[KATARIBE 23452] [WP01P] エピソード『幕開け』

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Date: Mon, 31 Dec 2001 23:28:30 +0900
From: 夜月 天星 <nmhs@kun.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 23452] [WP01P] エピソード『幕開け』
To: 語り部ML <kataribe-ml@trpg.net>
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ヘッドコレクターを出そうとしていたのは秘密です。
まぁ、多分、怜ならこんな年末かと思って書きました。他のキャラを使って無
いので、自己満足の塊のようなEPになりました。
だめだなぁ……。
まぁ、とにかく……来年もよろしく御願い申し上げます。

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エピソード:『幕開け』

登場人物
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 駕樋 怜(がとう・れい) : ヴァンパイア。血を操る住人。
 新堂 留無(しんどう・るな) : ヴァンパイアハンター。怜の対。

戦い
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 現在午後六時。
 もう辺りは薄暗い。
 
 怜      :「……」
 
 そこに一人の背の高い男が闊歩している。後ろから漂う雰囲気は酷くその者
がいらついていることを示していた。
 はた、と男――駕樋怜は立ち止まった。近づいて来る者の気配を察知したか
らである。
 
 留無     :「……」
 
 怜と同じ色の銀髪を頭に戴く女は、冷たい目線を兄に送る。
 
 怜      :「やめろ、留無」
 
 怜が遂に口を開けた。
 
 留無     :「兄さん……ヴァンパイア。今日こそ、年貢を納めてもら
        :います」
 
 留無は無言で結界を周囲に展開すると、銀色に輝く剣を両手に持ち、正眼に
構えた。
 
 怜      :「やめろ!」
 留無     :「――覚悟!」
 
 留無は怜の声に耳を貸さず、鋭い斬撃を見舞う。怜はそれを身を捻り回避す
る。
 留無は舌を打つと、ロングスカートのスリットから太股につけておいた試験
管を抜き、怜に放つ。
 怜はそれを『普通の鞭』で叩き落とす。
 試験管は割れ、地面に染みを作る。ただの水に見えるが、吸血鬼にとっては
体に触れると命に関わる超高濃度の『聖水』である。
 
 留無     :「本気を出しなさい!」
 
 留無が叫びつつ斬りかかる。怜はその剣に鞭を絡めると、膠着状態に入る。
お互いに武器を引っ張り合う。
 流石にお互いに『鍵』を発動していない状態では、純粋な吸血鬼の血が多く
流れる怜のほうが力が強い。だんだん留無のほうが引き寄せられていく。
 
 留無     :「くっ!」
 
 留無は大きく息を吸いこむ。
 
 留無     :「聖っ……動!」
 
 留無がそう叫んだ途端、怜の一歩手前の足下にあった先程の聖水が牙を剥い
た。
 
 留無     :「聖なる刃よ!」
 
 聖水が半月状になり、怜に迫る。怜は鞭を剣から放すと、寸での所でその聖
水の刃をかわす。かわされた聖水は残念そうに地面に落ちる。
 
 怜      :「くっ……」
 留無     :「はぁはぁ……」
 
 二人とも汗を滴らせながら、息をつき、睨み合う。
 風に吹かれ、怜の髪は軽く、留無の髪は大きく流れる。
 
 留無     :「なんで、本気を……出さないの」
 
 留無が静かに問う。
 
 怜      :「留無もなぜ本気を、……出さない」
 
 怜は問いを問いで返した。
 
 留無     :「……そ、それは」
 
 留無が口篭もる。
 
 怜      :「もう戦うのはやめろ」
 留無     :「な、なにをっ……あなたがヴァンパイアであるかぎ」
 怜      :「ヴァンパイアである前に」
 
 留無の言葉を優しく怜は遮った。
 
 怜      :「兄……じゃないのか」
 留無     :「――――!」
 
 沈黙が場を支配する。
 怜はその瞬間を見逃さなかった。
 
 怜      :「はっ!」
 
 短い掛け声と共に怜は宙に飛びあがった。留無の張っていた結界を無理やり
突き破り、上空へと飛びあがる。
 下では留無も飛びあがり、怜を追う様子が見て取れた。
 が、空を飛ぶ能力は怜の方が上である。みるみるうちに留無の視界から怜は
消えていった。
 
