[KATARIBE 24855] [HA06P]エピソード『地下室の二人』

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Date: Mon, 26 Aug 2002 01:40:11 +0900
From: "Motofumi Okoshi" <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24855] [HA06P]エピソード『地下室の二人』
To: "Kataribe ML" <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。仲良しコンビ、理緒ちゃんと愛菜美のEPです。
エンブリオさん、台詞チェックよろしくお願い致します。
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エピソード『地下室の二人』
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登場人物
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 榎愛菜美(えのき・まなみ)
  :ロボット少女。最近ロボットであることを理緒に告白した。
 円部理緒(まどかべ・りお)
  :精神体少女。神出鬼没で、謎も多い。


本文
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 夏休みも終盤に差し掛かったある日のこと。愛菜美は、自分の体をチェック
するため、自宅の地下室へ入った。学校に再び通う直前に、ロボットだとばれ
ないように、体の隅々まで念入りに点検するのが、この時期の習慣であった。
ただ、今年は両親が出張に出てしまい、家にいない。

 愛菜美    :「今日中に、全部のチェックを済ませないと」

 わざわざいない間にチェックをしたがるのは理由がある。先日、体に大量の
電波を浴びてしまい、それから体調がやや優れないのだ。ただ、これを親に追
求されると、正体が露見したことを知られて、余計な心配をかけることになる。
そこで、この出張のタイミングを見計らって、親に知られずに体を直そうとい
うわけだ。少々の修理ならチェックマシンが自動的に行ってくれる。

 愛菜美    :「今年はちょっと時間がかかるかなぁ」

 まず、自分の首を外して、その断面に数本のケーブルを差し込み、固定器具
を使って頭部を吊るす。その後、首から下が自分からメンテナンスポッドの中
に入っていく。すると、自動的にチェックが始まった。あらかじめ別のポッド
に入っている予備ボディも同時にチェックされる。

 愛菜美    :「……これから3時間くらいじっとしてなきゃいけないの
        :かぁ……」

 愛菜美から見える範囲にテレビがあるのだが、今日はプロ野球もなく、見た
い番組もない。例年であればプロ野球のないときにチェックをやることはない
野田が、今年は事情が事情だけに、今日行うしかなかった。

 愛菜美    :「……ヒマだなぁ……あれ?」

 ふとドアのところを見ると、いつの間にか、小学生くらいの少女が立ってい
た。ここの地下室は愛菜美と両親しか入り方を知らないはず。愛菜美はメンテ
中の姿を見られてあせったが、よく見ると……

 愛菜美    :「理緒……ちゃん?」
 理緒     :「……(ぺこり)」
 愛菜美    :「どうやって入ってきたの?」
 理緒     :「私は、何処にでもいて、何処にもいないから」

 円部理緒。万物の「意識」が実体化した存在……らしい。ちなみに、彼女は
愛菜美の正体を知っている。

 理緒     :「何をしているの?」
 愛菜美    :「体のチェックをしているから、しばらく動けないんだ」
 理緒     :「そうなんだ……」
 愛菜美    :「指一本動かせないから、ヒマでヒマで……理緒ちゃん、
        :何か用事とかある?」
 理緒     :「……(ふるふる)」

 首を横に振る理緒。

 愛菜美    :「じゃあ、しばらくの間、お話し相手になってくれないか
        :な?」
 理緒     :「うん、いいよ」
 愛菜美    :「よかったぁ」

 早速話し始める愛菜美。話を聞く理緒。愛菜美は生首状態なので、はたから
見ると非常にシュールだが、本人達は別段気にする様子もない。

 愛菜美    :「理緒ちゃんは、いつごろ猫猫団に入ったの?」
 理緒     :「今年の3月……」
 愛菜美    :「じゃ、その間、猫猫団はどんな活動してたの?」
 理緒     :「冷蔵庫の征服……」
 愛菜美    :「え?」

 話はさらに続く。

 愛菜美    :「もうすぐ学校が始まるからね」
 理緒     :「学校で何をするの?」
 愛菜美    :「ん〜……授業受けて、それが終わったら部活動するの」
 理緒     :「部活動って?」
 愛菜美    :「なんていったらいいのかな……えっと、スポーツとか、
        :文化とか、いろいろ同じ趣味の人が集まって、みんなでそ
        :れを実践する……ってところかな」
 理緒     :「……(頷く)」
 愛菜美    :「私は、野球部のマネージャーをしてるの。マネージャー
        :っていうのは、いってみれば世話係かな」
 理緒     :「……楽しい?」
 愛菜美    :「うん、とっても」

 一般的に、女の子同士のしゃべりは、長くなるものである。人間でなくても
それは変わらないようだ。話しているうちに、メンテナンスポッドからチェッ
ク終了のブザーが聞こえてきた。

 理緒     :「……何か聞こえるよ?」
 愛菜美    :「うん、チェックが終わったんだ。ちょっと待っててね」

 愛菜美の体が、固定器具から首を外し、さらに首からケーブルを抜いていく。
そして、体のてっぺんに、元通り首が装着された。

 愛菜美    :「ふう……お待たせ。全部終わったよ」
 理緒     :「よかったね(にこっ)」
 愛菜美    :「さて、それじゃ私は部屋に戻るね。理緒ちゃんは?」
 理緒     :「わたしも……」

 と言うや否や、理緒の姿がおぼろげになり、やがて消えた。

 愛菜美    :「理緒ちゃん?」

 姿は見えなくなったが、声は聞こえる。

 理緒     :「またね……」
 愛菜美    :「(う〜ん、いつ会っても、不思議な子だなぁ)」

 そして、愛菜美も地下室を後にした。

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後付けですが、愛菜美の「ヒマ、たいくつ」と言う念が理緒ちゃんを
呼び寄せたのかもしれませんね(笑)。

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