[KATARIBE 22532] [HA06N] 『電脳幼女の悩み』

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Date: Tue, 2 Oct 2001 14:49:06 +0900
From: 夜月 天星 <nmhs@kun.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 22532] [HA06N] 『電脳幼女の悩み』
To: 語り部ML <kataribe-ml@trpg.net>
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麗視点の小説。
本当に五歳なんだろうか、とか疑問に思ってみたり。

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小説『電脳幼女の悩み』
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 わたしはおとうしゃんが好きです。りゆーはよくわかりません。たぶん、お
とうしゃんだからです。おとうしゃんはわたしを創りました。
 最近、こんなことを考えます。おとうしゃんは何者なんだろーって。でもそ
の答えは見つかりません。誰も答えてくれそうにありません。
 わたしの知識(データ)にはにんげんさんがどのやって生まれてくるのか、
入ってません。これをお隣にすんでるうららおねえちゃんに聞いたらとっても
慌てて、
「こっ、こうのとりが運んで来るんだよっ」
と言ってお菓子をくれました。わたしはよろこんで食べました。おいしかった
です。後で考えてみると、なんか答え、へんでした。だって、わたしはこうの
とりさんにはこばれてないです。
 どういうことなんだろー?

「ねぇ、おとーしゃん」
「なんだ」
「わたしはどこから生まれたの?」
「解答不能」
「……」
「う〜」
「ほら」

 おとうしゃんは"じっか"というところから送られてきたというくだものを剥
いて、わたしに差し出しました。

「なぁに、これ?」
「梨だ」
「はぅ……」

 無いんです、これ。食べれません。

「……ナシっていう果物だ。名前だ、名前」
「そうなんだ〜」
「そうだ」
「じゃあ、いっただきまーす」

 口に入れたら甘かったです。
 しゃくしゃくして、冷たくて、美味しいです。

「美味いか?」
「うまいー」
「美味しいだろ」
「おいしー」
「……」
「おとうしゃんが食べてるのは?」
「葡萄だ」

 武道です。戦うんです。試合。斬りあい。殴りあい。
 痛そうです。

「痛い〜……」
「……? お前も食うか」

 ほれ、とおとうしゃんが武道を一粒くれました。食べたらおとうしゃんと決
闘しなくちゃいけないんです。たぶん、"ブシドー"とかにのっとるんです。

「はぅ〜、ブドウ〜」
「何か勘違いしてないか? 葡萄はこう言う字を書く」

 さらさらと難しい字を書くおとうしゃん。

「その果物の名前だ」
「そうだったんだ〜」

 ブドウをぱくっと口に含んでみる。もぐもぐ噛んでみる。もぐもぐ……。
 苦かった。

「あうー」

 ゴリってなにか固いものを噛んだ。

「はうっ」

 痛い。

「葡萄は皮ごと食うな。皮は剥け。あと種は吐け」

 おとうしゃんの前には小皿があってそこに良く見たらこのブドウの皮が沢山
ありました。

「はーい」

 おとうしゃんは、また他のくだものを食べてます。

「な〜に、それ?」
「柿だ」

 火気です。火です。燃えます。危ないです。火事です。
 おとうしゃんがあぶないっ。

「おとうしゃん、だめっ!」

 わたしはおもいっきりおとうしゃんの後頭部をはたきました。
 おとうしゃんはおかげで火気を吐き出しました。

「よかった〜。火事になるところだったよ〜」
「……麗」
「よかったね、おとうしゃん」
「これは柿だ。こう書く」

 おとうしゃんが字を書いてくれました。こうかくんだーと驚きました。

「わかったよっ」
「わかったじゃねぇ!」

 おとうしゃんのチョップがおでこにヒットしました。

「いたい……」
「……阿呆が。ほら、座って食ってろ」

 おとうしゃんが立ち上がりました。

「どこかいくのおとうしゃん?」
「ああ、あの馬鹿親父がダンボール箱8つ分も梨やら葡萄やら送ってきたから
な。色んな所を回ってお裾分けって奴をしてくる」

 おとうしゃんはそう言うとダンボールばこというはこを2つ抱えました。

「じゃ、留守番しておけよ」

 おとうしゃんが行ってしまいます。
 それはすごくさびしい気がします。

「おとうしゃん、わたしもいくよっ」

 わたしはおとうしゃんの背中にとびつきました。

「そうか、好きにしろ」

 おとうしゃんは玄関の鍵を閉めるとアパートの階段をおりていきます。
 わたしはその背中をおいます。

 わたしは結局じぶんがどこから生まれたのかまだわかってません。でもそれ
でもいいです。
 わたしはおとうしゃんがすきで、とりあえずそれだけでじゅーぶんです。

時系列
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2001年9月下旬頃

解説
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麗は自分がどのようにして生まれたのかを疑問に思い、人に聞いてみる。
秋の味覚を堪能した後、麗が出した答えとは。

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梨は美味しいですねぇ。もぐもぐ。

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NMHSこと、夜月天星
nmhs@kun.ne.jp
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