 留無     :「兄さん……それでもわたしはやらないといけないから」
 
 留無もそのあとを追って飛んでいく――。
 

果てに
------
 怜は適当な山中に降り立った。
 そして今年一年がふと、頭をよぎる――なんとも惨めである。
 結局災厄を止めることができないばかりか、その断片さえ見えていない。
 
 怜      :「……くそ」
 
 そして妹に追われる自分。
 現在時刻は午後十時。あと二時間で来年か、と『住人』にしか分からない言
葉を呟く。
 
 怜      :「留無……」
 
 そこに銀髪の狩人が降り立った。音も無く。
 
 留無     :「……」
 
 無言である。静かだった。
 
 留無     :「白き鍵よ」
 
 留無は鍵を発動させた。
 
 怜      :「!?」
 
 留無     :「……っ!」
 
 留無は左腕から鍵、右手に剣を携え、突っ込んだ。
 慌てて怜は横に飛ぶ。怜のいた場所にあった大木は留無の容赦無い一撃によ
り、ズタズタに引き裂かれ、地響きを上げて倒れた。
 
 怜      :「本気か……!?」
 
 その問いに返事する必要は無いとでもいうように留無はまた怜に突っ込む。
 怜もすぐさま鍵を発動するが――間に合わない。
 留無の白き鍵が怜の右足を『引き千切った』。
 
 怜      :「くっ! ……血動、止!」
 
 血動を用いて足の切断面から流れ出る血を止める。吸血鬼の異常な再生能力
は、すぐさま血動無しでも血が流れないように怜の足を再生した。
 怜は足から流れ落ちた自分の血をすくい、指に絡める。
 
 怜      :「血動、斬!」
 
 それを放つ。それは血の刃となり留無に襲いかかる――が留無は微動だにせ
ず、試験管をそれに投げつける。
 バリンッと言う音と共に中の聖水が弾ける。
 
 留無     :「聖動、壁!」
 
 聖水は強固な壁となり、怜の放った血の刃を地面に叩き落した。
 
 怜      :「く……」
 
 留無はそれを見終えると、再び怜に銀の剣を振りかざし、白き鞭を放つ。怜
はそれを紙一重でかわし、防ぐ――しかし、だんだんと追い詰められ、怜の体
にはその再生能力をもってしてもすぐには治せないほどのかなりの傷を負って
いた。
 また、銀製品で負った傷は、傷の大きさに関係無く怜の核にダメージを負わ
せ、怜は絶体絶命の窮地に立たされていた。
 
 怜      :「……!?」
 留無     :「チェック(王手)」
 
 留無の冷酷な声が闇に響き渡る。
 怜は観念したかのように、両手を垂れ下げた。
 怜の体から大量の血液が流れ落ちていく……特に腹部の傷が酷かった。常人
ならば3人は死んでいるような傷である。
 
 怜      :「……」
 留無     :「と、どめを、さ、さす、ささ、なきゃ」
 
 留無の剣が震えていた。怜は全身をつんざく痛みの中で――わずかに微笑ん
だ。
 留無と目が合う。
 
 留無     :「なんで……なんで笑うの、怒って、怒ってよ……殺され
        :るのに、滅ぼされるのに。そ、こには何も無いの、に」
 
 怜は恥ずかしげに頭を掻いた。
 
 怜      :「俺には何も――もう無い。だが留無にはある。それなら
        :俺が消えよう」
 
 その言葉に躊躇いはなかった。
 留無の剣が落ちる。
 
 留無     :「な、なんで、よう……そんな、そんなこと……私は、あ
        :なたをこ、ころ――ヴァ、ヴァンパイアを……」
 怜      :「もういい――もういいから」
 
 留無は怜の胸に顔を埋めると、拳で怜を叩き始めた。
 
 留無     :「なんで、なんで、な、なんで、なんで――」
 
 怜は無言で留無を見下ろす。
 
 留無     :「ねぇ、兄さん、私ね――」
 
 留無の言葉は最後まで聞くことができなかった。
 ――留無は跡形も無く消えていた。
 慌てて腕時計を見る――壊れていた。
 
 怜      :「……なんで」
 
 なんでなんだ。
 
 ――空を見上げると。
 『去年』と同じように輝く。
 星と――月。
 

時系列と舞台
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 1999(2nd)12月31日〜の1999(3rd)1月1日の出来事。

起きた変化
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 なし。

追加される設定
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 なし。

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こんな感じで……さぁ、3rdもがんばります。

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NMHSこと、夜月天星
nmhs@kun.ne.jp
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