[KATARIBE 24791] [HA06N] 小説『夏の大会』

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Date: Fri, 2 Aug 2002 12:10:39 +0900
From: "Motofumi Okoshi" <motoi@mue.biglobe.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24791] [HA06N] 小説『夏の大会』
To: "Kataribe ML" <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。そろそろ中学野球も大会の時期ということで、
小説にしてまとめてみました。
なお、対戦校に葛城中を選んだのは、たまたま資料ページに
名前があったからというだけの理由だったりします(爆)。

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小説『夏の大会』
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登場人物
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 西久保史雄(にしくぼ・ふみお)
  :野球部レギュラー。2年。俊足。1番・レフトで出場。
 十条健二郎(じゅうじょう・けんじろう)
  :野球部レギュラー。2年。怪力。5番・キャッチャーで出場。
 桐村駿(きりむら・しゅん)
  :野球部リリーフエース。1年。速球派。途中出場。
 キャプテン
  :野球部キャプテン。3年。走攻守3拍子。6番・セカンドで出場。
 エース
  :野球部エース投手。3年。技巧派。9番・ピッチャーで出場。


野球少年たちの夏
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 高校野球の県大会が幕を下ろすと、今度は中学野球の県大会が幕を開ける。
ここ、吹利県立野球場でも、主役の座を高校球児たちから中学生の野球少年た
ちに譲り、中学野球吹利県大会の1回戦が始まろうとしていた。

 この大会は、地区予選を勝ちあがってきた中学校が、全国大会への切符を賭
けて激突するものである。その精鋭校の中に、史雄たちが所属する吹利学校中
等部の姿もあった。今日の試合はその吹利学校中等部と、葛城市代表の私立葛
城中学との一戦である。

 吹利中等部は、ここ数年は地区予選止まりで、チームの選手全員にとって、
県大会は初の体験である。
「いいか、県大会とはいっても、普段どおりの野球をしようぜ」
「お〜〜〜〜っ!」
 キャプテンが気合を入れると、チームのみんながそれに呼応する。そして、
試合が始まった。


まさかの……
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 ところが、試合開始早々から、吹利中等部はピンチに立たされる。3年生の
エース投手がいきなり先頭打者にデッドボールを与えると、続く2番打者がヒ
ットエンドランを成功させ、ノーアウト1,3塁。あわてて、キャッチャーの
十条健二郎が、マウンドに駆け寄る。
「……先輩、キャプテンが普段通りやろう言うたやないですか。緊張しすぎで
っせ」
「ああ、わかってるよ」

 しかし、そんな健二郎の助言も功を成さない。続く3番打者に、ど真ん中に
入ったストレートを狙い打ちされ、打球はライトスタンドへ。県大会出場の原
動力となったエースが、まさかの初回3失点。ベンチにも重苦しいムードが漂
い始める。


反撃
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「(この雰囲気を変えるには、俺がバットで何とかしないと)」
 初回の守備を終え、最初にバッターボックスに入る西久保史雄は、そう考え
ていた。そして、実際にその役割を果たして見せる。思い切り振りぬいた打球
は左中間へ。史雄は、俊足を飛ばして3塁まで達した。スリーベースヒットで
ある。
「ナイスバッティング!」
 ベンチからも歓声が起こる。

 この3塁打を足がかりに、初回、吹利中等部は1点を返した。まだ1回が終
わったばかり。反撃は十分に可能だ。吹利中等部ベンチはそう信じていた。


試合終了……
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 ところが、その後、どちらも得点の入らない状態が続く。吹利中等部のエー
スが立ち直りを見せたかと思えば、葛城中のピッチャーも反撃の芽をことごと
く摘んでいく。そして、そのまま中学野球の最終回となる7回を迎えてしまっ
た。
 吹利中等部は、7回表の葛城中の攻撃に、リリーフエースの桐村駿を投入。
小さな体からは想像もつかない剛球で、葛城中の攻撃を三者三振に抑えた。
「うん、最高のピッチングができた。だから、絶対逆転してよね!」

 その駿のピッチングに触発されたのか、吹利中等部は最後の粘りを見せる。
1番の史雄がフォアボールで出塁すると、後続がつないで2死1,3塁。ここ
で、5番の健二郎がタイムリーを打って1点差に追い上げ、ベンチも盛り上が
りをみせる。

 しかし、6番に入っていたキャプテンの打球は、いい当たりながらもショー
ト正面のライナー。ショートががっちりつかみ、吹利中等部はあと少しという
ところで敗れ去った。

 試合後、接戦で敗れた疲れか、はたまた悔しさか。3年生達はしばし無言の
ままだった。


新キャプテン誕生
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 翌日。吹利中等部のグラウンドで、3年生の引退式が行なわれた。3年生は
受験に専念するため、普通は夏の大会を最後に部活動から引退する。そして、
キャプテンも交代し、1,2年生の新しいチームとして再出発するのだ。
「次期キャプテンは、3年生で話し合った結果、西久保に任せたいと思う」
「え?俺ですか?」
「ああ、お前はチームのムードを良くしてくれるし、適任だと思うんだがな」

 自分にそんな大役が務まるかどうか不安に思う史雄。しかし、反対するチー
ムメイトは皆無であった。
「……史雄なら、安心やな」
「賛成!やっぱり西ちゃんで決まりでしょ」

 そんな周りの声に後押しされ、史雄自身も決心した。
「わかりました。それでは、一生懸命やらせていただきます」
 こうして、この日から、史雄をキャプテンとした新しいチームがスタートし
たのである。

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