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Date: Sun, 7 Jul 2002 21:35:47 +0900 (JST)
From: 月影れあな <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24702] [HA06N] 小説『断片』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200207071235.VAA32234@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 24702
2002年07月07日:21時35分46秒
Sub:[HA06N]小説『断片』:
From:月影れあな
月影れあなです。
水穂ちゃんの過去な話。
なんかごっつ半端なところで終わってるけど、これで終わりです。続きはあ
りませんです。
妹にも「これで終わり！？」と言われました。まぁ、いいや。
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小説『断片』
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本文
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「残念だけど、君のご両親は事故で死んでしまったんだよ」
黒い服を着た知らない大人の人にそう言われても、正直その頃の私は何がど
うなっているのか良く分からなかった。“ごりょうしん”というのがお母さん
とお父さんの事を指しているのだという事すら知らず、突然やってきたたくさ
んの大人達を子供らしいわくわくとした好奇な目で見つめるのだった。
「みなほちゃん、みなほちゃん……」
大好きな華煉お姉ちゃんが私のことを抱きしめて、頭を撫でてくれた。華煉
お姉ちゃんはお母さんの妹、つまり私の叔母さんにあたる人で、時々家に来て
は私と遊んでくれたので、私は華煉お姉ちゃんのことが大好きだった。
華煉お姉ちゃんは、その時肩を震わせて、多分泣いていたのだと思う。私に
はそれが分からなくて、その頃の私は大人は泣かないものだと思っていたから
、でも、何となくいつもと様子が違う事に気がついた。
「だから言ったんだ。あんな男と結婚するから」
その頃はまだほとんど顔も見た事が無かった伯父さんだった。言っている事
の意味は良く分からなかったが、伯父さんはとても大きくて、怖くて、何とな
く嫌な感じがしたものだった。
お母さんは、お母さんとお父さんはどこだろう？
辺りを見回してみても、お母さんとお父さんの姿は無い。
いつもなら大人の人たちが来るときは堂々としてそこにいるはずのお母さん
とお父さんの姿が見当たらなかった。
私は、不安になって、何度も何度も辺りを見回す。お母さんとお父さんの姿
はどこにも無い。
「ねぇ、華煉お姉ちゃん。お母さんとお父さんはどこ？」
「っ！？」
華煉お姉ちゃんは何も言わなかった。ただ、先程までより強い調子で私を抱
きしめてくれた。
嬉しかったけど、今はそれよりお母さんとお父さんのいるところの方が気に
なった。
「ねぇ、お姉ちゃ……」
「いつまでも黙っておけることじゃないだろ」
伯父さんが言って、華煉おねえちゃんの肩を叩いた。その頃はまだその人が
伯父だとは知らなくて、でも、やっぱり嫌な感じがした。
「お前のお父さんとお母さんは死んだんだ」
「兄さんっ！」
お母さんとお父さんが死んだ。嘘だと思った。お母さんとお父さんはいつだっ
て家にいるはずだ。いなくなるなんてそんなのおかしい。
「お母さんとお父さんはいつ戻ってくるの？」
「死んだんだ。もう戻ってこない、二度とだ」
「嫌だ、嫌だっ！」
私は駆け出した。お母さん、お父さん、どこにいるの？ どこかにいるはず
だ。いないわけが無い。駆り立てるのは恐怖。早く探し出さないと、戻ってこ
ないなんて嘘だ！
走って、走って、いつの間にか暗い部屋にいた。中央には木で出来た箱が置
いてあって、私は何故かそこに行ってはいけない様な気がした。
自然に足が動く。一歩、二歩、あと五歩の距離。三歩、四歩。そこで立ち止
まった。手を精一杯伸ばして、蓋を開ける。
そこには白い顔をしたお母さんとお父さんが静かに眠っていた。
否が応でも分かった。お母さんとお父さんが微笑みかけてくれる事はもう二
度と無いのだと。
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