[KATARIBE 24375] [IC04P] 小説『玖々津好、無限都市へ迷い込む事 その四』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sun, 28 Apr 2002 03:08:35 +0900 (JST)
From: 月影れあな  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24375] [IC04P] 小説『玖々津好、無限都市へ迷い込む事 その四』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200204271808.DAA40782@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 24375

2002年04月28日:03時08分34秒
Sub:[IC04P]小説『玖々津好、無限都市へ迷い込む事 その四』:
From:月影れあな



 どんどん行きます月影れあな

 さぁさぁ、続き続き

***********************************

「自由学生同盟?」
 「自由学生同盟」三回ほど胸中で繰り返し唱えてみる。さらには、したの上
で転がしてじっくり味わってもみる。
「……なんか、どっかで聞いた事のある響きね」
「はいぃ」
 四石がしみじみと頷く。
「要は、パクリなんですね」
「そうそう、パクリ丸出し」
「いや、断じてパクリではない」
 それまで冷静な物腰を崩さなかった栖神が始めて微妙にだが声を荒げた。
「四石君、君までなんだね。君は本来説得する立場であるこちら側の人間だろ?
不信感をあおるのは止めたまえ」
「はっ、すいません」
「それでだ。我々自由わく……学生同盟の」
「言い間違えてるし」
「自由学生同盟の! 目標は全生徒への平等な政治。具体的にいえば『虐殺、
殺戮、あと色々の無い学校を』を目標と掲げている」
 なんだかなぁ。と思いつつ、冷めた口調で問い返す。
「で、その生徒会とやらであたしに何しろって言うの?」
「戦ってほしい、戦士として」
「返答は具体的に言いなさい。何と戦うの?」
「我々自由学生同盟生徒会に相対する敵。王蟲死ン理教団とだ」
 ……寒い風が辺りを駆け抜けた。様な気がした。
 うんうんと四石が頷いて言う。
「それにしても微妙に風化した時事ネタですよねぇ」
「って言うか、そのネーミングはあらゆる方面でやばいからやめなさい」
「いや、僕に言われても。名付けたのは向こう自身だし」
 困った顔で栖神は答える。
「銀河帝国とかそんなが出て来なかっただけましですかねぇ」
「いや、こっちの方が断然危険だ」
「……まぁ、それはともかく話を戻すぞ。死ン理教団とは文字通り死に理を求
める教団だ。彼らはこの無限都市において、いわゆる《真の死》を探して、日
夜無差別に殺戮を繰り広げている。淫楽殺人友の会も、教団の下部組織に過ぎ
ないんだ」
「王蟲はなに?」
「いや、まぁ、飾りだろう」
「何かねぇ、こじつけ臭い」
「そんな事言われても……」
「まぁ、良いけど。真の死って何?」
「さっきも言ったとおり、無限都市には基本的に仮の死しか存在しないんだが、
伝説があるんだ。真の死を手に入れたものはまるで夢から覚めるように元の世
界に戻れるという。奴らは一般生徒を実験台にし、それを探しているんだ」
「ふ〜ん、なるほど、ね。大体話は分かったわ」
 考え込む。
 結論から言うと、この自由学生同盟に悪い点はなさそうだ。ただ、自分が協
力するほどよい点もあるかどうか……
「ああ、忘れていた。これがその死ン理教団信徒の写真だ」
 さっと、一枚の写真を差し出してくる。
 中央に位置する、おそらく教祖らしい人の周りを数人の黒い三角形の覆面と
マントをつけた三角柱みたいな人が取り囲んでいる。
 その教祖みたいな人に好は見覚えが合ったわけで……
「あああああ! しっ、信樹じゃない、こいつ!!」
「知り合いか?」
「知り合いも何も、あたしの弟よ、何でこんなところにいるの!?」
「ふ〜む、それは死ン理教団教祖で、教団内では「パール大司教」と呼ばれて
いるカリスマ的指導者だ。無限都市に現れたのはのは三ヶ月ほど前と言われて
いる。ミス玖々津の弟だったのか……」
 栖神の言葉はすでに好の耳には入っていない。
 穴があくほどにじっと写真の信樹を見つめ続けている。
 微妙に肩が震えている。
「どうしたんですか?」
 流石に不審に思ったのか、四石が心配そうに声をかけた。
「ふ……」
「ふ?」
「ふざけんじゃないわよ!」
 ばんっ!
 怒声と共に、好は目の前のテーブルに拳を振り落とした。固い樫で作られた
はずのテーブルがバキとかミシとか嫌な音を立てて、いとも簡単に真っ二つに
割られる。 
「なに、こいつ。あたしがなんか訳分からん殺人鬼に襲われたり、さらに訳分
からん世界で四苦八苦してる間に、こいつはもう大司教様ですか!? しかも、
その殺人鬼はこいつの部下って!!? パールなんて安直な名前名乗りやがっ
て!!! もう怒った! 姉に逆らった罪は地球より重し!! 絶対に鉄拳制
裁かましてやる!!!」
 そこまで一気にまくし立てると、コホンと咳払いをして呼吸を整え、にっこ
りと笑顔を作った。
「いいわよ、少なくとも信樹ちゃんと会って平和的にお話をするまでは協力し
てあげる。おほほほほほ」
「い、いやぁ、そうか。それはありがたいなぁと」
 気のせいか言葉に怯えが混じっているような気がするが。
 まぁ、ともかく。
 栖神が立ち上がって握手を求めてくる(逃げ腰で)。好もそれに応じようと
立ち上がり。
 ダァンっ!
 すごい轟音がして、生徒会館の扉が開かれた。そこには一人の生徒が立って
いる。
「か、会長……死ン理教団の、襲撃が……」
 どさっ
 そのまま、その場に倒れた。その体から音も無く赤い液体が広がっていく。


