[KATARIBE 23696] [HA06N] 小説『月影宗谷の日常 〜つまりはそういう誤解から〜』

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Date: Sun, 20 Jan 2002 21:25:09 +0900
From: "Kato" <az7k-ktu@asahi-net.or.jp>
Subject: [KATARIBE 23696] [HA06N] 小説『月影宗谷の日常 〜つまりはそういう誤解から〜』
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月影れあなです。

苑と月の話をほっぽっといて、なぜか宗谷君を書いてしまう私。
だめだめですな

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小説『月影宗谷の日常 〜つまりはそういう誤解から〜』
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登場人物
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 月影宗谷(つきかげ・そうや)
    :外見美少女少年、悩み事があるようで……

 エニス=ミハエル
    :宗谷の友人其の一、本名槐美晴。グルグル眼鏡の白衣。

 雨宮巫琴(あまみや・みこと)
    :同じく其の二。金髪浅黒い肌にエキゾチックな顔立ち。

 A子(えいこ)
    :宗谷のクラスの女子。紅い糸を小指に結ぶ人。

 B子(びいこ)
    :宗谷のクラスの女子。赤い縄を足に結ぶ人。

本文
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「……はぁ」
 月影宗谷は流れる雲を目で追いながら本日何十度目かのため息をついていた。
姉に作ってもらった弁当もなかなか箸が進まない。その様子を心配そうに眺め
る人が二人。一人はグルグル眼鏡に白衣、もう一人は金髪に浅黒い肌のエキゾ
チックな男子生徒だ。
「宗谷は一体どうしたのだ? 元気が取り得の奴が元気でないとは…… と言
うかそれくらいしか取り得が無いであろうに」
「そういうことは思っても言わない」
 本当に心配しているのかなぁ……
「おっと、申し遅れた。私の名はエニス=ミハエル、ミハと呼んでくれ。前回
友人Eの名で登場したのだが、大変読みにくかったので、めでたく名前がつい
た。で、こっちが友人Aこと雨宮巫琴。」
「おーい、何変な方向向いて怪しい独り言ほざいてるの?」
「気にするな、ただ読者に説明を入れていただけだ」
「ああ、そう。それはよかったね」
 ミハの変人性についてよくよく知っている巫琴は適当に流した。
「ところでミハ。真面目なところどう思う? どう考えてもあれは変だろ」
「ふむ、我輩としては何かについて悩んでいるように見えるな」
「そのくらい見れば分かる。問題は何について悩んでいるかだろ?」
「それはきっと!!」
「れ、恋愛です!」
 と、いきなり甲高い嬌声と気の弱そうな声が会話に割り込んできた。知った
声だ。たしか、同じクラスの……
「おお! 貴女方は『「恋愛スポークスマン」と呼ばれ、学校中に名を馳せる
「緋色の絆A&B子」、本名はそれぞれ「春日井絵衣子(かすがい・えいこ)」
「蒼凪微衣子(あおなぎ・びいず)」。ちなみに、微衣子がB子と呼ばれるの
は、入学から初めての授業の際、担任に読み間違えられたから。あだ名が似て
いることを理由にひとくくりにされて実はけっこう迷惑している』ではないか!?」
「やけに説明くさい台詞だね」
 密かにつっこむ巫琴。まぁ、誰も聞いちゃ居ない。
「紅い糸のA子!!」
「あっ、赤い縄のB子っ!」
『二人合わせて、緋色の絆A&B子!!』
 なんかポーズまでつけている。A子は自信満々に胸をはって、B子はとても
恥ずかしそうに赤面しながら。
「話は聞かせてもらったわ! つまり、内のクラス一番のプリティガール月影
宗谷の胸キュン相手を探せって私たちに頼みたいんでしょ!?」
「いや、宗谷は男だけど…… 恋愛対象も多分女だろうし」
「そんなの問題ナッシング! 愛に男も女も関係ないわ!!」
 いや、微妙に回答がずれてる上、問題大有りなのだけれど。
「して、A子よ。それほどまでに自信満々に恋だと断言するからには、何か根
拠があるのだろうな?」
「とーぜんよ! そう、それは数日前の話。B子が街を歩いていると、宗谷君
がマッチョな男と仲良く手をつないで走っていくところを見かけたの」
「なに、おとこ!?」
「い、意外と言えば意外な話であるな……」
 巫琴は動揺して思わず声を上げた。ミハでさえ驚きのあまり声が少しどもっ
ている。
「で、どういう状況だった!?」
「それはね……B子!」
「はっ、はい!!」
 A子が怒鳴りつけると、B子は身を竦ませ、しどろもどろ喋りだした。
「こ、この前ですね。マッチョな男に引っ張られた宗谷君が、マッチョな男と
いっしょになってさわやかに笑いながらものすごいスピードで、それこそ車と
かより速く走っていくのを見たのです。さ、最後には屋根の上を飛び移って何
処かに言ってしまいました」
「そ、それは……」
「恋愛とか何とか言うより前に、面妖であるな」
「何を言うか! 恋愛とは元々面妖であり、同時にロマンチックな感情のこと
を言うのよ!! 夕日を背景にさわやかに手をつないで走る、美しい愛じゃな
いの!!」
「あ、あの、この話には補足するところがありまして……」
 と、おずおず口をはさむB子。
「なんだい?」
「マッチョの人と宗谷君のほかに、もう一人いっしょになって走ってた男性が
いた気がするのです」
「はっ、まさか二股かしら!?」
「それは違うと思うよ」
「いや、断言できないわ……」
 などなど討論は続く。
 彼らは気付いていなかった。
 彼らが討論に夢中になってる間に、とっくに昼休み終了の鐘は鳴り響き、五
時間目の授業が始まっている事に。
 その証拠に、教壇には額に青筋を浮かべた先生が立っている。
「お前らっ!!」
 この先はもはや書く必要もなかろう。読者諸君のご想像にお任せする。


「はぁ…… どうすればもっと男らしくなれるのかなぁ……」



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宗谷に対してこういう誤解が生まれる話。
ここから姉の耳に入ったりして大騒ぎにする予定です。

    

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