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Date: Mon, 27 May 2002 23:39:46 +0900 (JST)
From: 月影れあな <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24579] [HA06P] エピソード『露と捨て猫』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200205271439.XAA50323@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 24579
2002年05月27日:23時39分46秒
Sub:[HA06P]エピソード『露と捨て猫』:
From:月影れあな
月影れあなです。
水穂さんのEPをば一つ。
誰か絡んでくれると嬉しいです。まぁ、このまま水穂が翌朝雨が止むまで
傘をさして立ち続けていたという展開も良いですが
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エピソード『露と捨て猫』
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本文
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天気予報では昼過ぎから明日の朝まで雨が降り続くと言っていた。
だから、傘を持っていくことにした。
実際に雨が降り出したのは下校の途中だった。
SE :バッ
傘を開く。黄色い雨傘。世界が黄色に染まって見える。
長靴は履いてこなかったので、重く濡れた靴が妙に冷たい。
人は前だけしか見ようとせず、早足で通り過ぎていく。
SE :さぁぁぁぁぁぁ
単調な雨音が間断なく鼓膜を打つ。
シャワーのようにやわらかい雨。
膝より下は跳ね上げた水ですでにびしょ濡れだ。
いっそ、こんな半端な傘なんて無かったほうが良かったのかもしれない。
子猫 :「にぃ……」
鳴き声が足元で聞こえた。
見ると、濡れたダンボール箱が電柱の脇にぽつんと置いてある。
別にダンボール箱が鳴いたわけではないという事は、流石の私にもわかった。
水穂 :「…………」
そっとダンボール箱の口を開いてみる。
子猫 :「にぃ」
水穂 :「…………」
そこにあったのは三匹の子猫だった。二匹が動いていて、一匹は止まってい
た。
飢えたのか凍えたのかは知らないが、もうどうしようもない。
子猫 :「……にぃ」
水穂 :「…………」
子猫 :「にぃにぃ」
水穂 :「…………」
昼ごはんの残りのコッペパンを鞄から取り出し、水につけてやわらかくほぐ
してから顔の近くに置いてみる。
食べるかは分からないが、食べなかったら食べなかったでそれだけだ。
子猫 :「にぃ」
水穂 :「…………」
傘の外に手のひらをやる。冷たい水の感触。雨はまだ降り続く。
時計を見る。16時02分。天気予報が間違っていなければ、後15時間くらいは
降り続くのだろう。
やる事が無い。やる事は無い。
子猫 :「…………」
水穂 :「…………」
雨が止むのはまだ遠い。
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