[KATARIBE 24144] [HA06P] エピソード『四月な莫迦たち』

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Date: Mon, 1 Apr 2002 20:53:51 +0900 (JST)
From: 月影れあな  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 24144] [HA06P] エピソード『四月な莫迦たち』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200204011153.UAA36880@www.mahoroba.ne.jp>
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2002年04月01日:20時53分50秒
Sub:[HA06P]エピソード『四月な莫迦たち』:
From:月影れあな


月影れあなです

ちょっと、四月バカなことを


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エピソード『四月な莫迦たち』
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登場人物
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 月影宗谷   :女装少年、衝撃の事実発覚!! か?
 月影留萌   :初登場、宗谷と鈴鹿の母である。ちなみに、死んでる。
 月影鈴鹿   :ブラコン姉ちゃん。流石、留萌さんとは親子である。


本文
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 宗谷     :「……ここ、どこ?」

 宗谷が目を開くと、一面に白一色の世界が広がっていた。
 雪原? いや、違う。やわらかい雪の感触も、身を包む冷たさもない。では、
ここは一体どこなのだろうか?

 宗谷     :「あっ……」

 前方に人影が見えた。霞みがかった様にぼんやりと、近づくにつれ、次第に
はっきりとしてくる。
 そこに立っていたのは、蒼みがかった銀髪と、深い蒼の虹彩を持った……

 宗谷     :「ぼく?」

 その人は軽く笑った。苦笑したようだ。宗谷が首をかしげると、その人の唇
が声を紡ぎだす。

 人影     :「久しぶりだね」
 宗谷     :「あっ!」

 声に聞き覚えがあった。とても懐かしくて、なんだか聞いているだけでくす
ぐったいような甘い声。そべてを包み込んでくれるような優しさの込められた
その声は、宗谷に最も近く、そして遠いところにいるはずの……

 宗谷     :「……おかあ…さん?」

 その人は頷くと花が開くように微笑み、そして、もう一度ゆっくりと、何か
を確かめるように繰り返して言った。

 留萌     :「やっ、久しぶり。久しぶりだね、宗ちゃん」

 間違いなく宗谷の母、月影留萌その人だった。

 宗谷     :「おかあさん!!」

 駆け出して、抱きついた。留萌は少し驚いたあと、軽く微笑むと優しく宗谷
の頭を撫でる。

 留萌     :「おおよしよし、いいこね。元気だったか? いじめられ
        :てないか?」

 何となく恥ずかしくなって、宗谷は、ばっと手を離した。その様子に留萌は

        :くすくすと笑っている。

 宗谷     :「元気だったよ。いじめられて……」

 脳裏に善勝の顔が浮かぶ。

 宗谷     :「……ちょっと、いじめられてるかな?」
 留萌     :「よしよし、そのいじめっ子の名前を教えなさい。お母さ
        :んが祟ってあげるから」
 宗谷     :「だ、だめだよ! 友達なんだから!!」
 留萌     :「何だ、残念」

 宗谷     :「うぃぃ、お盆以来だから……八ヶ月ぶりだね、おかあさ
        :ん。元気だった?」
 留萌     :「うんうん、元気も元気。と言っても、死んでるんだけど
        :ね」

 宗谷     :「あはは。今日、おとうさんは?」
 留萌     :「お父さんはちょっと忙しくて来れなかったの。とっても
        :悔しがってたわ」
 宗谷     :「ふ〜ん、残念だね……ところで、おかあさん。どうした
        :の? 突然来たりして。何かあったの?」
 留萌     :「そうそう。それだ、宗ちゃん。よよよ……」

 突然留萌はわざとらしい泣きまねを始めた。

 宗谷     :「どうしたのおかあさん!? どこか痛いの!?」

 わざとらしさに全く気付かず本気で心配しだす宗谷。
 留萌の心はちくりと痛んだが、ここで怯んではわざわざ下界まで降りてきた
意味が全くない。

 留萌     :「今日はね、宗ちゃんにどうしても知らせなきゃいけない
        :ことがあるの」
 宗谷     :「知らせなきゃいけないこと?」
 留萌     :「そうなの。実はね、宗ちゃん。今まで隠してきた事なん
        :だけど……」

 そこでもったいぶって留萌は一旦言葉を止めた。ちらりと宗谷のほうを見る
と、不安そうな表情で宗谷がこちらを向いている。
 これまた心がちくりと痛むのだが、やはり留萌は言葉を続けた。

