Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Tue, 7 May 2002 00:59:55 +0900
From: "ex" <mazkara@m-net.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24441] [HA6P] エピソード:宿無しアーサー
To: <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <000f01c1f517$4b5e2ac0$59c0a8c0@mnet.ne.jp>
References: <000801c1f465$011f7e80$59c0a8c0@mnet.ne.jp> <200205060510.OAA32526@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 24441
こんばんわ、浪瀧です。
キャラクタ登録をさせていただいたものの、何から手をつけて良いのか迷っています
ので、
とりあえずキャラクタ紹介的なエピソードを送らせていただきます。
******************
エピソード:『宿無しアーサー』
・登場人物―上林・アーサー・G :吹利学校講師(兼 DEOS英語講師) 32歳
―高原 香織 :京都府内法律事務所勤務・行政書士 アーサーの元妻
30歳
********************
☆吹利学校非常勤講師上林アーサーは、副業で英語講師をしていた事がバレてしま
い、職員寮を追われてしまう。
住み家を失ったアーサー。
転々と不動産を回るもさしたる成果をあげられなかった彼は、ついに禁じ手を解放
した!
*****************
―近鉄吹利駅前のコーヒーショップ。
明るいクリーム色のパンツスーツをキリッと着こなした女性と、くたびれたジャ
ケットを羽織る遠目に
さえない感じの金髪無精髭の男とが向き合って座っている。
女性は時折コーヒーカップを手に取り、眉を顰めて男を見つめ、男の方はしきり
に鼻筋を指でなぞり、
もごもごと口を動かしている―
女 :「……つまり、その“英会話のDEOS”の、よりにもよって貴方のクラス
に吹利高の生徒がいて、
貴方の副業が知られてしまった、と言うのね」
男 :「イエス。 …次の日にハ、私のクラス皆知ってたデス。 今日、そノ
事で校長センセイに呼ばれテ
職員寮ヲ出て欲しいト言われまシタ。 モトモト、私のような講師に
ハ入寮が認められテなかった
そうデス。 私が…その、日本に帰化シタ事情を考慮シテ、の事でシ
タ」
女 :「けれど貴方は、その好意を無にしてしまった…」
男 :「ノー、その言い方、おかしイ。 吹利のサラリー、とても安イ。 そ
れだけじゃ生活できナイ」
女 :「あら。 でも、私と一緒に暮らしていたときには、吹利の給料と、大
体同じくらいの私のお給料を
合わせてそれなりに生活していたじゃない。 贅沢さえしなければ十
分だと思うわ、私は」
男 :「……」
女 :「まあ、原因はわかっているのだけれど。 ……貴方、暇さえあれば旅
に出る、っていうあの癖、
いい加減にやめなさいよ」
男 :「ノー。 旅ト違いマス。 あれ研究。 Fieldworkネ。 大事ナ私の
使命デス。 止められナイ」
女 :「…ふう。 アーサー、貴方、別れた頃と変わっていないのね。 生活
力も経済観念も全然なし。
人生設計なんてまるで考えない上に、信じられないような目標を持っ
ているから、見ていて
とっても不安になるわ。 ……昔は、“だからこそ私が支えてあげな
きゃ”なんて思ったりも
出来たものだけれどね。 …それで、どうするのよこれから」
男 :「コレカラ…?」
女 :「住むところよ、あなたの。 いくらなんでも、不動産の物件紹介くら
いは見てきたわよね」
男 :「Sure. けれどモ、この辺りノ部屋代、思ったよりモ、高イ。 寮よ
り狭くて寮より高イ。
払えまセン」
女 :「何当たり前の言ってるの。 それを覚悟の上のアルバイトじゃなかっ
たのかしら。
あ、先に言っておくけれど、私の所に、っていうのは無しよ」
男 :「オー!!」
女 :「何が“オー!!”よ。 …まさか、本気でそんなこと考えていたわけ
じゃないでしょうね」
男 :「……」
女 :「ちょ、ちょっとちょっと冗談じゃないわよっ?! もしかして、最初
からそのつもりで私を
呼び出した訳? ねえ、そうなのかしら!」
男 :「……イエス。 はい」
女 :「なっ!」
男 :「カオリ、聞いて下サイ。 …私はアナタを、今も愛していマス。 昔
と変わらずニ…昔以上の情熱
ヲ持っテ。 最初ハ、上手くいかなかったかも知れナイ。 けれド、
今回は大丈夫。 私も一杯
頑張るカラ、きっと幸せニなりマス」
女 :「…………アーサー。 ちょっと待ってね。 …私が落ち着くまで黙っ
ていてね。 …久しぶりに
逢ってまでまた喧嘩なんかしたくないから…」
男 :「カオリ、聞イテ」
女 :「黙っててっていっているでしょっ!!
……あのね、アーサー。 私は貴方のその、思わず傍にいたくなるよ
うな危うさと、優しげな
雰囲気にとても強く惹かれたわ。 それは確かよ。 でもね、アー
サー。 貴方と結婚して、
一緒に暮らすようになって、私が一番嫌いになったのも其処なの。
私が貴方の為にどんな事を
したって、自分を殺してあわせようとしてみたって、貴方は少しもそ
れに気付いてくれない。
“愛してる”という言葉だけはたくさんくれても、本当に私の事を見
つめて、知ろうとしては
くれない。 …ねえ、どんなに気を惹こうと頑張ってみても、幽霊だ
とか化け物だとか、
何の役にも立たない研究の方を向いたままの心を、私のほうに振り向
かせる事が出来ないのなら、
どうやって貴方をもう一度愛せばいいのかしら」
男 :「研究とカオリとは別デス。 違うヤリ方で両方とも大事に出来ル」
女 :「なんて、本気で考えているところが、私が貴方と上手くやっていけな
い一番の原因よ、きっと」
男 :「…カオリは…カオリも私のコトをまだ愛しテくれているハズです。
私には分かル」
女 :「好きよ。 だからもう、これ以上嫌いになりたくないの。 それに、
どちらにしても先刻の案は
却下。 新しい恋人だっているし、今はそっちの関係を大事にしたい
もの」
男 :「カオリ…」
女 :「…さて、用が済んだのなら、私帰るから。 じゃあね。 ――――と
言って別れたら、流石に可哀相
だから…………はい」
男 :「? これハ…“風…“風」
女 :「“風見アパート”。 私の知っている限り、この界隈で一番安いア
パートよ。 噂では、結構
変わり者の入居者がたくさんいるらしいから、いくつか部屋も空いて
いるんじゃないかしら。
それくらいは自分で確かめなさいね。 地図も描いたでしょ」
男 :「……カオリ、スミマセン」
女 :「なに?」
男 :「…地図、分からナイ」
女 :「…ふぅ。 方向音痴も相変らず。 しょうがないのね、まったく。
それじゃあ一緒に行ってあげる
けれど…。 いい? 今回だけよ」
**************************
こんな感じでよろしいのでしょうか?
一応この後、元夫婦は「風見アパート」へ参ります。
アパートの住人と遣り取りが出来たらな〜、などと漠然と考えておりますが、風見荘
の皆様、お付き合いいただけたなら幸いです。