「きゃあああああああああああぁっっ!!!」
 四石の悲鳴がガラス窓をびりびり振るわせる。広報委員長だけあってものす
ごい声量だ。
 栖神は立ち上がって、チリーンとベルを鳴らす。おそらくあのベルこそが彼
の核アイテムとやらなのだろう。完全武装した数十人の女給たちがわらわらと
現れる。
 ほぼ同時に、こちらも完全武装して、黒い三角形の覆面とマントをつけた三
角柱みたいな人がずかずかと生徒会館に上がりこんでくる。こいつらが死ン理
教団の狂信者たちなのだろう。
「ミス玖々津、四石君! 屋敷の奥に一旦下がるよ!」
 その場を女給に任せた栖神は、奥の方へある扉に飛び込んでいく。
「了解!」
「えっ、えっ!?」
 好は素早く針の入った箱を掴み取ると、急な展開に付いて行けていない四石
の腕を引っつかみ、栖神の後に続く。
 バタンっ
 扉の向こう側には石造りの丸いテーブルと、その周りを取り囲む二十五の椅
子が並べてあった。
「アーサー王の円卓か? これは都合がいい」
 そう呟き、栖神はまたベルを鳴らす。
 ヴゥン
 形容しがたい音がして、突然に扉が現れた。それこそ、どこでもドアのよう
に。
 がちゃ
「呼んだ? 会長」
「人が寝てるときに……」
「やっほ〜、久しぶり」
 ぞろぞろと数人の人間が扉を開けて入ってきた。
「何したの?」
「ああ、僕のベルが女給を呼ぶためだけのものだと思っていたのかい?」
「なるほど、仲間の生徒を召喚する事が出来るんだ」
「とりあえず、委員長たちだけならね」
 と、入ってきた人のうち一人が話し掛けてきた。
「会長、そちらの女性は?」
「ああ、紹介しよう。新しく同士になった針師のミス玖々津だ。ミス玖々津、
この方々は……」
 がんがんがんっ!
 扉が荒々しく叩かれる。
「どうやら、悠著に自己紹介なんかしている場合じゃなさそうね」
「一体何なんなんですか?」
 委員長の一人が不審そうに声をあげる。メガネにみつあみ、間違いなく図書
委員長だ。好は確信した。
 いや、まぁそれはそうとして。
「死ン理教団の襲撃だ。ここの場所がばれたらしい」
 ざわっ
 委員長たちに動揺が走った。
「落ち着いて聞いてくれ。これより我々は敵を迎え討つ。ある程度敵を殲滅し
た後、こちらから打って出るつもりだ」
「質問、教団本部の位置は分かっているのですか?」
「その分については今朝四石君に調べてもらった。こちらから先制攻撃を仕掛
けるつもりだったのだが……不本意ながら、先手を打たれる形となってしまっ
たがな」
 バンッ!
 その時、鍵が弾け飛び、死ン理教団の狂信者達がわらわらとなだれ込んでき
た。
「破ァッ!」
 気合一閃、一本の針が床に向かってつき立てられる。
 べごっ
 珍妙な音を立てて、狂信者の真下、石造りの床が沈み深い穴となる。数名の
狂信者達が穴の底へと落ちていった。
「ほぅ、無生物でも効果があるのか」
 栖神が感心の声を上げる。
「今のうちにさっさと攻撃を……」
 と、声を掛ける。委員長達はお互いに頷き合うと……
「何故逃げる!?」
 我先にと入ってきた扉へと駆け込んで逃げていった。
「いやぁ、非常に言いにくい事なんだがな」
 と、栖神はばつが悪そうに頭を掻く。
