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Date: Thu, 15 Aug 2002 02:14:13 +0900 (JST)
From: 月影れあな <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24827] [IC04N] 小説『落下してみて』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200208141714.CAA69159@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 24827
2002年08月15日:02時14分13秒
Sub:[IC04N]小説『落下してみて』:
From:月影れあな
月影れあなです。
コルチキンタワーダイビングです。初ダイブ。おめでたい。
なんですかね、この人。深く考えすぎてる気がしますな。
それにしても、窓の外の様子ってこんなんでも良いんかいな。
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小説『落下してみて』
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玖々津好(くぐつ・よしみ)
:超針師。今回初めて飛び降りる。
本文
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絶望はあった。
窓の下は透き通った黒い海だった。それが絶望だ。
死ぬのは怖くない。生きるのが怖い。
そんな陳腐なセリフも浮かんでこないほど、切迫しているわけではない。い
ろいろ考えたりする。これは違う。
生きるのは怖くない。死ぬのは怖い。ただ、生き続けることはもっと怖い。
死ぬことは逃げる事だから、生きろ。そういう風な事を言った人が、向こう
では居たような気がする。
ここでは死んでも逃げる事は出来ない。それはずいぶん昔に悟っていた。そ
れでも、逃げられなくても、駆け出したくなるときはあるのだ。
いや、窓の外は絶望ではない。希望だ。
何度死んだって、死の記憶を持っていく事は出来ない。私は今日ここで初め
て死ぬのだ。これからもきっと、私は初めて死ぬのだ。
そして、いつも思うだろう。希望はそこにしかないと。
落下しているのではない、実験しているのだ。
床が無くなる。
希望か、絶望か、箱を開けるまでは分からない。
痛いほどに風が叩きつけられる。黒い海が急速に迫ってくる。
断崖に打ち付ける波の音が聞えた。
朝の日記帳を見た。書いた覚えの無い一行が昨日の場所に描いてあった。
それで悟る。昨日私は死んだのだ。それは、初めての死だった。
「ああ」
無感動に、とりあえずため息をついてみる。死という物は、もっと怖いもの
だと思っていた。実感が湧かない。死んだ覚えが無いからだ。
ああ、今まで何を恐れていたんだろう。死んだからといってそれがなんなの
だろう。
そういう事をいつも悩んでいたのが、馬鹿馬鹿しくなってきた。私は死んだ
のだ。それが絶望なのかどうかは分からないが、目先の悩みが消えたことは望
ましいことだ。そう思ってしまう。そうとしか思えなかった。
「最近そんな感じだったからな」
悲嘆に暮れるわけでもしに、軽く呟いてみる。
耳の奥で、波の音が聞えた。
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