[KATARIBE 22815] [HA06N] 小説「或る剣士の噺」

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Date: Fri, 26 Oct 2001 16:42:38 +0900
From: "Kato" <az7k-ktu@asahi-net.or.jp>
Subject: [KATARIBE 22815] [HA06N] 小説「或る剣士の噺」
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ども、月影れあなさんです。

なんとなく思いつきで小説も書いてみました。
日向紫狼君がヨーロッパを旅してた時の話です。
書く気力があったら続編も書こうかなどと目論んでいるのですが、まぁ、とりあえず
読んでください。

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小説「或る剣士の噺」
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 カンッ、キンッ
 甲高い金属音と共に、幾十もの小さな火花が咲いては散る。
 何度切り結んだか、正確には覚えていない。高く天に昇っていた日も落ち、
月影だけが二つの人影を煌々と照らし上げる。
 キンッ、キィンッ
 単調な剣の動きは、いつしか見るものを鼓舞する剣舞へと変化しつつあった
。互いが互いの剣に翻弄され、美しく危険を孕んだ舞へと徐々に姿を変える。
 このままではずっと勝負はつかない。そう思い始めたのはどちらが先か、そ
れとも同時であったろうか。冷静に相手の動きを観察する。隙の無い、完璧な
動き。恐らく正当な剣術を学んだものだろう、絶対的な美がそこにはあった。
どうしようとも打ち崩すことは出来そうに無い。
 だが……
 カァン
 ひときわ鈍く、大きな音が上がり、剣がくるくると宙を舞う。相手の顔に同
様が浮かぶ。まさか、鞘で柄を下から打ち上げられるとは思っても見なかった
のだろう。
 絶対的な一つの形を持った正当な剣術には隙という物がほとんど無い。だが
、同時に邪道の剣のもつ“危うさ”というものが存在しない。それはそれで長
所なのであるが、時には致命的な短所ともなりうるのだ。
 すっと相手の首筋に剣を突きつける。
「まだやるか……?」
 すると相手はふっと笑って、あっさり両手を上に上げた。
「降参……やっぱあんた強いわ。」
 そこで肩を落とし、ため息をつく。星を見上げてみる。綺羅綺羅と無邪気に
輝き続ける幾千、幾万の宝石たち。笑われているように感じるのは、たぶん自
虐の情からであろう。
「スナフキンみたいな格好して気取ってる奴がいるから軽くノしてやろうと思
 ったのに……やれやれ、世の中ってのは広いもんねぇ。」
「僕も驚いた。まさかこの格好が気に入らなくて死合いふっかけて来る奴がい
るとは……」
「いや、そのことに驚いたのか。」
 そう言って、何故か情けない顔をする。
「どうかしたのか?」
「いや、別に。」
 何も無いらしいので、とりあえず剣を鞘に収めた。
「……?あたしを殺さないの?」
 不思議そうに尋ねる。“死合う”というのはそういう事。敗者には死、それ
だけが戦場を支配する絶対法則のはずだった。
「もとより殺すつもりは無い。」
「甘いね、あんた。そんなことばっかして余裕ぶっこてっといつか死ぬよ?」
「それならそれまでのことだ。」
 あっさりと言いのける。その言葉に、相手はくつくつと笑い出す。
「ふふ、気に入った。あんたいい男じゃないか。」
「それほどでもない。」
 憮然として答える日向が照れているように見えたのは、相手の気のせいだっ
たのだろうか。

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と、まぁほんの短い話。
年齢は……この頃約14歳!?
……やっぱ、もっと老けさせるべきだったなぁ……

月影れあな => az7k-ktu@asahi-net.or.jp

    

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