 留萌     :「宗ちゃんは女の子だったの!」
 宗谷     :「ええええええええええええええっ!!!!」

 宗谷     :「でもっ! ぼく、ちゃんと男の子じゃない!!」
 留萌     :「それはね、ターニアさんに『男の子になる薬』を作って
        :もらったから」
 宗谷     :「何でさっ!?」
 留萌     :「それはね、宗ちゃんが生まれる前日に、家に口から呪い
        :ビームを出す地獄の悪魔おじさんがやって来て『生まれる
        :子が女の子だったらぼくちんが食べておしまいになるので、
        :覚悟しといてちょ』って言って去っていってしまったの。
        :で、女の子が生まれてしまったから、仕方なくターニアさ
        :んに頼んで男の子になる薬を……よよよ」

 宗谷     :「そんな、ぼくは女の子だったなんて……」

 いや、信じるなよ。

 留萌     :「あっ、そろそろ起きる時間ね。あたしもそろそろ帰るわ」
 宗谷     :「えっ!? ちょっと、おかあさん!?」
 留萌     :「じゃあね、宗ちゃん。また今度のお盆にね〜」
 宗谷     :「ちょっ、待って! おかあさああああああんっ!!!!」

 
 留萌は、白い風景に解けて消えた。

 同時に、世界が徐々にぼやけて、暗くなっていく……




 宗谷     :「……ああああああんっ!!!! ……って、えっ!?」

 ちゅんちゅん
 小鳥がなく声が聞こえる。
 カーテンの隙間からは暖かい春の光が、光のシャワーになって惜しげもなく
降り注いでいた。

 宗谷     :「えっ、夢!? えっ……大変だ!」


 四月一日の朝、いつもどおり早くに起きた鈴鹿は、朝の紅茶を淹れ、それを
飲みながら宗谷が降りて来るのを静かに待っていた。
 今日はエイプリルフール。いわゆる『嘘をついても良い日』である。
 この日の為に、鈴鹿はとっておきの嘘を考えていたのだ。

 鈴鹿     :「ふぅ、宗谷さん、早く起きていらっしゃらないかしら?」

 この時の鈴鹿の表情を文字で表現するなら、十人中九人までが「わくわく」
という言葉を選ぶだろう。

 どだだだだだだだだだだ!!!!

 突然、階段をものすごい勢いで下りてくる音がした。

 だんっ!

 すごい勢いで扉が開く。驚いて見ると、そこにはまだパジャマとナイトキャ
ップを着けたままの宗谷が枕を抱えて立っていた。

 宗谷     :「ねっ……」
 鈴鹿     :「なんですか、宗谷さん。騒々しいですわよ」
 宗谷     :「あっ、ごめんなさい」

 鈴鹿は大きくため息をついた。

 鈴鹿     :「まぁ、いいですわ……ところで宗谷さん。今日は大事な
        :お話があるんです」
 宗谷     :「えっ! 話!?」
 鈴鹿     :「ええ、今まで黙っていましたけど、実は宗谷さん。貴方
        :本当は女の子だったのですわ」
 宗谷     :「えええええええええええええええええっ!!!!」

 宗谷     は脱力し、へたりとその場にしりもちを着いた。

 鈴鹿     :「? どうかしましたの、宗谷さん?」

 いつもとちょっと違う反応に、鈴鹿は首をかしげた。

 宗谷     :「う……あ……」
 鈴鹿     :「えっ?」
 宗谷     :「嘘だあああああああああああああ!!!!」
 鈴鹿     :「ああ! 宗谷さん!?」

 パジャマのままで走り去ってしまった。急いで追うが、少し遅く、目前で玄
関の扉がバタンと閉められる。
 ふと、コート掛けに目をやる。宗谷が気に入っている形見の特攻服がなくな
っていた。どうやら羽織っていったのだろう。

 鈴鹿     :「ま、この陽気ですし、風邪を引くこともないでしょう。
        :おなかがすいたらきっと帰って来ますわ」

 とりあえず、そんな感じの春の朝だった。


おまけ
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 ところ変わって、ここ天国にて……

 留萌     :「ふふ、宗ちゃんったら、もう可愛かったぁ。ほんと、毎
        :年毎年素直に信じてくれるんだもん」
 宗谷パパ   :「あの、留萌さん。毎年エイプリルフールに実の息子をか
        :らかうために下界まで降りるっていうのもどうかと思うん
        :ですが」
 留萌     :「おだまり!(どがっ)」
 宗谷パパ   :「がふっ」
 留萌     :「ああ、いつまでもあの純粋さを失わないで欲しいわぁ」
 宗谷パパ   :「げほっ、げほっ……僕としてはあのまま育たれると息子
        :の将来が心配ですよ」


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