「うちの委員長たちのほとんど戦闘には向いていないんだ」
「そんなん呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
 好が地団太踏んで怒鳴っている間にも狂信者達は穴から這い上がり。
「!? 危ない!!」
 四石がいきなり叫んだ。
 一人の狂信者がおもむろにボーガンを構え、その矢先は好の方向を向いてい
る。
「!?」
 何か反応するよりも先に、矢は放たれた。
 とっさに頭を庇い、手を出すが間に合う速度ではない。
 ぎりっ
 歯を噛み締め、好は覚悟を決める。
 ………
 矢はいつまで経っても来なかった。
 ばっと目を開き、辺りの状況を確認する。眉間に矢は刺さっていない。かと
いって外れたわけでもないらしい。
 ふと、下を見ると、真っ二つに割れた折られた矢が力なく転がっていた。
 矢を撃った男は、三角頭巾の下に隠れて表情は読めないが無言で立ち竦んで
いる。
 眉間に一本の小刀を差して。
 そのまま、倒れて穴の底へと落ちていった。
「相変わらず、見事な手裏剣捌きだ四石君」
 満足そうに頷く栖神の声に、慌てて四石のほうを顧みる。そこには、数本の
小刀を構えた四石が、得意そうに微笑んでいた。
「言うのを忘れていたが、四石はニンジャだ」
「に、Ninja?」
「はいぃ♪」
 驚きのあまり、声がローマ字になっている。
「って事は何? あの殺人鬼に追われてた時、あたしが助けなくても何とかな
ったって事?」
「そんなぁ」
 四石はぶんぶん首を振る。
「あんな怖いの、怖くて戦えませんよ」
「うむ、四石君はニンジャの癖してかなりの怖がりなんだ」
 ダメじゃん。
 喉元まで出かかったその一言は、助けてもらった恩によって何とか心中に留
めておく。
「まぁ、ともかく……行け、四石!」
「はいぃ」
 四石は懐から巻物を取り出し、口にくわえる。
「ばっちいわねぇ」
「仕方ないですよ、そういう物ですから」
「……どこから声出してんの?」
「腹話術ですぅ」
 なんだか情けないほど虚しくなってくる好だった。
 それはともかく、四石は巻物をくわえたまま胸の前で印を切る。
「忍法、火遁の術!」
 轟っ
 どこからか急に炎が巻き上がり、狂信者どもを包み込む。
「ぐわぁ!」
「うわっちぃ!?」
「わちゃちゃちゃ!!」
 様々に悲鳴をあげてのた打ち回る狂信者たち。
「すごい、初めてちょっとだけ四石の事カッコイイと思ったぞ!」
 好が言うと、四石はこちらを向いてさわやかに微笑んで、ビシッと親指を立
てて。
 すこーん
 妙に思いっきりのいい音を立てて、飛んできた棒切れが四石のこめかみにク
リーンヒットする。そのまま倒れた。
「ふ、ふっはっはっはっ! 心頭滅却すれば火もまた涼し!! わが信仰心に
不可能無しィッ!!」
 得意げに高笑いを上げる狂信者が一人。
 う〜ん、さすが狂信者と言ったところね……でも」
「ん?」
「頭にも移ってるわよ、火が」
「え゛?」
 その言葉を合図としたように。そのときまでくすぶっていた頭の火が燃え上
がる。
「あちゃぁあっ!!」
「熱くなかったんじゃないの」
 半眼で突っ込みを入れる。
