでさ、轢かれた男というのが赤信号だというのに躊躇せず車道にと
 びだして。リストラを苦にしての自殺ということになってるらしいけど、保
 険の受取人が別れた妻と娘なんだって〜」
  千緒はもう遠くなった交差点を振り返った。男の霊は見えなかった。
 「もう一度、会いたかったのかな……」
 「へ?なに?」
 「あ、ううんなんでもない」
 「あっそう。でもさー、なんか事件の匂いがしない?保険金殺人とかさ。
 『犯人はお前だ』ってやってみたいなー」
 「最近の名探偵は事件に関わりたがらないのが流行なのよ」
 「しってるぞ。新京極通りとかいうやつ」
 「あほぅ」
  千緒は笑いながら、もう一度葵にパンチした。 

               ――了――




    

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