 ふと、思い出したように、倒れた四石に声をかけてみる。
「四石ぃ、生きてる?」
「はいぃ、なんとかぁ」
 だくだくと血を流しながら四石は答えた
「いま、お花畑で祖父の白影斎先生から奥義鉄火爆殺陣の手ほどきを受けてお
りました」
「死にかけてるじゃないの」
 むしろ幸運だった。飛んできたのが棒切れでなく、矢だったら即死だった傷
だ。
 軽く溜息をついて、懐にあった形見の針を取り出し、四石の眉間深くまで突
き刺す。
「とりあえず今は時間が無いから仮死の点よ。それだったら時が止まったみた
いになって死ぬ事は無いから。本格的な治療は片付けてから」
 もちろん、四石は仮死状態に陥っているので、答える事は出来ない。
「さて、と……そういうわけで早く終わらせないといけなくなったわ。隊長格
がいるでしょう? 出てきなさい!」
 入り口の方で焦げてる狂信者の群れに怒鳴りつける。
 案の定、奥のほうから一人の男が進み出てきた。
「くっくっく。いや、恐れ入ったアル。正直、そこの娘とあんた二人程度に止
められるとは思ってもなかったアルヨ」
 体格のいい、と言うよりごついガタイのマッチョ。着ている服は迷彩の野戦
服で、室内なのに帽子をかぶっている。それなのに、口調はエセ中国人という
、なんともミスマッチな奴だった。
「殺人野球部エースピッチャーの華僑系二世、王太郎(わん・たろう)ネ。一
つお手合わせ願うアルヨ」
 普通、名前は中国語読みか日本語読みかどちらかに統一する物である。
「……ぷっ」
「ナに笑うカ!?」
「いや、なんか犬みたいだなぁと思って……それに、王なのにピッチャー?」
「王(おう)じゃなくて王(ワン)言うアル! もう怒ったアルヨ、あたしの
魔球くらうヨロシ!!」
 と言うと、なんかとげとげのついたボールを手にとり、大きく振りかぶる。
「中国四千年の歴史! ジャッキー・チェン投法アル!!」
 断言しても良い。ジャッキー・チェンに四千年の歴史なんかない。
「くらうヨロシ!! ……ってあれ?」
 投げようとしたその先には、仮死状態の四石が転がっているだけだった。
「……その戦い方、接近戦には向いてないわね」
「なっ!」
 いつの間にか、好は王の後ろに移動していた。
「振りかぶってるとき隙だらけ」
 ぷす
 右頬に針が突き刺さる。
「脱力の点よ、死にはしないわ」
 王はふにゃふにゃと力なく崩れ落ちた。そう、まるでたこのようにぐにゃぐ
にゃに力なく。
「あ〜あ、なんかめっさ疲れた」
「うむ、見事だったよ、ミス玖々津」
 何故か無傷の栖神がにこにこと微笑んでいる。おそらく、ずっと女給に護っ
てもらっていたのだろう。
 なんとなく、それを見ていると腹が立ってきた。
「……うりゃ」
 ぷす
 突き刺した針の効果で、栖神もたこのようにぐにゃぐにゃに崩れ落ちた。

***********************************

 ふ〜む、多分もう半分は出来上がったな

 明後日までに書いてしまって文化祭の部誌に出す計画を進める事にしよう




    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage